214 響の心境とバンガード
誤字報告いつもありがとうございます。
「クローディア! 俺に任せろと言っていただろう!」
「いやぁすまんの、こ奴があまりにも馬鹿じゃったからの… つい撃ってしまった、反省はしておらんがの」
「ぐぬぬ…」
「さて、こやつらの処遇じゃが… 主よ、私に任せてもらってもいいかの?」
「いいけど… あまりえげつない方向は勘弁してね」
「大丈夫じゃ。このアホな辺境伯とアホさ加減が伝染している奴だけ始末して、幾分まともそうなやつを選別して帰してやろうと思っておる。まぁ我らの行動が他の貴族へ漏れるやもしれぬが、そこはまぁ必要経費じゃろう」
「私は反対です。ご主人様に牙を向けた者に対して無傷で帰すなんて、今後のためにならないと思います」
おおう、シフはクローディアの案に異を唱えたぞ? いつの間にか反論できるようになっていたなんて… 精神的にも成長というか、余裕が出てきてるってことかな? まぁ言い分は過激だけどね、誰の影響なんだか。
「まぁそう言うでないシフよ。主も言うたであろう? えげつないのは駄目じゃと。それに本人の意思で動いている者と、命令されて仕方なくという者をまとめてしまってはいかんのじゃ。わかるかの?」
「まぁそれは…」
「とりあえず貴族の男は俺が殴っておくぞ、手足を順に折っていけばいいのか?」
「待て待て!」
「ご主人よ、この手の馬鹿は死んでも治らんタイプだぞ、慈悲をかけるのは無用だ」
グレイも過激な発言をしてくるが慈悲は無用か… まぁ俺からしてみれば驚くほど偏った選民志向のダメ貴族だったが、別に最終的に殺すのであれば苦しませることに意味を見出せないんだけど。
「この手の男がどのように命乞いをするか聞こうじゃないか、今まで貴族の立場で何人も不要に殺してきた男の言葉をな」
ふむ、グレイも貴族に対して思うところがあるみたいだからな… 任せると言ってしまっているし、ここは口出しは止めておくか。
しかしなんだ、俺の持つ命の価値観も随分と変わってしまったなぁ。
実際俺が直接手を下してないかもしれないが、俺を主と言う仲間たちが俺を守るために闇ギルドの連中とかを何人も殺している。その行為に対して感じる禁忌感ってやつが薄れてきている気がするね…
これは環境の変化に対応したって事なんだろうか。でもまぁやらなきゃやられる世界だし、慈悲をかけた程度で改善しそうな奴じゃないってのも同感だけどね。
その後、辺境伯と名乗った貴族に対する報復は粛々と完了した。
報復というより八つ当たりに近いかもという感じだったが、おそらく血を見たところで引くような貴族ではなかったからこれが最速の解決手段だったと思おう。
結果的にクローディアが言うところの『命令されて仕方なく』という護衛は1人しかいなかった。辺境伯自身がお出かけするのに選ばれた護衛だもんな、護衛部隊の中でも選りすぐりの者たちだっただろうし考え方も辺境伯と同様の者ばかりだったという落ちだった。
そしてグレイが言っていた『命乞い』というやつ… それはもうひどいものだったよ。配下の護衛の命をくれてやるから見逃せとか、直属の配下に仕立て上げてやるから止めろとか。命乞いをしているはずなのに常に上から目線だったしね、やはり腐った貴族というのは俺とは根本的に合わないね。それが再確認できた結果となった。
そして逃がした1人の護衛… まぁどれほど口止めしたところで今回の件はすぐにでも広まってしまう事だろう。
「という事で、今回のダンジョンアタックは中止だな。絶対途中で邪魔が入りそうだし」
「うむ、全員殺しておけばそのような事もなかったじゃろうが、主の心にかかる負担は少ない方が良いじゃろうな」
「口惜しいが仕方がないが、中止にするとしてこれからどうするんだ?」
グレイとクローディアは今回の決定に不服はあるだろうけど従ってくれるみたいだな。アイシャとシフも反対する気配は感じられないし…
「面倒だけどバンガードに戻ろうか。下手にギルドを経由するより安全な気がするし」
「そうじゃの。いくら中立を謳うギルドとて、貴族殺しの罪人がという話になれば動かざるを得なくなるじゃろう。最初からバンガードで活動をしていたことにするのが賢明じゃな」
「うむ。バンガードであれば魔境の魔物と戦えるからな、俺はそれでいいぞ」
というわけで、目的を中断させて俺達はバンガードへ戻ることにした。バンガードでは大変な混乱が起きていることも知らず…
SIDE:ガラハド
「魔力を失ったものは交代して休憩を取れ! 今が踏ん張りどころだぞ!」
「「「はい師団長!」」」
師団長ではないと何度言えば… だが今はそんなことを言っている場合ではないな。
突然聞こえてきた魔物の咆哮らしき大きな声、その直後に魔境から魔物が溢れ出るようにバンガードへと押し寄せてきた。
最初は良かった、浅層の魔物ばかりだったから。しかし次第に第2層と呼ばれる地域に棲む魔物まで混じりだし、我等元魔術師団総員で相手をしているにもかかわらず押されつつあるのだ。しかも相手にしている魔物はバンガードへと直接向かって来る魔物だけで、他の方向に出てきた魔物はとてもじゃないが手を回せるだけの余裕は無いのが現状だ。
「後方の注意も怠るな! いつ向きを変えてバンガードへと押し寄せてくるかわからんからな!」
そうなのだ、この状況で挟撃… それだけでもまずいのに全方向から襲われる可能性もあるのだ、ヒビキ殿から預かっているこの拠点を守り切るには手が足らない…
「師団長! 通り過ぎた魔物は脇目も振らずに遠ざかっていきます、後方からこちらに向かってきている魔物はいません!」
「分かった! だが監視の目は緩めるな!」
やはりあの咆哮が原因なのだろう、アレに怯えて逃げているという事なのだろう。しかし何から逃げているのか知らないが、バンガードに向かってきている魔物は近づけるわけにはいかん… 間違いなくこの拠点を障害物と認定し、破壊してでも通り抜けようとするだろう。
「くっ、ヒビキ殿はゴーマンレッド王国に旅立ったばかり、戻るにしてもダンジョン攻略後だろうから最悪2ヶ月位はかかるだろう… それまでもたせられるか?」
いやいかん、現状指揮官はこのガラハドなのだ、弱音を吐くわけにはいかん。しかし…
物見櫓から魔境の方を見ると、見たこともない大型の魔物が走っている姿が見えた。
「ちっ、試練にしては厳しすぎやしないだろうか? だが今更逃げる場所など無い、戦い抜くしか生きる道は無いのだ! だてにレベルだけが高いわけじゃないぞ! この戦いも我らの経験として耐え抜いてみせる!」
バンガードの空は、夕焼けにより美しい姿を見せていた。
お正月休み中にストックを増やせればとパソコンに向かっております。しかし溜まっている新着小説やユーチューブなどの誘惑ががが… あ、帰省は止めて、雪の無い冬を満喫しております\(^o^)/
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