204 奇襲! …って、アレ?
誤字報告いつもありがとうございます。
割とのんびりしたダンジョンアタックも、グレイの腹が盛大に空腹をアピールしたため本日のアタックは終了となった。
今回は闇ギルドをおびき寄せての迎撃がある予定なので、ダークバリアステッキでの陣地構築も超適当だ! 普段のように全周を囲うようなことはしないで、寝床スペースの床とトイレ用スペースだけにバリアを使用。そして今回… なんと初めて対夜襲の見張りをつけての就寝となる。
うーん、まぁダークバリアステッキが優秀すぎたから不寝番をする必要がなかったからね…
「そんな訳で見張りの順番を決めるのじゃ」
「うむ、俺は何番目でも構わないぞ」
「大丈夫じゃ、グレイの出番は一番最初のつもりじゃからの」
「む? どうしてだ?」
「相手は間違いなく奇襲で来るじゃろうと予想できるからじゃ。考えてもみよ、見張りがグレイの時とアイシャの時… どちらが攻めやすいと?」
「うーむ、確かにそうだな。では早めに休んで備えるということだな?」
「その通りじゃ。そして残念じゃが主に見張りの順番は巡ってこぬからな?」
「な!?」
なんだとー! 夜の見張りとかちょっと興味があったんですけど? いかにも冒険中って感じがするからさ。
「そんなの当然じゃろ。奴らは対人戦闘の専門家じゃと何度も言うたじゃろ? いくら主のレベルが高かろうとさすがに不安じゃからの」
「そうそう! そういう仕事は任せてよ!」
「むぅ…」
なぜかアイシャまでもが俺の見張りは反対のようだ… まぁ不安だというのはまぁ理解できるけど、なんせ見張りなんて未経験だからね!
「それでじゃ、シフの耳がすでに4人分の足音を捉えたと先ほど報告があった。つまりこれから先、いつ奇襲されてもおかしくないということじゃな」
「俺としてはこの後すぐにでも来てもらいたいが… クローディアの予想はどうなのだ?」
「ふむ… ゆっくり進んでいたとはいえ、これほど早くに追いついてくるのじゃからやる気は満々じゃと予想できるの。つまりこの後野営を始めると数時間後には襲ってくるじゃろうと考えておる」
なるほど、勤勉なんだな。まぁ暗殺者が勤勉というのは全くよろしくない話だが、早急にケリがつくということならこちらとしても歓迎できる話だ。
「それで見張りの順番なのじゃが… まずはグレイ、その後に私がやるつもりじゃ。その次にシフ、最後にアイシャじゃな。
私の予想じゃとシフとアイシャの切り替えの時、もしくはシフの番の後半で来るじゃろうと思っておる。向こうも当然私たちのメンバーのことくらい把握しておるじゃろうから、見た目のごついグレイは当然の事、魔法に長けていると思われておる私の番でも襲ってはこぬじゃろう。向こうの本命は主かアイシャじゃと想定していると思うのじゃ」
「だが見張りに立つ時間の配分でご主人の番は無いと判断され、シフが出てきた時点でシフかアイシャでの二択になるというわけだな? そして早めに休んだ俺が万全になる前に来るということか」
「その通りじゃ。策としては、襲われた直後は多少慌てたふりでもしておけば良いと考えておる。いきなり襲撃に対処してしまうと逃げられる可能性があるからの」
俺抜きでどんどん話が進んでいく…
「つまり最初だけはシフか、場合によってはアイシャのみで4人の暗殺者を相手にすることになるのじゃが… まぁ平気じゃろ?」
「大丈夫!」
「私も大丈夫です。まずは逃げられないように足を壊せばいいってことですね?」
「その通りじゃが、くれぐれも手加減を忘れんように頼むのじゃ。1人わざと逃がして今回の情報を暗殺者ギルドに持って帰ってもらわんといけないからの」
「それは大丈夫だろ、戦闘音がすれば俺も出るし、たとえ逃げ出してもアイシャであれば追いつくだろう」
「うむ。ではその策で行くのじゃ。万が一襲ってこなくとも近日中には必ず来るからの、これも訓練の一つじゃと思ってやろうかの。それでは主よ、夕食の方を頼むのじゃ」
「あ、はい」
暗殺者からの襲撃が訓練の一つって… まぁいいけどね。
「ご主人、できれば見張り中の夜食の方も頼みたい。もしかすると匂いにつられて出てくるかもしれないからな!」
そんでもって夕食後、俺はアイシャを抱き枕代わりに寝床へと追いやられたのだった。
アイシャの温かい体温が心地良く、いつの間にやら眠ってしまったようだったが断末魔のような悲鳴を聞き飛び起きた。隣にいたはずのアイシャの姿はすでになく、暗殺者からの奇襲を受けているというのにのほほんと眠っていたとは情けない。
「ギャァァァァァ!」
「やめっ! もう降参するゴフッ!」
「何を言っている、まだ始まったばかりではないか。少しは根性を見せろ」
「足がぁぁぁ!」
うぉぉぉ… なんか怖いことになってるんですけど?
「主よ、目覚めたか。見ての通り間もなく制圧が完了するのじゃが… できれば主を起こさずに終わらせたかったの」
「いやいやいや! さすがにそこまで鈍感じゃないからね?」
クローディアの言う通り、目覚めの時に聞いた悲鳴の後に3人分の悲鳴… はい戦闘終了ですねわかります。
どうやら目覚めのきっかけとなった断末魔のような悲鳴… 暗殺者の1人が釘バットをボディに食らったらしく、脂汗をかきながら悶絶している。どうやらこの男が逃がす対象者らしい、悶絶はしているものの手足の怪我はなさそうだからね。
「さて、いろいろと詳しく聞かせてもらうのじゃ。言いたくなければ好きにするがよい、魔物の餌になるだけだからの」
「…………」
「うむ、良い度胸だ。だが元よりお前達がしゃべるとは思っていないからな、後でオークの前にでも放り投げてやる、運が良ければ生きて帰れるぞ」
「ちょっ!」
さすがに魔物の前に放り投げられるのはまずいと思ったらしく、慌てたように声を上げるがグレイが腹パンで黙らせていく… それも1人ずつ。
「待ってくれ! 喋る! 何が聞きたい? これ以上手出ししないんだったら何でも教えるぞ!」
「何でも教えるじゃと? どうやら立場を分かってはおらんらしいの。『喋らせてくださいお願いします』じゃろ? まぁもう手遅れじゃがな」
うーん… 今のこのシーンだけを切り取ったならば、完全に俺たちの方が悪者に見えちゃうね。でもまぁ暗殺者を相手に情状酌量なんて考えるまでもないんだけどね… さすがの俺だってそこまで寛容じゃないし、こいつらを放っておけばまた狙ってくるのはわかっていることだ。落ち着いて暮らすためにも決着を急がないと。
 




