表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/215

193 新たな噂が西へ

誤字報告いつもありがとうございます。

 さて… 宿の一室にて目覚めた訳だが、まだ窓の外は薄暗いというのにすでにグレイとシフがスタンバイしているんですけど! やはりダンジョンが好きなのねこの2人は。クローディアもダンジョン好きだと思うけど、嬉しすぎて夜も眠れないって感じではないもんな… 現にまだ起きていないし。


「起きたかご主人、朝飯には少し早いが… もう良いんじゃないか?」


 シフが高速で頷いているので同じ思いのようだ。

 まぁハンバーガーを出せばその匂いでアイシャはすぐに目覚めるだろうし、騒がしくなればクローディアも嫌々ながらも起きるだろう。仕方ない、俺も新しいスキルが手に入れられるのか気になるし、100階層以降があるのかどうかも興味があるからな… 起きるとするか。


 明らかにご機嫌のグレイを先頭に、俺達はまた十数日というダンジョンアタックを始めるのだった。頑張って100階層に辿り着き、その先がはたしてあるのかどうか… しっかり見てこないとな!















 SIDE:ディープパープル共和国魔法省長官バーバラ


「これは一体どういう事なの? どうしてこんな噂が国中に流れているのよ!」

「詳細は解りません。しかし実際にクローディアと接触した者の話だという話です」

「闇ギルドもなんだっていうのよ! 偉そうに対価だけは受け取っておきながら全滅したって? 全くあてにならないわね!」



 ほんの数日前から流れ出したその噂… 曰く活躍の噂が立った前魔法省長官クローディアに対し、私が闇ギルドに暗殺を依頼したという事。そしてそれらの暗殺者達は全員返り討ちに遭い、クローディアが復讐のために私を狙うという事。


 常時であれば、魔法省にいる限り各種魔道具や衛兵によって守られているこの建物に侵入する事はあり得ないだろう。しかし侵入者が本当にクローディアだったら? 長年魔法長官を務め、この建物のセキュリティに熟知した者であればどこかしらの穴が見えるのかもしれない。


 正直言ってこれはマズい… 私の派閥以外の者はすでに目の色を変えている、魔法省長官の交代の時だって反対する者がいたからね。やっぱりかという視線で見られるのはものすごく気分が悪くなる。


「しかしバーバラ様、闇ギルドもやっている事は犯罪ですがそれでも信用を守ろうとするはずです、次はきっと…」

「それじゃダメなのよ! こんな噂が立った後でクローディアが殺されてみなさい? ただ噂の信憑性が増すだけじゃない! 火消しをしたくてもこれだけ注目を浴びている状況では満足に動く事も出来ないわ、あなたも今後の行動は慎重になさい! 下手に裏取りをさせる真似だけは慎むように」

「承知いたしました」


 ああもう忌まわしいったらないわね! そもそもなんで今まで生きていたのよ、売られて虐待されて死んでいると思っていたのに… なんてしぶといのかしら。

 本当であればすぐにでも対処し、この噂を払拭しなければいけないのだけど現状ではとても無理ね… ちょっとお手洗いに行くだけでも多くの視線に監視されているようなもの、些細な事でも揚げ足を取られかねない。本気で困ってしまったわ… この様子だと国王陛下から召喚状が届いてしまう事態も視野に入れなくてはいけない、なんとかして逃れなければ私の地位が剥奪される恐れが…


「いいえ、そんな事はあってはならない! なんとしてもこの状況を乗り越えなければいけないのよ! そう、どんな手を使ってでもね」


 言い訳を考えるのと同時に外部へと動き回れる駒を手に入れないとダメね… もちろん私の派閥からだと注目を浴びてしまうからそれ以外で、しかも腕の立つ者を用立てないといけない。どうするか…

 これは今すぐにどうこうできる問題じゃないわ! 部下達と会議を開き、策を練らなければ… 猶予はクローディアの主人である人間種が死ぬまで… 長くても50年程かしら? クローディアがこの国に来るまでの間に私の潔白をどうにかし、その上で始末を付けなければいけない。闇ギルドも組織としての面子があるからすぐに次の刺客を差し向けるだろう… そうなってしまう前に連絡をつけ、こちらの噂が片付くまで行動を止めるようにさせなければ。


「会議を開くわ、主だった者達を招集しておきなさい」

「はっ、承知いたしました」

「なるべく他の派閥の者に悟られないよう慎重に、かつ迅速に動いてちょうだい」

















 SIDE:エルフの組合員ジャン


 俺はクローディア様に解放された後、暗闇の中をひた走り2日後にはエルマンと合流することができた。そしてそのまま馬を手配してディープパープル共和国へと大急ぎで帰国、その合間に立ち寄った町で言われた通りの噂を流していく。もちろん噂の出所を悟られるわけにはいかない… 闇ギルドにとってもこの噂はデメリットしかないからな、うっかり知られた日には速攻で黙らせようとしてくるだろう。ああいった組織は面子が大事だからな。


 ペンチャンからだとおよそ10日ほどで祖国へと帰還、その勢いで地元の街まで戻ってきた。これからエルマンと共に組合長に報告しなければいけない… すでに色々と噂を流した後だからな、なんて言われる事やらだな。


「予想よりも早く戻ってきたようだが、それはアレか? 昨日あたりから囁かれている噂に関係するものか?」

「そうですね、その通りです」

「その噂… 俺も聞いたが本当の事なのか? 確かにバーバラ様はクローディア様の捜索隊を出す事を渋っていたが」


 さすがの組合長もバーバラ様を不審に思っていても、そこまで大それた事をしていたとは思えないか… まぁ実際俺もそうだったしな。だが、俺は闇ギルドの暗殺者達を尋問にかけている現場にいたんだ。以前討伐されたはずの地竜の魔石を報酬に、エルフが依頼に来たと。


「ジャンが最後まで残っていて、クローディア様たちが暗殺者達と戦っているところを目撃しています。しかも尋問していた現場にもいたそうです」

「本当かジャン? 一体どんな事を喋っていたんだ? 暗殺者どもは」

「それは…」


 俺は魔石の事も含めてすべて正直に話した。組合長は信用できるし、そんな戯言をなんて言うエルフではないと知っているからだ。



「なんという事だ… もしもその話が本当の事であれば、クローディア様が討伐された地竜の魔石はすでに無いという事になるな。前金代わりに1個出したらしいから、もしかすると1個は残っているかも分からんが… この話は噂には無かったよな?」

「さすがにそれまで流したら対策されるかと思って」

「うむ、そこは良い判断だった。ならば組合としては魔石の方面から調べていくとするか、いくら優秀でも罪人を誉れある魔法省長官の椅子に座らせておくことはできないからな」


 ふぅ、組合長も本腰を入れてくれそうだし、俺の仕事は終わったか? クローディア様はもちろんの事、あのオーガや兎人族に睨まれたらそれだけで寿命が縮まっちまうぜ… いやマジでな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ