03 ピンクマジカルステッキだと?
思い立ったが吉日、今度は温かいハンバーガーセットをゴミ箱に入れて検証してみるとしよう。まぁ食べ物をゴミ箱に入れるというのはイメージが悪いけど、誰かに出すわけじゃないからきっと大丈夫だろう。
「よし、一応今食べる分を入れて5セット作ってみるか。魔力の消費についても少し分かるかもしれないしな」
どうもハンバーガーセットが1セットくらいだと魔力が消費している感じがしないんだよね、オニオンフライを食べているせいか回復している実感も無かったし… 一気に作ってみよう、それっ!
『パンパカパーン! ハンバーガーセットが通算10個目になりました、10回目記念特典でプレゼントがあります!』
「うおっ! なんだ急に? 誰の声だ?」
突然響いてきた声に驚き、周囲を見渡してみるけれど、誰もいない… これはアレか? システムメッセージみたいなものなのか?
ふと足元を見ると、作り出したハンバーガーセットが10個と、なんだか随分と可愛らしいステッキが一緒に置かれていた。
しかしこのステッキ、どう見ても魔法少女系のアニメなんかで使われるようなピンク色でファンシーな感じ… しかも! いかにも子供用玩具といったちゃちな物だった!
「いやこれ… どうしろと?」
突然現れた素敵なステッキを眺めてみる…
おや? 何やら文字が見えてきたぞ?
【ピンクマジカルステッキ】
少量の魔力で無属性の魔力光線を撃つ事が出来るステッキ。目視で狙いを定めてステッキを振るだけの簡単な作業です。「マジカルビーム」と唱えながら使用すると威力が1.5倍!
「うーん? これはアレか? 俺にも攻撃手段が出来たことを喜ぶところなのかな? でもこの見た目が…」
全長35センチほどだろうか、持ち手というかグリップのところが両手で掴めるように出来ていて、先端には何と! ハートマークに加工されているではないか!
いくら大学生の俺でもこんな物を持ち歩くだけじゃなく、マジカルビーム? そんな事を言いながら攻撃するなんてちょっと抵抗がありすぎるんだが…
「まぁいい、命が懸かった状況になれば見た目の事なんてどうでもよくなるだろう。多分… きっとな! まぁそれよりも、このマジカルビームとやらがどれほどのものなのか見てみる必要があるよな。絡んできた不良っぽい奴についつい使ってみたら爆散したなんて… シャレにならねぇもんな」
とりあえずハンバーガーセットはゴミ箱… この呼び方だと気分が悪くなるから収納と呼ぼう! 収納に入れてマジカルステッキを片手に歩き出す。とりあえずちょっと歩いたところに大きな岩が見えるから、それに向かって攻撃をしてみようか。
ビームってくらいだから遠距離攻撃なんだろうけど… このステッキがすでにおもちゃみたいな見た目だし、もしかしたら子供用の遊び道具なんて事もあり得るから射程なんかも知っておいた方が良いだろうな。
「目視で狙いをって事は標的を見るだけで狙えるって事か? それってほぼ必中って事じゃないのかね… まぁいいや、早速試してみよう。まずは無言でビームだな」
見つけてあった大きな岩まで大体20メートルほど離れたところから、岩の中心部分を見つめながらマジカルステッキを振り下ろす。
チュイン!
「うわお! 思ってたよりも本格的… というか、ゲームとかで良く見るビームそのまんまだな!」
マジカルビームは本当に狙い通り、大きな岩の中心部に命中してちょっとした焦げ目を作っていた。20メートルだと余裕で届いちゃう感じか? もうちょっと離れてみようかな。
5メートルほど下がり、目測で25メートルほど離れた岩を見つめて2度目のビームを放つ…
チュイン!
「おお? 今のは途中でビームが消えたな? 岩から1メートルくらい手前で消えたように見えたから、まぁ射程は20メートルとしておこうか。じゃあ次は… 嫌だけど唱えてみるか、『マジカルビーム』と…」
最初の位置に戻ってきて、1.5倍になるという唱えるバージョンを…
「いくぞ! マジカルビーム!」
チュイン! ジュゥ…
「おおお、本当に今のが1.5倍なのか? 穴が開いたんだけど、岩に」
うん、これは思っていたよりも遥かに危険な武器のようだな… でもなんだ? これ程の物がこうも簡単にスポンと手に入るなんて、この武器でも厳しい状況になり得るって事か? うわぁ怖い怖い、そういうの勘弁してほしいんだよね…
俺はまぁ喧嘩… というか、殴り合いというものはした事が無い。せいぜい口喧嘩くらいしか… そんな俺がこの武器でも厳しいような世界で生きていかないといけないのか?
今更だけど、あのサークルの先輩方に対して怒りがこみあげてくるな… もちろんさっきの王もそうだ!
「よーし! もうこうなりゃやけくそだ! やられるくらいならやる! そんな気持ちで行くぞ!」
帰れる保証のない異世界で、俺は生き残るために決意を新たにする。大学にいた頃の俺はつまらない人生を送っていたのかもしれないが、それでも生きていくのは簡単だった。バイトもしてたし学食は安かったしな!
でも今いるこの世界… まだ危険なことは起きてはいないが何が起こるかさっぱり分からない、防衛策はなんぼあったって足りないくらいだしな。
「それにしても… このマジカルステッキ? 微妙な大きさなんとかならんかったのかな… どこにしまっておけばいいかな」
仕方ないので無理矢理ベルトに隙間を作り、武士がしていたようにステッキを差してみる。うん、腰にくる感触が何というか少し痛いね。
とりあえず空がすっかり暗くなってきたので、今日はこの岩のところで野宿するしかないか… 腹減ったな、ハンバーガーでも食うか。
岩陰に腰を下ろし、ゴミ… 収納からハンバーガーセットを1つ取り出して食べ始める。フライドポテトとオニオンフライの効果が発動したらしく、徐々に疲れや先ほどはなったマジカルビームの分の魔力が回復されているのだろう… 心地良い感じだな。
食事が終わり、食前に手を拭いた後置いていたウェットティッシュで再び手と顔を拭き取る。そういえばクリーンの魔法が付与? されているとか書いていたな… しかも乾くまで有効と。ならば服の上からでも拭いて行けば綺麗になるのかな?
思い付きで頭を拭き、服を着たまま全身をウェットティッシュでなぞっていく…
「おおお! なんか体中がさっぱりしたぞ? これは便利だなぁ! しかも服まで綺麗になってるような?」
うん、これは便利だ。風呂やシャワーを浴びれないのは不満だが、とりあえずこれがあれば清潔には出来るようで安心した。