表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/215

197 噂は東にも

「なんですかこの面白そうな武器は!」

「これはね、剣で打たれても折れないし曲がらなく、この部分で刃を挟み込んで折れるようにしてあるんだよ」

「ぜひ作らせてくださいっす!」


 おれは助手君に説明するため、地面に落書きのような絵を描いて機能なんかを説明してみたんだが… なんだか思いの外食いつかれてビビっている。

 相手の剣を折れるように設計されている剣は歴史上数多くあるはずなんだが、この世界ではあまりそういった概念がないのかね… 悪即斬が基本姿勢なのかも。


 シフはきっとこれからも釘バットを使い続けるんじゃないかと思っている。でも釘バットじゃ対人戦闘した時にね… ちょっと凄惨すぎるんじゃないかと。まぁ相手が魔物でも同じなんだろうけど、俺の気持ちの問題が大きいかな。


 現在アイシャはホーク親方と一緒に双剣についての打ち合わせをしている。アイシャにとっては大した問題じゃなくても、武器を作る親方にとっては重要らしいから仕方がないね。ちょっと面倒そうな顔をしていたからね…


 しかし双剣使いのアイシャかぁ… 素早さが信条のスタイルに更なる磨きがかかってしまうと思っている。やっぱり剣は逆手に持って、回転するように振り回すのかな? まぁとにかくこれには時間がかかるという事だから、のんびりと完成を待ちましょうかね。



 グレイとシフは鍛冶の仕事に興味があるらしく、アイシャの付き添いという事でその場に残して移動をすることにした。双剣1セット分なら大した量は使わないだろうから、ミスリルのインゴットをグレイに預けて任せてきた。


 さて、俺はどうしようかな? まだまだ1日が始まったばかりの早朝で、今からお昼寝というのもなんか違う。ガラハド達はすでに魔境へと出かけてしまっているので拠点内部は案外静かなんだよね… 魔術師団員の家族も何かしら働いている事だし、俺もちょっと魔境に行ってみようかな。


「よし! そうと決まればちょっとだけお散歩でもしてくるかな!」


 うんうん、魔境に行くって言ったって必ず戦闘がある訳じゃないからな! それに万が一魔物と遭遇したとしても、魔境においてもっとも外側に当たる場所なんだから強い魔物はいないはず。それくらいなら俺にだって倒せるさ!


 なんてフラグらしきものを建てつつ、俺はバンガードの門から外に出るのだった。


















 SIDE:冒険者ギルドリャンシャン支部、ギルドマスターアルフォート・ブルボ


「おいおいマジかよ」

「マジのようですよ。ペンチャンにやってきて2ヶ月もしない内にダンジョンを攻略し、あげく例の闇ギルド騒ぎですよ」

「噂は聞いたが闇ギルドとの争い… 誰か目撃者はいたのか?」

「噂を流したという者以外はいないそうですね、なんでも戦闘が行われたのは深夜だという事なので」

「ふむ… しかしさすがはヒビキ達だな、強いのは知っていたが対人戦闘のスペシャリストといわれる闇ギルドの暗殺者を相手取って圧倒するとは」

「ええ。対魔物戦闘で強くても、闇ギルドの暗殺者には敵わないと昔から言われてましたからね。独特の戦い方があるとか、読み合いや騙し合いではまず勝てないと」

「うむ、しかし委細は承知した、報告ご苦労」

「では失礼しますね」


 たった今ペンチャンギルドに所属する者からの定期連絡を受けたところだが、本当にあいつらはやらかしてくれるな… 普段であれば一笑に付すような与太話でも、噂の元がヒビキ達といえば話は別になる。到底信じられないような話でもあいつらはやるからな。


「誰かお茶をくれ!」

「は~い」


 ふぅ、ここはちょいと一服を入れて頭を整理しようか。


「ギルマス、彼らがこの街を出てからそろそろ3か月になりますね」

「そうだな、それがどうした?」

「ミスリル関係でそろそろ顔を出すのではないかと思ってたんですけど、違うんですか?」

「あ…」

「私としてはアイシャちゃんをモフモフできる数少ないチャンスなので、とっても期待して待っているんですけど! でも今流れている噂が本当であれば難しいかもしれませんね」

「そうなんだよなぁ… 噂が本当かどうかよりも、こうまで威厳を潰された格好になる闇ギルドがヒビキ達を放っておくとは思えん。噂の元を断とうとか考えるはずだ、まぁヒビキ達の行動をどこまで読んでいるかは不明だがな」

「どうでしょうね… ヒビキさん達の行動は、冒険者ギルドのネットワークでも捕まりませんから… たとえ闇ギルドといえ掴めていないんじゃないですか?」

「まぁな」


 本当にあいつらは神出鬼没なんだよな。ペンチャンに現れた時だって、ペンチャンに至るまでの行動がまるで見えてこない。気づいたらペンチャンにいたって感じだ。

 普通であれば補給やなんだであちこちに痕跡が残るもんだが、あいつらにはそれが無い。そもそも長期に渡ってダンジョンに入れるくらいだ、かなりの食料などを備蓄しているんだろうが買い出しをした事すら掴めないなんてそもそもおかしい事なんだ。


 カヤキス商会から何かしらの援助を受けている可能性もあるが、それならそれでカヤキス商会の方に痕跡があるはず… だがそれも無さそう、全くおかしな事ばかり起きている気がするぜ。


「でもカヤキス商会の会長が代替わりし、元会長が隠居したとの事ですが… なにやら食料や建築資材なんかを集めていたとの話もあります」

「おう、多分元会長はヒビキ達と綿密に繋がっているんだと思うぜ。前に言っていたんだが、多分魔境素材に着手してるんだと思うぞ」

「あ、その話は聞いてますよ。カヤキス商会にて魔境素材が回り始め、わざわざナイトグリーン王国の商会を通さなくても手に入るようになったと。まだ浅層の魔物素材だけらしいですが」


 浅層の魔物素材とはいえ、狩るだけじゃなく流通させているのであれば上等じゃないか。魔物素材を高騰させている最大の理由は流通だからな、ナイトグリーン王国国土にある魔境からアキナイブルー王国まで運ぶ手間がそうさせているのだろう。だがどこにも仲介をさせず、カヤキス商会独自のルートを構築する事ができているのであれば…


「魔境素材の値段が下がり、その素材での加工が盛んになれば冒険者ギルドとしても万々歳だな」

「はいっ! 魔境由来の素材は良い物が多いですからね、ダンジョンアタック中の事故も減るんじゃないでしょうか!」


 ま、連中はまだ他のダンジョンとかを攻略していたようだが、本腰を入れ出せばもうナイトグリーン王国商会からの不当とも思える高額素材を買わなくて済む。ぶっちゃけそれだけでもナイトグリーン王国には十分な打撃となるだろう。

 その辺の話も聞きたいから早くミスリルを納入しに来い、ヒビキよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ