202 カンチャンギルド
不定期ですが連載を再開します、よろしくお願いします。
「ふむ、この街も栄えているようだな」
「ダンジョンからの資源があるからじゃろうな、どこのダンジョンも代り映えはしないが廃れているよりはマシであろう」
カンチャンの街に着いたー!
距離的にはペンチャンとあまり変わららなかった気がするけど、随分と早くに着いたもんだ。まぁ急いだわけじゃないけどあまり間を空けると闇ギルドがねぇ、どう動くのか予想できないからさっさと俺達の居場所を察知してもらおうと思ったんだ。
「さて主よ、まだ日は高いがどうするのじゃ? 日光浴は十分済んでいるじゃろ?」
「うむ。もうこのままダンジョンに入っても良いんじゃないかと思うぞ」
「いやいや、目的を忘れたらダメだって! まずはギルドに行って俺達の存在を認知させなきゃね。なんならそのまま宿を取ってもいいくらいだよ」
「ぐぬぅ… 確かに多少顔を売っておかねばいかんだろうが、宿は取らなくても良いんじゃないか?」
「まぁまぁ、まずはギルドに行ってみてからだね。時間的に混んではいないと思うけど、ある程度冒険者がいればそこから噂は広まるって」
すぐにでもダンジョンに入りたそうなグレイを宥め、想定していた通りの行動を遂行する。別に俺達の顔は知らなくても、オーガにエルフ、狐人族に兎人族がセットとなれば「あ、あの組み合わせは!?」なんて勝手にやってくれるだろうさ。
早速街中にあるギルドへと入っていく。だがしかし…
「ん?」
なんだこれ? 急に空気が張り詰めたような、ピリピリした雰囲気がまとわりついてくる。
「ご主人、俺達に殺気を放ってくる奴が何人かいるな」
「へ~、って事は、すでに先回りされてたって事?」
「多分な。まぁリャンシャンダンジョンに続いてペンチャンダンジョンまで攻略したのだ、普通に考えても次はカンチャンダンジョンだと想像するぞ」
「デスヨネー」
しかしまぁ俺でも気づくくらいの殺気だなんて、どんだけやる気なんだよって話だよな。
「じゃが都合が良いではないか、主よ。わざわざ集める前に来てくれておるのじゃ、これは歓待しないとダメじゃのぅ」
「うむ、そうだな。これは宿を取ったら宿主に迷惑がかかると思うぞ? いっそこのままダンジョンに入った方が被害は出さずに済むと思うが」
「うーん、確かにそうかもしれないね。闇ギルドってくらいだし宿にいても普通に襲ってくるだろうからね。アイシャとシフもそれでいい?」
2人は涼しい顔で頷いている… この程度の殺気ではビクともしないって事なのかね。
「じゃあ受付に行って序盤のマップだけ買ってこようか、最高到達階層も聞いておかないとね」
「うむ、任せるがよい」
いつものようにクローディアが受付に向かっていく。その間俺達は依頼表でも眺めてこようかね。
各種依頼が掲示されている壁にはいろんな仕事が張られていた。やはりダンジョン都市とはいえ普通に護衛とか街中の掃除とかの仕事もあるんだな。
考えてみたら俺ってこの手の依頼を受けた事が無いぞ? だからランクが上がっていないんだが、上がって得られるメリットというやつは俺には魅力的に見えないんだよなぁ… 社会人の役職と同じで、ただ都合良く責任ばかり押し付けられているように感じるんだよ。ま、上げる気もないしどうでもいいか。
こんな事をしている最中でも先ほどと変わらないピリピリした空気… これはアレか? 餌も付けていないのに勝手に釣り上げられるってやつか? 本当にこのままダンジョンに入ったら、わざわざついてきて襲ってきそうだな。出来れば人数とかの把握はしておきたいんだが、ぱっと見普通の冒険者に見えるから誰が暗殺者なのかさっぱり分からん。しかたないからここは一本釣りしかないようだね
「クハハ! ご主人は面白い表現をするのだな、しかし的を得ているぞ。俺が見事釣り上げて見せるとするか」
「ボクも! ボクもやるよ! あいつらのせいでご主人様が落ち着けないんでしょ? そんな奴は赦さないよ!」
「その通りです! 私もやりますよ、釘バットの餌食にしてやります!」
「お、おう… ほどほどにね?」
なんだこれ、みんなやる気が漲り過ぎでしょう!
「あーでも、最低でも1人は逃がしてやる方向で頼むね」
「分かっている、もっと多くの暗殺者をおびき寄せるためにだろう? 逃がしてやれば新たに仲間を連れて来てくれるだろうからな、1人くらい構わん」
そう、更に返り討ちになったことを報告してもらわなきゃいけないからね。できればすぐにでも闇ギルドの偉い人が出て来てくれると話が早くて助かるんだけど… まぁ組織というのは偉い人は最後まで出てこないもんだからのんびりとやりますか。
「それにしても… 何人くらいいそうだ?」
「そうだな、この場には2人ってところだ。まぁ他にもいるかもしれないが」
依頼表が張られている場所から動かずにボソっと質問すると、グレイがそれに答えてくれる。しかし2人かぁ… 多分それだけじゃないんだろうね。前回は4人いたけど撃退されちゃったわけだし、それに対する報復ってんならもっと人数を寄こしているだろう。違う場所でも張り込んでいるのだろうかね。
ちらりとギルド内を見てみると、確かにギラギラした目つきの男2人が俺達の方を見ていた。ちょっと冒険者って目ではないね! 好奇心で見ている冒険者とは本当に感じが違う。
「で? どうするのだ? ご主人」
「やっぱりダンジョンかねぇ。他にも仲間がいそうだし、1階層からのんびりと動いていれば仕掛けてくるんじゃないか?」
「ふむ、ではクローディアが戻り次第向かおうか」
「だね」
受付の方を見てみると、クローディアはまだ何か話し込んでいるな。ここのギルドの受付は20代前半らしく見える女性だが、ペンチャンギルドの受付みたいに勢いよく話しかけてきてるって感じじゃないから良い感じで情報を収集しているのだろう。
あっ、クローディアが受付から動き出した! 今回は手早く終わったようで何よりだ。
「戻ったのじゃ。すぐにでも向かうのかの?」
「そうだね、その方が面倒が無さそうだしね。どうせついてくるんだろうからのんびりね」
「うむ。見た感じ2人いるようじゃが、恐らくそれだけではないじゃろう。ダンジョンマップは10階層までしか無かったのじゃが、まぁそれまでに人気の少ない場所くらいあるじゃろ」
「そこで釣り上げるのだな? では参ろうか」
着いて早々怪しげな雰囲気だが、頼もしい仲間達がいるから問題は無い。しかも速攻で目的の一つがクリアできそうなんで幸先は良いのかもね。
誤字報告いつもありがとうございます。




