199 冒険者ギルドも考え始めたようです
誤字報告いつもありがとうございます。
夜、なぜかグレイとアイシャにまで小言を言われてしまった… まぁどちらも行くなら連れて行けという話だったけどね。ちなみに俺が持ち帰ったボアは、その晩皆に振舞われたのは言うまでもない。
アイシャの双剣は15日前後かかるらしく、魔境への本格的な侵攻は手に入り次第という事となった。もちろんその武器に馴染むまでの期間は設けないとね、いざ実戦で検証なんて無茶ぶりにも程があるよ… 攻略先は魔境だし。
そんな訳で翌日、本格的じゃない魔境攻略が始まろうとしていた。
「とりあえず道しるべを付けながら進むのじゃ、ついでに足元もどうにかしておきたいしのぅ」
「そうだな、俺やアイシャ、シフなら森歩きなど苦にもならんが長年森から離れていたクローディアは辛かろう」
「なんじゃと? あまりエルフを舐めるでない! 多少ブランクがあったからといっても苦になる訳がないじゃろう。今後素材の運搬用にと思っておっただけじゃ」
またグレイとクローディアがじゃれてるよ… アイシャは完全放置だし、シフだって薄っすらと笑いながら見守ってるし、もう日常茶飯事だな。
魔境に入り、ズンズンと奥の方に向かって歩き出す。先頭はグレイとシフ、この2人が鉄製の剣を使って足元の草や歩くのに邪魔になりそうな枝を払っていく。俺とクローディアがその後に続き、最後尾はアイシャとなっている。森の中だと当たり前のように回り込まれたりするからね、索敵上手のアイシャが後方の警戒という事だ。
「しかしこの辺もそれなりに足跡が残っているな、魔術師どもも多少はやるようになったもんだ」
「それはそうじゃろ。リャンシャンダンジョンであれだけレベルを上げたのじゃ、浅層程度の魔物に後れはとらんじゃろ」
「まぁな。それに狩れなければ食う肉も無いからな、バンガードもいつの間にか食い扶持が増えたのだから量も必要になるだろう」
グレイの換算は肉なんだね…
SIDE:冒険者ギルドアキナイブルー王国本部、本部長補佐ミリアム
本日は緊急国内会議、国中にある各地ギルドのマスターが出席される会議が行われます。緊急会議とはいえ遠方のギルドに所属するマスターに合わせての開催となっており、招集が発布されてからすでに10日が過ぎています。急がなければ後れを取るかもしれないという事もあり、会議室はすでに緊張感で満ちております。
「ペンチャンギルドのマスターが到着いたしました」
「そうか、では早速始めるとする」
アキナイブルー王国本部長であるアクオの号令が響き、そこに静寂が訪れる。
「さて、全員集まったのでこれより緊急会議を始める。議題は概ね予想がついているとは思うが… ミリアム、説明を頼む」
「はい、では説明を始めます。
まず皆様も聞き及んでいると思いますが冒険者ヒビキ、グレイ、クローディア、アイシャと奴隷のシフの5名がペンチャンダンジョンにて闇ギルドと遭遇し、これらを撃退したという噂に関しまして… 彼らパーティが去った後に闇ギルドと思われる者が一般人を装ってペンチャンの街に複数名入り込んだのを確認しました。
闇ギルドの者らしき者達はペンチャンの街にてヒビキ達パーティの情報を収集していた模様ですが、確認されてから3日後には全員街を出たとの事です。ペンチャンギルドの受付にも現れたそうで、イラついた表情で話をしていたとの事でした」
「うむ、それでペンチャンギルドのマスターよ、彼らパーティがどこに行くなど聞いてはいないか?」
「いえ、受付には攻略が済んだので移動をするとしか言われてないそうです」
「まぁそうだよな… しかし攻略が済んだとはどういう意味なんだ? 目的の階層まで進んだからなのか、それともリャンシャンに続いてペンチャンダンジョンも最下層まで達したという事か…」
会議は進んで行きますが、結局どこのギルドも彼らパーティの現在地を把握している者はおりませんでした。
……が、ここでカンチャンギルドのマスターが手を挙げて発言を始めます。
「我がカンチャンギルドに、ディープパープル共和国の森林組合に所属する者から連絡が入った。どうやらヒビキ達パーティと闇ギルドの戦闘を目撃したエルフが国に戻り、その事を報告してきたと言う」
「おお! では闇ギルドを撃退したというのは真の事だったか!」
「恐らく。エルフ側としてもヒビキ達パーティに所属しているエルフ、クローディアを支援したいとの申し入れがあった」
「なるほど… 暗殺に失敗しただけではなく、それらを目撃したエルフによってばら撒かれた噂の火消しに躍起になっているという事だな」
闇ギルドの暗殺者… 依頼により他者を殺して糧を得ている集団であり、我らギルドはもちろんの事、あらゆる組織からも忌み嫌われているギルドなのですが… それを利用する者も後を絶たないのが現実です。
対人戦闘のスペシャリストと言われ、気づいたら背後に立っており知らない内に殺されているなどといわれるほどの腕利きばかりだという。まぁ実力はともかく人格的には破綻者が多いとも言われていますがね。
「リャンシャンギルドのマスターよ、そちらからの報告書を読む限りではそこそこの関係を築いているそうじゃないか。それでも情報は得られていないのか?」
「はい、なかなかガードが固くて教えてはもらえませんでしたね」
「ふむぅ…」
「だけど一つだけ… 彼らは勇者を嫌っており、勇者が立てるかもしれない栄誉を横取りするかのような発言をしていました」
「勇者が立てるはずの栄誉の横取りだと?」
「はい、勇者よりも先に魔王を討つ事だと思います。1枚噛ませろとは伝えましたが良い返事はもらえませんでした」
「なるほど… その辺の調査はどこまで進んでいる?」
「とりあえず老舗であるカヤキス商会を味方につけて動いているとしか… そしてカヤキス商会はこのタイミングで代替わりをし、先代の商会長が食料や建築資材をかき集めていたところまでは掴んでいますが、それらをどこに運び入れたのかまではまだ分かってません」
「なるほどな、それならカヤキス商会を調べれば早いのかもしれないがそこは老舗の商会長… そうやすやすと尻尾は掴ませることは無いだろうな。まぁそれは良い、まずは闇ギルドの対策について決めてしまおう。我が国で闇ギルドを暗躍させることなどあってはならんからな!」
我が国のギルドとエルフのディープパープル共和国、そして闇ギルドまでここまでかき回すなんてヒビキという冒険者は一体どんな人なのでしょうか。ギルドとしてもぜひ彼らと協力体制を築きたいものですが、彼らの方から信頼されていないという感じがもどかしいですね。
ちょっと会ってみたいかもしれませんね。
活動報告に緊急報告有り、閲覧の方をお願いします。
 




