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198 ヒビキ、魔境ソロデビュー!

誤字報告いつもありがとうございます。

 うおー! 1人で森歩きなんてグレイ達と出会う前以来じゃないか? 新鮮というかもの寂しいというか、なんだか不思議な感覚だしそれでも盛り上がってくる自分がいる!


 索敵も防御も攻撃も全て1人でやらなければいけないソロ活動… うん、こればっかりはいくらレベルが上がったからといっても緊張するね。


 片手剣と盾を装備し、まばらに生えている草をかき分けて進んで行く。魔境もこれだけ広いと先に入っているであろう魔術師団員とも出会う事はあまり無さそうだ、だがそれが良い! 俺だけ戦闘に関してはポンコツだから、あまり人に見られたい訳じゃないからね。だがアレだ! いくらポンコツといえどもレベルだけはいっちょ前にある、自分の身体能力だけでのゴリ押しでもなんとか行けるだろう。狩った後の素材の良し悪しは別の話になるがね。


 一応迷ってしまわないように拠点のある方向だけは確実にマーキングしておかないとな、まぁマーキングといったって専門技術がある訳じゃない… ので、方向が分かるように木の幹に傷をつける程度なんだけどね。



 武器を構えつついそいそと森の中へと侵入。強い魔物がいないとはいえ、せっかくのソロなんだし実戦形式で行くために警戒を厳にする。


 そして周囲の気配を感じるために集中… 集中! 何も感じません! いや冗談抜きで。

 あれれー? この森は浅層でもそこそこの魔物がいたはずなんだけどなぁ… ボアばかり目立ってしまうが、他にも小さめな魔物とかをいつもアイシャが駆除していたはずなんだが。


「あっ!」


 なんと! 全長30センチくらいの蛇に靴が噛まれている! 全然気づかなかったんだが?


「とぅ!」


 とりあえず剣で突き刺しておく。毒があるとは聞いていないので大丈夫だろうが、噛まれたままというのもなんだしね。

 しかし… これはアレか? 俺1人で森に入るのは実はヤバいんじゃないのか? レベルだけでゴリ押しできると思っていたけど魔物に気づけないんじゃ不意打ちされ放題! よろしくない話だ。これは戻った方が良さそうだな… せめて索敵の上手なアイシャかシフを連れてこないと狩りすら危ういぜ。うん、戻るか!


 ガサガサッ!


「!?」


 不意に草をかき分けるような音が聞こえたのでそちらに視線をやると…


「あー… ボアじゃないか」


 なんと! 5~6メートルほど離れた場所にボアがいる! これだけ大きな体のボアがここまで接近するまで気づかないとか才能が無さすぎて笑えない。でも不意打ちをされた訳じゃないのは救いかな? さすがに正面からのガチンコじゃ負けないだろ!


 うん、これは別にボアを舐めているって訳じゃない。ぶっちゃけパワーだけなら負けてはいないはず! まぁパワーが互角だからといっても体重で圧倒的に負けている。しかも重心もボアの方がどう見ても低い… 正面衝突じゃさすがにまずいね。出来れば下からカチ上げたいが、姿勢の問題でそれも厳しいときたもんだ。

 これは突進を回避してという王道パターンで行くしかないか… 周りに木があるからそこに注意だな!


 ボアとの睨み合いが続く… 個人的にはこれから魔王を倒そうとしているパーティの1人である俺が、浅層にいる魔物を相手にこれじゃいかんとは思うけどね! でも、できない事をやろうとするよりもできるだけ被害を少なく戦う方がマシだよね。


 ほら、そろそろ突進して来いよ!


 ちょっと煽るように持っていた剣をクルクルっと回してみると、それが癪に障ったのか重心をさらに下げてきた。よし、これは来るな?

 今にも走り出しそうなボア… ここで俺もわざと足音を出して前に進み寄る。ボアにとってはそれも気に入らなかったのか、とうとう俺を目がけて走り出した!

 ドスドスと大きな足音を立てながら猛スピードで接近してくるボア、それを見つつも木の密度の少ない方向へと移動しつつ誘導し… 接触戦前に回避!


「ここで振り下ろし!」


 すれ違いざまに持っていた剣を全力で振り下ろし、ボアの首へと吸い込まれていく。ミスリルの剣が優秀なのか、あまり感触を感じなかったが剣はするりとボアの首を両断して振り抜けてしまう。すごい切れ味なんだな!


 首から斬り落とされたボアはそのまま転倒し、動かなくなる。うん、勝利だね!


「ふぅ~、ちょっとドキドキしたけどボアが相手ならなんとか勝てるね」


 自分に戦闘の才覚が無い事は自覚していたが、ボアならソロでも倒せたというのは地味に嬉しいね。ダンジョン内でも何度か戦闘は経験したけど、クローディアなりアイシャが護衛としていたから安心感があった。でも1人で勝てたというのは… ちょっとくらい自信を持っても良いよね? お荷物にはなりたくないし、多少でも自衛はできなきゃね!


「さて… ボアを手に入れたのはいいけど、血抜きってみんなどこでやってるのかな? このまま持ち帰っちゃっても良いんだろうか」


 うーん… だけどこの場で血抜きはちょっとなぁ。とりあえずこのまま持ち帰ってみるか、ダメだったらそれはその時という事で!


 斬り落とされた頭も一応ゴミ箱に収納し、意気揚々とバンガードへと帰還した俺だった。




「主よ、どこへ行っておったのじゃ?」

「え?」


 バンガードへと戻った瞬間、クローディアが腕を組みながら俺へと問い詰めてきてるんだが… なんか機嫌が悪い?


「いや、暇だったからちょっと魔境を見にね」

「どうして誰にも声をかけんのじゃ! びっくりするじゃろうが!」

「ええ? そんなに長居はしなかったから問題ないかと。ああそうだ! ボアを持って帰ってきたんだけど、血抜きはどこでするんだ?」

「ボアを…」


 クローディアはやれやれといった感じで呆れているような? 解せぬ。


「よいか主よ… 主は支援者なのじゃ、グレイやアイシャが1人で魔境に行くのと立ち位置が違うのじゃ。せめて誰か1人くらい護衛を連れて動いて欲しいのじゃ、安全安全といつも口酸っぱく言っておるのは主自身じゃろう? その主が安全を蔑ろにするというのはどうかと思うのじゃが?」

「うっ… ソウデスネ」

「全く心配させんで欲しいのじゃ。いつもいるはずの主がいなかったから驚いてしまったのじゃ」

「それは… なんかごめん」


 いやいや… まさかこんなに心配をかけさせてしまうとは、これは失態だな。確かに誰かに声をかけてから出るべきだったな… 反省せねば。

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