183 尋問タイム?
誤字報告いつもありがとうございます。
「さて、どうしてやるかの… 私の名を知っていたようじゃし、主に酷使されているかのような言い方をしてたしの」
「ああ、それはびっくりしたよ。俺達ってそういう風に見られてたのかな?」
「それはないだろう、少なくともリャンシャンではな。俺達が奴隷の首輪を付けていてもかなり自由に動いていたからな」
「そうじゃの、主に意見をする奴隷なんぞ他にはおらんし」
うーん、まぁ確かにそうかもしれないが。じゃあどこでその情報がおかしくなったんだって話だよね? まぁ買おうと思えばひたすら高価なエルフにオーガ、希少種と言われる狐人族を連れていたからやっかみとかはあったかもしれないが。
「どちらにせよこいつらに聞けば済む話だ。ご主人よ、この意識のある方にヒールをかけてやってくれ、それで多少話は出来るだろう」
「おお! これは初めてのヒールか!」
そうなのだ、俺達のメンバーは誰も怪我をしないからね! 試しに使った事はあるけれど、実際に怪我人を治療するとかは初めてかもしれない!
俺はホワイトヒールステッキを取り出すと、気絶できなくて悶絶しているエルフの男性の前でステッキを振るった。
「ヒール!」
そういえば他のステッキのように魔法名を唱えたらって文言が無かった魔法だったっけ、わざわざヒールとか言わなくても良かったのかな? 今更だが。
「うぐ… ぐ? え?」
「ふむ、効いたようじゃの、さすがは主なのじゃ」
「いやいや、ステッキの効果でしょ」
「さて… 色々と聞かせてもらうぞ。なぜ我らのご主人に殺意を向けた?」
「え? いや、ここは?」
「ここはダンジョンの90階層だ、逃げられると思うのなら好きにするがいい。だがその前に俺の質問に答えろ」
どうやらグレイに殴られた痛みは無くなったようだね? でもいきなり周囲の景色が変わっているから困惑しているみたいだな。よし、じゃあついでにアイシャに殴られて気絶している方のエルフにもヒールをかけておこう。
今度は魔法名を言わずに、ただステッキだけを振るう。なんかほんのりキラキラしたように見えたから多分効いているはず!
「いや… 俺達は人間種によってクローディア様が奴隷にされた事と、そのクローディア様を使ってダンジョンをクリアしたという噂を聞いて救いに来ただけだ」
「ほぅ? 救いとな? 悪いがすでに主によって救われておる、残念じゃがお前達の手は必要無いのじゃ」
「他にもオーガや獣人も同様に酷使されているだろうから、救い出して故郷に帰してやれればと…」
「ふむ…」
なんじゃいそれ… 誰がどう聞いても人間種である俺が悪者になっているね! 悪意あるわぁその噂を流した奴は。そもそもクローディアが奴隷にされたのって100年以上も前の事だろ? 残念だけど人間は100年も生きられないのよ。それなのにどうして俺が奴隷に墜としたなんて言われなきゃいかんのだ? もしかしてエルフは、人間も100年くらいなら生きるとか思ってたりするの? そりゃーアレだ、勉強が足りてないね!
「で? お前達の所属はどこじゃ? どこからの依頼なのじゃ?」
「はい、森林組合所属で依頼主は組合長です」
「組合長じゃと? 外部からの依頼ではなく?」
「はい。魔法庁から依頼が来るかと思っていたらしいのですが、いつまで経っても来ないからと独断したそうです」
「フフッ、今の長官はバーバラではないか? そりゃ魔法庁からは依頼はこんじゃろ」
「確かに長官はバーバラ様ですが、それだとなぜ依頼が来ない事になるのですか?」
「それはまぁアレじゃな、今言う必要は無いの。さて、先ほどはすっかり乗り遅れてしまったが、我が主に敵対する者には鉄槌を下さぬといかんの。どれ、私もこのステッキでぶん殴ってやるのじゃ!」
ゴチンッ!
「うぐっ!」
あっ!? クローディアがステッキを振りかぶった時に止めなきゃって思ったが、そんな事をする暇もなく振り降ろされてしまった。音といいすっごい痛そうなんだけどね… あーあ、頭を押さえて蹲っちゃったよイケメンエルフさん。
「クローディアよ、つまりどういう事だ?」
「うーむ、まぁ私達が奴隷だった頃に流れた噂とダンジョン踏破した時の噂が混ざって伝わったというところじゃろうか? エルフの国、ディープパープル共和国はアキナイブルー王国からは遠いからの」
「ふむ、つまりご主人に対して言いがかりをつけたという事だな? 殴っておいて正解だったようだな」
「ボクもやったよ!」
「うむ、良いパンチだったぞ」
「えへへ~」
そういえばこのイケメンエルフさん達は突っ込んでこないけど、噂の中の俺達っていまだに奴隷とご主人さまって事になっているのかな? 首輪なんて付けていないんだけどねぇ、先入観だけで見ていないって事なのだろうか。
ゴツッ!
「え?」
突然背後から打撃音が聞こえた! 驚いて振り返ってみると… アイシャに殴られて気絶していたエルフさんが、今度はシフに殴られたようだ。
「あっ、このエルフが急に立ち上がったので危険かと思いまして…」
「いいぞ、よくやった」
「うむ、手加減も大丈夫じゃの」
「あ、そういう流れ?」
シフに殴られた方のエルフ… 今度は気絶していないね。まぁ脳天からやられたみたいでこちらも蹲って悶絶しているが…
「こいつ嫌い! ボクももう1回叩く!」
「待て待て、話を聞いてからな? 一応言い分もあるだろうし」
「大丈夫じゃろ。恐らくあ奴の言い分と変わらんと思うしの」
クローディアはそう言いながら、先ほど自分が殴ったエルフを指差す。
確かにまぁ同じ思いで動いてたんだろうからそうなのかもしれない。でも一応ね? 話を聞かずに断罪するのは俺のポリシーに反するというか、自分がされたら腹立つ事だから止めておこうよ。
「良かったの、話を聞いてくれると言うておる。好きなだけ囀ると良いのじゃ」
「…………」
余程頭が痛いのか、何も言わずにうずくまったままのエルフ。先ほどクローディアに殴られた方のエルフはグレイが背後に立ち、警戒をしてくれている。ついでに言うとシフもまた、こちらのエルフの背後に立って警戒をしている。うん、釘バットを構えずに素手でいるところが手加減なんだね? さすがに釘バットで殴ったら無事では済まないだろうから有難いです。




