201 今度はカンチャンの街だ!
誤字報告いつもありがとうございます。
急遽カンチャンダンジョンに行く事となったが、それはそれで別に構わない。アイシャの新装備の慣らしもダンジョンで出来るからね。むしろすっかり慣れてしまっているダンジョンでやった方が良いまである。
「どうだ? 個人的には良く出来たと思うが」
「うーん、どれどれ」
ホーク親方の工房にやってきて、早速頼んであった双剣をアイシャが受け取る。刃渡りは50センチ程だろうか、ちょっと短く見えてしまうがアイシャの速度を考えれば大した問題ではないのかもしれない。まぁただ、あまりにも巨体の魔物を相手にするにはその刃渡りではつける傷は浅くなるだろうけどね。
余計な飾りは一切無く、質のみを追求したと言われても納得の仕上がりにグレイはなんかニヤニヤしている… なんだよ、実は刃物フェチだったのか?
アイシャは双剣を手にして動きをチェック、なんだかちょっとぎこちない感じもするが後は慣れるしか無いだろう。アイシャの手数を考えれば単純に攻撃力は倍増するはずだし、攻撃が最大の防御であるという観点から見れば安全度も増したという事になるはず。まぁそれでもちょっと怖いからあまり邪魔にならなさそうな小手とか作ってもらった方が良いかもしれないけどね。
「うん、何となくわかってきたよ!」
「そうか? 切れ味は俺が保証するが、あまりにも硬い物を斬りつけ過ぎると… 分かっているな?」
ホーク親方にとっても自信作なのか、しっかりと保証をしてくれているが… まぁ刃物だしね、いくらミスリルと言っても使い方を誤れば刃こぼれはするだろう。
しかしこれで用事は終わったね、後はいつ出発するかだが。
「今から出れば良いだろう。どうせカンチャンまで何日もかかるんだ、朝出ようが今から出ようが何度も野営をする事になるのだから時間を気にするなど無意味だろう?」
「それもそうなんだけどね、気分ってものがあるだろ?」
「ふむ、よくわからんな。思い立った時が行動する時ではないのか?」
グレイはすぐにでも旅立ちたいご様子… いつもの事だけど行き先がダンジョンとなると張り切っちゃうよなぁ。
「ま、ここはグレイの言う通りじゃろ。いつ出ても変わらんのじゃから早い方がという事じゃろ」
「それもそうか。じゃあ一応ガラハドに声だけかけて出発しようか」
ちなみに十手の方は今回完成していない、優先順位的にアイシャの双剣に手がかかっていたからそれも仕方のない事。多分次に戻ってきた時には出来上がっているんじゃないかな? それに期待しよう。
そんな訳でまたしても予定を変更、カンチャンダンジョンを目指す事になった! とはいえ、本命は闇ギルドの逆恨みに対抗するためなんだけどね。それでももう1個アイテム袋が手に入るかもというのも期待しているし、それ以外の事もね。
「ご主人よ、走るぞ」
「おっし! 俊足スキルの見せ所だね! あ、アイシャとシフは本気を出さないようにね」
「大丈夫!」
「足並みは揃えますので大丈夫です」
「そこはしっかり頼むのじゃ。私はさすがについていけんからの…」
まぁそこは魔法使いのクローディア… いくらレベルが上がり、剛力に俊足スキルがあったとしても身体能力の格差は縮まらない。そこら辺だけを見るなら俺の方が上になってるからね。
「クローディアが疲れたらボクが背負ってあげるよ!」
「いや、さすがにアイシャに背負われると悲しくなるのじゃ。せめてシフに頼みたい」
「むー! なんで?」
「アイシャは私よりも背が低いからな、いくら力が強かろうと引きずられそうなのじゃ」
シフはほんの僅かの間でみるみる肉感が増したんだが、アイシャはなぜかあまり大きくならないんだよな。まぁクローディアが言うには年齢的な問題で、特に何かがおかしいわけではないと言っていたけどね。まぁ実際問題成長ってやつは時間のかかるものだから、元々大人だったシフとはそこが違うと言った感じなのだろう。
そして俺達は走り出す、バンガードからは北北東になるのか? アキナイブルー王国とナイトグリーン王国との国境付近にあるというカンチャンの街へと。
SIDE:エルフの組合員ジャン
俺の流した噂は今や国中に広まっていた。俺たちエルフは寿命が長いせいか、人間種のように生き急ぐという生活はしないからな… 特に山も無く谷も無い生を送っているせいか娯楽の乏しい種族だと思っている。だからだろう、俺の流した噂は一種の娯楽のように瞬く間に広まったのだ。
そして国に戻ってきた俺達を追うように新しい噂も流れてきている… クローディア様のいるパーティがペンチャンダンジョンも攻略したという話だ。それについては俺は全く疑っていない、なにせ闇ギルドの連中を拷問した場所は80階層だったのをこの目で見ていたからだ。
アイアンゴーレムが徘徊する階層… そのゴーレムを片手間のように討伐するかの者達の姿が未だ目に焼き付いているようだ。
「となれば、次は恐らくカンチャンダンジョンに向かうのだと予想できる。東から順に攻めている感じだからな、距離的にも間違いないだろう」
「組合長、突然呼び出した挙句にそんな話を聞かせてどうするつもりだ?」
「あ? 何を言っているんだジャン、お前に指名依頼を出すために決まっているだろう。今のところ唯一ジャンとエルマンだけがクローディア様との接触に成功しているんだ、我ら森林組合からの手紙をクローディア様に渡してもらいたいのだ」
「ちょっと待ってくれ組合長、俺はクローディア様を怒らせてしまったんだぞ? 言われた事も守れずに。今更どの面下げて会いに行けって言うんだよ」
全く… 今度こそあの冷酷な目をした兎人族の女に殴り殺されるぞ? あの人を嬲るために作られたかのような武器で。俺は見たんだ、あの武器で殴られた暗殺者の足の骨が砕けるところを… それどころかびっしりと付いているトゲトゲが刺さって血まで噴き出していたからな、アレを思い出すだけで体が震えてきやがる。それにあの兎人族の女の真っ赤な瞳… あれを見ただけで足が竦むってもんだぜ。
「だがエルマンはお前以外と組まないだろうし、使者という立場で会えばさすがのクローディア様もお怒りを鎮めて下さるだろう。そもそもあちらがその気であれば噂なんて自分達で流せただろうし、お前もその場で殺されていたはずだ。それをしなかったという事は、我らエルフが同胞に対する気持ちを今でもお持ちくださっている証拠だと思う」
「いやしかし…」
「これは緊急依頼であり強制依頼でもある。ジャンの言いたい事も分かるが、和解してくるつもりで臨んでくれ」
「ぐぬ…」
また国を離れなければいけないのか… ちくしょう! もうどうにでもしやがれ!
活動報告に緊急報告有り、閲覧の方をお願いします。
 




