205 後始末とギルマス
誤字報告いつもありがとうございます。
なんてやり取りを続けていると、想定通り悶絶していた男が回復してじわじわと動き始めていた。俺も含めてあえて見ないようにすると…
「バカめ、油断したな?」
そんな言葉と3人の仲間を置いて一気に逃げ出した。
「おい待てよ! 1人だけずるいぞ、助けてくれよ!」
逃げ出した男は振り返ることなく走り去り、姿が見えなくなった。
「残念じゃのぅ、仲間じゃというのに置いてけぼりとか仲が悪いのか?」
「別に仲間というわけでもないだろう、どうせ上辺だけだ」
「それもそうじゃの。では主よ、ここからも予定通り行動させてもらうのじゃ」
「うむ、1人ちゃんと逃がしたのだから残りは殺しても構わんだろう? 今後のためだ」
「ああそうだね、よろしく頼むよ」
グレイもクローディアも、アイシャやシフですら冷酷ともとれる眼差しを見せている… 平気で人を狩って殺し、見目の良い者は金のために売り飛ばすという暗殺者達に対して人一倍恨みを持っているからだろう。事実この4人はそうやって虐げられていたからな、特にグレイとクローディアは奴隷だった期間が長かったから殊更許せないのだろう。
だったら俺は、黙って送り出そう。
俺の… 日本人としての倫理観を押し付けるつもりはないし、たとえ俺たちは「命は大事」と声を上げたからと言って周囲は決して同調しないだろう。むしろ同調する者が現れたとしても喜ぶのは暗殺者ギルドに関係する者くらい…
ま、俺個人としても最優先すべきは仲間だからね、他の者はどうでもいいとは言わないけど優先順位はぐっと下がってしまうのはしょうがない事だ。
「では、あの者たちを処理する間は私が護衛につきます」
「いいのか?」
「もちろんです」
グレイ、クローディア、アイシャがそれぞれ暗殺者を引きずり俺の視界の外へと移動を開始。そしてシフが護衛と称して俺のそばへと残る。
しかしシフの目は怒りに染まっているのか真っ赤になっている… いろいろと我慢しているんだろうな。
「私も自身の手で処理したいと思っていますが、正直これが最後だなんて思っていません。あのバカ達ならきっとまた襲ってきます、その時は私を優先させてもらえれば」
「ま、その辺はあの3人とも相談だな。だけどとりあえずしばらくは何も干渉はないだろう、ダンジョンアタックに集中しよう」
「はい!」
姿は見えないが暗殺者達の声がほんのりと聞こえてくる… 多分もう戻ってくるんだろう。とりあえず予定の一つが片付いたからあとはダンジョンアタックを進め、願わくばアイテム袋をゲットしたいもんだな! 最低でも人数分である5個… 現在2個持っているから残りは3個だ、ここで手に入ればかなり大きい。まぁナイトハルトにも回してやりたいから、持たせる順番はどうしようか悩ましいところだ。
お留守番をしているシフの口にアップルパイを放り込み、先ほどからしている凍り付いたかのような冷たい瞳をほぐしておく。俺のハンバーガーも食べ慣れたとはいえそこはやはり女の子、甘いものを食べると視線が和らぐんだよね!
「待たせたの」
「いやぁ大丈夫、お疲れ様」
ほどなくして3人が戻ってくる。当然のように連れていかれた3人の暗殺者達はこのダンジョンの糧になったのだろう… 後は逃げだした男がどのように報告をするのか、できればもう俺達に関わらない方向で進んでくれるとありがたい。ま、希望的観測だけどね。
あの男がこのまま行方をくらますかもしれないし、むしろ暗殺者ギルドの復讐心に火がつくかもしれない。でもとっくに賽は投げられているからな! シフの言う通りこれで終わりじゃないことも十分に考えられる。
「では気を取り直してダンジョンアタックを続けるとしますかね」
「うむ。しかしその前に休息じゃの、ちゃんと安全地帯を構築しなおして目が覚めてからじゃな」
「よーし、じゃあ休もうか!」
本日も概ね予定通りに事が進んだので、明日に備えて寝ようぜ!
SIDE:冒険者ギルドリャンシャン支部、ギルドマスター
「カンチャンの町に闇ギルドの者らしき数名が潜伏中だと? ヒビキ達の姿はあるのか?」
「いいえ、彼らはまだ来ていないようですね。来たとすればギルドに顔を出すでしょうからその時にまた連絡が来るかと思いますが」
「わかった、その連中を監視するよう伝えてくれ」
「はい」
ふむ、闇ギルドもなかなかしつこいようだな。まぁそれも仕方のないことだ… 何といっても暗殺をしくじっただけじゃなく、依頼主の情報まで広まってしまったのだからギルドとしての面目など木っ端微塵に砕かれた状況だからな。このまま日和ったりすれば、闇ギルドは依頼を受けたが返り討ちに遭い、怖くなって芋を引いたなんて言われることになるだろう。すでに言われてるかもしれんがな。
「とにかくヒビキ達の無事を確認しておかないとな… 誰かカンチャンに出張に行かせるか、いやいっそのことこの俺が」
「ギルマスはダメですよ? 仕事が滞ってしまいますので」
「最後まで言ってないだろう! だが他の者だといまいち信用がなぁ… 勇者の事もあるしディープパープルの事もある、どこから手を付ければいいのか悩ましいな」
「そうですねぇ… 老舗のカヤキス商会も連絡が取りにくいらしいですし、すでに乗り遅れているのかもしれませんね」
「全くだ! ヒビキにも一口嚙ませろと言っておいたんだがな、どうしてこうも後手に回るのか」
「ギルマスが信用されてないだけじゃ?」
「うるさい!」
もういい! もうこうなったらカンチャンへは俺が行くぞ! 今度こそしっかりと約束を取り付けて、勇者連中を含むナイトグリーン王国に引導を渡してやる!
投稿頻度が一層低くなってしまい申し訳ありません。人生初の熱中症とやらになってしまい、ひどい目に遭っていました\(^o^)/ 初体験の猛暑日… 太陽怖い。




