212 ゴーマンレッド王国領土内
大変遅れましてすいません…
「うーん… この道は一度通ってるはずなんだけどな、サッパリ記憶に無いや」
「あの頃は言うほど余裕はなかったからの、そんなもんじゃな」
現在最初に通った道を引き返し、ゴーマンレッド王国へと向かっているんだけど… なんというか風景に見覚えを感じないんだよね! 確かにあの頃の俺達には周囲の風景に気をやる余裕なんてなかったな。まぁグレイだけは常にやる気満々だったのは覚えているけど…
「しかし次の町は覚えておるのじゃろ? なんでも情報収集のためにハンバーガーを振舞ったとか言っておったじゃろ」
「あーそうだね! みんな逞しかったのは覚えているよ。でも多分俺の事は覚えていないんじゃないかなぁ… たった1日の事だしね」
「どうじゃかな。私ならハンバーガーの味を忘れられなくて、主の顔も忘れんと思うの」
「そういうもの?」
「そういうもんじゃ。立ち寄れば一斉に集まってくる可能性の方が高いと思っておる… どうするのじゃ? 私の予想ではハンバーガーを大量によこせとか言ってくる阿呆もおるじゃろうと安易に想像がつくのじゃが」
「うーん…」
まぁ前回のアレコレは当時のスキルとしては大盤振る舞いだったからね、出し惜しみとかを気にする以前にとにかく情報が欲しかった。その時の行動については後悔はしていない、だけどそうだよな… 次から次へと美味しいハンバーガーが出てきて胃腸を調整するドリンク、しまいには清潔にできるお手拭きまであったんだ… そりゃ噂にもなるだろうしそれを欲する者も現れて当然かもしれない。
「うん、俺もなんだかそんな気がしてきたよ。別に補給とか必要ないしスルーしていこうか」
「ま、それが妥当じゃの。あのハンバーガーの味を知りつつも食べる機会が失われる… 哀れに思うかもしれんが、ここで重要なのはゴーマンレッド王国の権力者に主の来訪を悟られないことじゃ。主の来訪が知られれば、ダンジョン付近に網を張れば容易く遭遇できると考えるじゃろう。
と、なれば次に来るのは権力を用いて主を囲い込む、もしくは拘束してでも… なんてことになるじゃろう」
「この国の貴族ならやりそうだね。じゃあこの国では町や村には立ち寄らない事と、なるべく地元の人と関わらないようにしなきゃね」
「うむ、それがよかろう。だがご主人よ、向こうから豪華な馬車が近づいてきているがどうする?」
「えっ?」
先頭を歩いていたグレイが指さす方向… つまり俺達にとっての進行方向から豪華に見える馬車が確かに近づいてきていた。
「ふむ、この辺は見通しが悪いからじゃろうがこれほど接近されるまで気づかぬとは…」
クローディアが馬車を睨みつけるがこれは仕方がない、この先には大きな丘があって向こう側が見通せないような地形になっているからもっと早くに気づくのは無理だろう。
「どうするの? ご主人様」
「今から進行方向を変えると、向こうから見たら怪しく見えるだろうね… どうするか」
「馬車が豪華じゃから道を譲る体で街道から離れるのが最適じゃろう、というかそれしか方法はないかもしれんの」
「そうだねぇ、あの馬車がゴーマンレッド王国の貴族とかじゃなくて豪商とかであることを祈ろうか」
「ご主人よ、一応言っておくが剣を向けられればご主人を守る行動を優先させるぞ」
「それには私も同意見じゃな、なんとなくじゃがその可能性は高そうじゃが」
うーん… 馬車の護衛と思われる人は5人か、しかも全員騎乗している… 今から道を外れて動いたらかなりの確率で追ってきそうな気がするな。いや、目的を持って移動しているなら離れていくものに頓着はしないか? もしそうならこのまま道を譲って端に寄っても干渉してこない可能性も…
「一番楽なのはこのまますれ違う事だね、道を譲った風を装って街道から少し離れて様子を見ようか。もしもそれで絡んでくるようなら…」
「俺に任せておけ。騎乗しているものは叩き落し、馬車は車輪を壊せば動けなくなるだろう。殺しはしないから安心するがいいぞ」
「うむ、フォローは私に任せるのじゃ。アイシャとシフは主の守護を頼むのじゃ」
「わかったよ!」
「お任せください」
「ふふふ… ここは久々にイエローサンダーステッキの出番じゃな、全員まとめて痺れさせてやるのじゃ!」
「おい待て、今自分でフォローすると言っただろう? 黙って俺の討ち漏らしを処理するがいい」
「なんじゃと? ここは効率重視で行くのが正解じゃろう、グレイは馬車の車輪を壊せばいいじゃろ」
「そういうことを言ってるわけじゃない…」
あらら、また行動方針でグレイとクローディアが… まったく仲の良いことで。そもそも何事もなく進めるという可能性は考えていないのだろうか、2人はすでにやる気である…
まぁいいか、ゴーマンレッド王国に限らず貴族という生き物は何を考えているのかわからないし、出来得る対処方法は用意していた方が間違いなく良いだろう。俺としては何事もなく進められればいいんだろうけど、ある意味フラグを建ててしまったかもしれないな…
そんなことを考えつつも、俺達は馬車が接近してくる前に道を譲るため、街道から少し離れるのだった。
広大な面積を誇る魔境、その最奥とされる中心部には巨大な生物が横たわっていた。
眠っているのか、それとも何か力を蓄えるために瞑想しているのか… その巨大な生物は目を閉じたままピクリとも動かない。だがしっかりと力強く呼吸をしているため、特に弱っているわけでも無さそうに見える。
その巨大な生物の傍らに、その生物をまるで縮小したかのように瓜二つの生物が4匹じゃれあっている。客観的に見て親子であるのは間違いないようで、その子供と思われる生物はまるで周囲の警戒をするそぶりもなく遊んでいる… よほど安全だと信じているのだろうか。
その場所から西に500メートルほど離れた場所に、おそらく全長は30メートルを超えるであろう長大な双頭の蛇がその様子を窺っていた… 紫色の長い舌をチロチロと出しながら、子供が戯れている様子を見ているようだ。
ちょうどその時、今まで北から吹いていた風が向きを変える。その風向きは東からの微風… 巨大な生物親子の匂いが蛇の方へと流れてくる。
すると、その長大な体躯からは想像もできないほど気配が薄れていき、まったく音を立てずに戯れている子供の方へと動き出す。長大でありながら地を這うその姿に親子が気づいている様子はない。
微風だったその風が一瞬強くなった時、長大な蛇は大きく鎌首を上げ、戯れている4匹の子供をまとめて嚙みついたのだった。
投稿ペースについては頑張っているのですが、忙しくて時間がなかなか取れていないのです。そんな中でも良いものが書けるよう努力していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。




