185 休みのために
誤字報告いつもありがとうございます。
「さて、聞いての通りじゃ。お前達は解放してやるからさっさと帰って依頼主に伝えるのじゃ、余計なお世話じゃとな」
「待ってくださいクローディア様! その闇ギルドとの戦い… 自分達も参加できないですか?」
「足手まといはいらんぞ、我らに容易く倒される程度の実力で参加したいなどと笑わせるな」
「グレイ… もうちょっと穏やかにね?」
何やら参加したいといってきたイケメンエルフさん2名をバッサリと斬り捨てるグレイ… でもまぁ実力の分からない挙句に味方とも限らない者を連れての戦闘というのはね、まぁぶっちゃけ嫌ですよ。闇ギルドとやらに手がかかっている間に何かしらやらかされたら後手に回らんとも限らないし、クローディアに様なんて付けるくらいだから、目を離したすきにクローディアを拉致される可能性だって捨てられない。まぁ黙って拉致されるクローディアではないけれど、余計な真似をするかもって注意を散らされるのも困るしね。
「グレイの言う通りじゃ、お前達では邪魔にしかならんじゃろ。そもそも私達にはやるべき事があるのじゃ! このような些事で時間をかけたくないのでな、さっさと終わらせたいからお前達はいらん… 地上に着いたら早々に国へ帰るがよいのじゃ」
「クローディア様…」
まぁこの2人の目的と、ついでに闇ギルドの事を聞けたんだから無駄な時間ではなかったかもね。元々休息日を2日取るつもりだったし、今晩中に解決できれば明日はのんびりできそうだし頑張れるな!
グレイに首根っこを掴まれて転移陣に乗り1階層へ。そしいてそのままイケメンエルフを掴んだままダンジョンの外へと進む。
まぁこれはね、見た目は悪人がイケメンエルフを力尽くで引きずり回しているかのように見えるだろうけど、エルフ2人の今後の安全のためにやっている事だ。その闇ギルドの連中が街に居るならば見られていると考えた方がいいからね、俺達とこのエルフは仲間でも味方でも知り合いでもないと見せつけておこうという事だ。
ジャンと呼ばれてたエルフはいまだに俺の事を睨んでくるくらい嫌っているようだから、下手な演技よりも信憑性は増してくれるだろうしね… 本当に見られていたならだけど。
「さぁ帰るがよい、先ほどの話を依頼主へちゃんと告げるのじゃぞ」
「「…………」」
「うむ、もう放っておけばいいだろう。それで俺達はどうする? まだ明るいがもう野営の支度をするのか?」
「いや、さすがに今からでは早すぎるじゃろ。周囲をさり気なく警戒しながらまずはギルドじゃの」
確かに今からじゃ早すぎる、予定の一つや二つこなしてからでも余裕だろう。
「ところでどうだ? 見られているとかそんなの感じる?」
「うん、見られてるよ! 人間種だね」
「ほほぅ、もう見つけるとはさすがアイシャじゃの。じゃが今は泳がせておくのじゃ、仲間がどこに散らばっているか分からんからの」
「うん!」
どうやらアイシャの気配察知からは逃れられなかったようだね… まだまだ甘いと言いたいが、グレイは気付けていないようなので人間にしたら優秀って事になるのかな? もちろん俺は全然わからなかったけどね!
そしてギルドに立ち寄り、魔石少々と鉄のインゴットを買取りしてもらっておく。一応戦果は見せておかないとね。ギルドでの用が済んだらそのまま街の外へ…
「さて、待ち構えるとなるとどこがいいかな… 色々と聞いてみたいから喋れる状態で捕まえたいよね」
「うむ。あのエルフの話じゃと闇ギルドの者は4人という事、1人も逃さずに捕まえるとなると… 面倒じゃの」
「何を言っている、喋れる奴を1人残しておけばいい話だろう? では残りの者は遠慮なく殴り飛ばせば良いではないか、その結果死んだとしてもただの事故だ」
「まぁそうじゃの、暗殺者にかける情けは持っておらんしの」
怖い話をしているが、まぁこういう事は夜盗の時に経験しているからね! 暗殺者というからには、当然返り討ちに遭う事も覚悟できてるはずだし仕方ないよね!
「じゃあアレだ、まずはそいつらに怪しまれないよう外に出てきた理由でも見せつけとこうか」
「む? どういう事だ?」
「なに、街じゃできない事をやれば良いのさ。例えば煙のたくさん出る焼き肉パーティとかね! まぁコカトリスの肉しかないけれど」
「俺はやるぞ! その焼き肉パーティとやらを!」
「なんか美味しそうだね! ボクも焼き肉する!」
うんうん。普通街中で火を起こして焼き肉なんかやらないからね、俺達が外に出てきた理由だと思ってくれれば有難い。まぁまさか自分達の存在がバレていると思ってはいないだろうから、俺達が闇ギルドを釣るための策だってバレなければそれでいい。グレイもアイシャも焼き肉でモチベが上がったようだしね!
「確かにカムフラージュには良いかもしれんの。じゃがそれじゃと商店によって食材を買っておいた方が良かったのではないか?」
「大丈夫、バンガードに持っていく予定の物があるからね。多少使ったって問題無いでしょ」
「そう言えばそうじゃったの」
「するとつまり… 酒もある訳だな?」
「あるね、少しだけど」
あれれ? グレイが少年のように目を輝かせているんだが、まさかそれを飲もうと思っているのかな? まぁでも俺の偏見かもしれないがオーガって酒豪なイメージがあるからね、多少飲んだからって手加減が怪しくなるとか無いよね? まぁいいか、いくらなんでも飲んで暴れるなんて事は無いだろう。まして街の外での野営だ、少しばかり手加減に失敗しても誰も困る事も無いだろう。
「さて、そして捕獲の作戦なんだけど…」
俺はさり気なく考えていた事を話しだすのだった。
SIDE:エルフの組合員ジャン
「くっ、一体何だってんだよ!」
「落ち着けジャン。というかほとんどお前のせいで信用されなかったようなものだろう? あの人間をどうこうする前に話ができていたのだからクローディア様に聞けばよかったんだ」
「エルマン… 確かにそうだがっ!」
くそっ! あの人間がクローディア様を救っただと? ふざけんな! それは俺の役目だったはずだろう! しかもなんだ? あの狐人族のガキめ、いきなり殴りやがって… しかもいつ近寄られたのか気付けなかっただと? そんなことある訳がない! きっと俺が油断していただけだ!
「俺達も行くぞ」
「は? 行くってどこにだ?」
「クローディア様と闇ギルドが戦うと言っていた場所にだ!」
「待て待て! 闇ギルドの連中が真っ当な手段で来るわけがないだろう? ここはクローディア様の言う通り邪魔をしない方がいいだろう。それに俺達2人共やられたら組合に報告する者がいなくなっちまうだろう」
「ぐぬぬ… じゃあエルマンは報告するために戻ってくれ、俺は闇ギルドを叩く」
「おいおい… そんな事認められるわけがないだろう」
「うるさい奴だ、長い付き合いなのだから俺がこのまま引き下がらないって分かるだろう? だから行ってくれ」
「………」
絶対に良い所をクローディア様に見せつけ、あの人間から引き離してやるんだ。きっと何か弱みを握られているに違いない、でなければあの高潔なクローディア様が人間なんぞに付き従う訳がない。すぐに俺が目を覚まさせてやりますよ、クローディア様。




