194 ペンチャンダンジョン100階層!
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「えいっ!」
シフの両手持ちによるフルスイングがケルベロスの頭部に直撃! その打撃の勢いのまま回転しつつボス部屋の壁まで飛んでいき、ぐしゃりと音を立てて激突した。
フルスイング後の姿勢のままケルベロスを見ているシフだったが、やがてその体がダンジョンへと吸収され始めると構えを解いた。
「うむ、もうケルベロスごときでは不安要素は無いな。100階層までは合格で良いだろう」
「グレイ様… ありがとうございます!」
グレイとシフがそんな茶番をやっている間にアイシャがドロップを回収している… さすがだね。
というのも、突如始まったグレイによる戦闘試験をしてたんだよね。リャンシャンダンジョンで狩りをしていた時だってシフはケルベロスとタイマンを張れていたんだけど、今回に限りグレイが監督しながらシフが単独で戦う事になったんだ。
まぁ普段であれば、我先に突撃していくはずのグレイがそういう行動をとった事に驚き、任せる事にしたんだが別に問題点は無かったように見える。グレイもそう言っていた通り、100階層のボスにこれだけ圧倒できるのならこれ以降の階層でも戦えるって目安になるだろう。
「あっ!?」
突然声を上げるアイシャ… その視線の先を追ってみると?
「むむ? これは石碑ではないか」
「つまりここが最下層という事じゃな。少し残念ではあるのじゃが、まぁ区切りとしては良いところじゃろう」
あらぁ… これが出たって事はペンチャンダンジョンはクリアになったって事になりそうだ。そうか、ここもCランクダンジョンだったか。
「主よ、では早速石碑に触れようではないか。この結果で他のダンジョンを最下層まで進むかどうかの目安になるじゃろう」
「そうだねぇ。まぁアイテム袋はまだまだ欲しいし、Bランクダンジョンにも興味はあるから結局進む事にはなるんだろうけどね」
「ま、そうじゃろうな」
さてさて! それでは全員で石碑に触れてみようか!
全員で石碑を取り囲み、まずは石碑に書かれている事を確認する。
『No.16 Cランクダンジョン突破報酬を授ける、ケルベロスを討伐せし者はこの石碑に触れるべし』
「おお? ナンバーがリャンシャンよりも若いな」
「そうじゃの… リャンシャンは確かNo.21じゃったからの」
「まぁこのナンバリングが何を表しているのかわからないから考えてもしょうがないけど、とりあえず最低でもリャンシャンダンジョンに書いてあった21個はダンジョンがあるって事だと思う」
「うむ。実際にはFランクダンジョンなどすでにクリアされているダンジョンもあるが、Cランク以上は全てのダンジョンが未踏破だな。俺達がクリアしたのを除けば」
「そうなるだろうね。じゃあクリア報酬はなんなのか、早速頂こうか。じゃあ触るよ!」
そして全員で石碑に手を乗せる。
『スキル【俊足】を獲得』
「おおお? 俊足って事は足が速くなったりするって事かな?」
「恐らくそうじゃろうな。じゃがこれは… 獣人には恐ろしいほどのメリットじゃな。ただでさえ動きが速いのにさらにスキルで上乗せ… どれアイシャや、ちょっと動き回ってみてくれ」
「わかった!」
アイシャは言い終わると同時にダッシュ! あっという間に壁際に着いたかと思うとその勢いのままなんと壁を走り出したのだ! はぇ~、獣人って壁を走る事も出来るんだ~。
でもあれ? 明らかにアイシャの速度が上昇していると分かるのに目でちゃんと追えているぞ?
「ふむ… 俊足のスキルを覚えると、どうやら同時に動体視力も向上しているようじゃの。確かに突然足が速くなっても目で追えなくては話にならんからのぅ」
「ああなるほど…」
確かにその通りだ。俺があれほどの速度で走ったら、勢い余って壁に激突する未来しか見えないよ。制御するには相応の身体能力が必要になるだろうけど、その動きを目で把握するには訓練だけじゃなかなかね… 宝の持ち腐れになってしまいそうだもんね。
気がつくと後ろの方でシフも何かをやっている… どうやら釘バットを速く振るのに俊足スキルを利用しようとしているみたいだな。まぁ俊足っていうくらいだから足腰に多大な恩恵があるんだろうから、それを上手く利用してやればってところかな? その着眼点に気づくとは脱帽だぜ。
「すごい速くなったかも!」
「そのようじゃな。しかし得られるスキルが同一ではないという事も分かったの、これはやはり各地にあるダンジョンを全制覇するしかないじゃろうな!」
「それもいいがまずは魔王だろう。出来るとは思えないが勇者が前線にいるんだろう? 先を越されてしまうなどつまらん結末はごめんだぞ」
「それもそうじゃな、ダンジョンはそっちが片付いてからでも遅くはないじゃろ。では次はどうするのじゃ? 予定通りアイテム袋は手に入ったし、スキルも良い方の結果じゃった。次はカンチャンダンジョンにという話もあったが、一度拠点に戻って魔境攻略に力を入れるのも有りじゃと思うがの」
「そうだねぇ… せっかくナイトハルトが拠点を作ってくれたのに、碌な活動もしないまま魔物に攻撃されるのも勇者達に拠点を利用されるのも面白くないね。キリも良い事だし一度戻ろうか」
「それが良いじゃろ。ダンジョン素材はこのまま持ち帰ればナイトハルトが買い取ってくれるじゃろうし、補給も必要無い。このまま向かえば良いじゃろ」
「いやいや、さすがにギルドには顔を出してからね?」
そんな訳で、長かったような短かったようなペンチャンダンジョンの攻略は無事に終了したのだった。
SIDE:闇ギルド、ギルドマスター
「噂の真偽はまだ確かめられないのか?」
「今大至急人を差し向けておりますが、現場が遠いもので…」
「チッ、こんな噂が立ってしまったからには我がギルドは舐められてしまうな。しかしあの4人でも勝てなかったとすると戦力を読み違ったという事か」
「どうでしょう… あの4人は個人の力はあったのでしょうが、連携しろと言われると力を発揮できるか疑問が残ります」
「確認を急ぐんだ、他からの問い合わせには事実確認中だと」
「わかりました」
まったく… 殺るなら確実にといつも言っていただろうが! まさか手を抜いた挙句に殺り返されたんじゃないだろうな? もしそうならギルドの名に泥を塗った事になる… この分じゃギルド本部からもすぐに問い合わせが来るだろう、最悪はこの俺がギルドマスターの座を剥奪されかねん。
事は急を要するな、これ以上噂が広まってしまう前にターゲットであるエルフを捕らえ、情報の上塗りをするしかない。ああ、もうやってやる。こうなったら総力戦だ!
 




