31 あれ? 誰も知らなかったの?
誤字報告いつもありがとうございます。
「しかしなんだ、現状では俺達のパーティもゴーレムが相手となれば相性が悪いのかね」
「そうじゃのぅ… ゴーレムは基本的にどれも硬いからのぅ」
「やっぱりオーガだけに金棒を探して買うしかないかな」
「む? オーガじゃとなぜ金棒なのじゃ?」
「俺達の世界というか、俺の生まれた国では『鬼に金棒』ということわざがあってな… 強い者がさらに強くなるような組み合わせの事をそう例えるんだよ」
「ほほぅ、それはまさに我らオーガのためにあるような言葉ではないか。そういう事であれば金棒を持つ事は否ではない。しかし地上に戻るにはまだ予定の時間は経っていないだろう? もう少し殴っていきたいんだが良いか?」
「私もゴーレム相手に魔法を試してみたいのぅ。イエローサンダーステッキは効かなさそうじゃがマジカルステッキであれば詠唱すれば貫通すると思うしの」
「ああ分かったよ。なんか2人ならやりすぎる気がするからほどほどにな?」
良い区切りになるかと思ったが、どうやらやる気は衰えていないらしい。
まぁアレだ、俺も一応この3人の主人という立場なわけだし、ここはスッキリとストレスというか、色々と発散してもらうのが正しいのではないかと思っている。それにレベルも上がるしね、グレイとクローディアはともかく俺とアイシャはまだまだ低いのだから。
ゴバーン!
轟音と共にロックゴーレムが砕け散る…
51階層でロックゴーレムを狩り始めて半日以上が経っているが、もうすでにグレイとアイシャはロックゴーレムの攻略に成功していたのだ! 2人共殴る蹴るでロックゴーレムを粉砕するなんてなんと怖ろしい… まぁこれも俺が放ったある一言がきっかけとなったんだが。
「そういえば俺の世界にあった創作物で、体内にある魔力を手足に集中させて攻撃部位を守るとか、全身に魔力を巡らせて身体強化的な魔法があったんだけどそんな事って出来るもんなの?」
「むむ? そんな話は聞いた事がないな。しかしそうか… 俺のような近接で戦う者には魔力なんてあっても仕方が無いと思っていたが…」
「そうじゃの。魔法が無いという主の世界の方が魔力の使い方を熟知しておるような気がしてくるな… まぁ私は元々近接戦闘はできんから関係無いと思うが、最悪の場合主を抱えて逃げるのに使えそうじゃの」
「ボクも練習する!」
こんな感じで盛り上がってしまったのだが、定番だと思っていた魔法は誰も知らなかった模様だ。
そしてロックゴーレムと戦いながら、あれやこれやと試行錯誤を始めたのだ。そして当然ながら一番最初にモノにしたのはクローディア、さすがは魔法使いだよな。魔力の使い方なら本当によく知っている。
コツを掴んだクローディアからグレイとアイシャにやり方が伝達され、夕方には先ほどの通りロックゴーレムを粉砕できるまでになっているのだった。
「うむ! だいぶ慣れてきたぞ。もうつまらん怪我などしなくなった」
「ボクでもロックゴーレムが壊せるなんて… すごい魔法だね!」
「しかしアレじゃの… この魔法は私達だけの物にした方が良いじゃろうな。秘匿すべき案件じゃ」
「そういうもん?」
「そうじゃ! 人には誰にでも魔力があるものじゃ、特に近接戦闘の職をやっている者には垂涎ものの技術となるであろう」
「ふむふむ… つまり売れると?」
「売るのか!? まぁ魔王を討伐するという連中には教えてもいいかもしれんが… 売ってしまうのはもったいないのぅ」
「まぁ保留にしておくか。そろそろ休む時間だから階段まで戻って安全地帯を作るぞ」
そんな訳で、彼ら3人には非常に実りのある1日だったとさ。
そんなこんなで52階層まで進み、ひたすらゴーレムを狩り続ける事2日間…
「うむ、俺のレベルが上がったぞ!」
なんとグレイがレベル41になったのだ! もちろん俺もレベル21になっており、アイシャもレベル25だ。クローディアのレベルは上がっていないのは、この中では一番の高レベルであるからだろう。
「うむうむ。主が齎してくれたこの魔法… 『身体強化』はすごいのぅ、時間さえあればこのまま60階層に行くのも問題は無さそうじゃの」
「ああ、だがご主人は一度地上に戻りたいとの事だ。ここで戻るのは仕方がないが、この魔法のおかげで次回が楽しみになったな」
「うんうん!ボクでもゴーレム狩りに貢献できるようになったからもっと効率が良くなるよ!」
「この魔法の良い所はレベル依存ではなく魔力依存なところじゃな… レベルが低くとも主のバフにより魔力を高め、その上で『身体強化』を使えば格上狩りも余裕でしかない」
「そっかそっか… それにしても俺のステータスは魔力しか上がらないなぁ、『身体強化』しても全然強くなった気がしないんだが」
「ご主人が支援型だから仕方がないとは思うが、それでも逃げ足や回避能力は向上していると思うぞ」
「そうかな? それじゃあ一度戻って休養しようか、もちろんみんなは平気なんだろうけど俺が休養したいからね」
「承知したぞご主人。今回のダンジョンアタックでは得られる物が多かった… 次回もなるべく早めで頼みたい」
「分かったよ。じゃあ行こうか」
なんだか皆の機嫌がとても良い、やはりレベルが上がるというのはモチベも上がるんだな… 気持ちは分からんでもない。
俺も何か目に見えて成長しているというのならモチベも上がるってもんだけど、どうも俺には戦闘そのものは厳しいみたいだね。まぁ魔力はしっかりと上がっているからそっち方面で何かできる事はないか考えてみよう。
「しかし主が鬼に金棒などという話をしておったが、オーガに身体強化はまさにそれであったの」
「うむ、天啓を得たかのような衝撃だったぞ。これで俺は他のオーガからも一線を画したと言っても良いだろうな… ふふっ、これほど同胞に会いたいと思った事は初めてかもしれん」
「オーガの言う同胞に会いたいは、どうせすぐに手合わせとかになるのじゃろう? 野蛮じゃのぅ」
「会えば力比べ、何もおかしい事はないではないか。エルフこそもっと体を鍛えろと言ってやりたいがな」
いやマジで鬼に金棒になってしまったね… とはいえ、元々魔力の高かったアイシャも相当だと思うけどね! でもまぁアレだ、強くなれたんなら良かったよ。
 




