182 拉致!?
誤字報告いつもありがとうございます。
「その通りだぞアイシャ! どれ、俺も参戦しようか」
「待つのじゃグレイ、こやつらは私の名を知っていた… 尋問が先じゃろう」
「それもそうだな。しかしこのままでは素直になれないだろう? やはり俺も2~3発入れておかなければな」
「ま、待ってください! あなた達はこの人間種に酷使されているのではないですか?」
お? もう1人のエルフは好戦的ではないみたいだな。まぁ仲間がワンパンで倒されて、見た目が怖いオーガが迫ってきているとなれば戦意も消失しちゃうのかもしれないが… だけどまぁ人間種に使われてる? もしかして俺ってそんな風に思われてたのか?
「何を言うておる、この者は私達の恩人であり主である。いくら同胞といえども我が主を愚弄されて黙っているほどお淑やかではないのじゃ!」
「我が… 主? え? 不法に奴隷に墜とされて買われたのでは? その人間種に」
「全然違うのじゃ! それはどこで手に入れた情報か? まぁ良い、まずはお前達を取り押さえ、色々と喋ってもらおうかの」
「あの! ちょっと待ってください!」
「グレイ、無力化させるのじゃ!」
「おう!」
グレイが返事をしたかと思うと電光石火の動きで詰め寄り、ミシッという音と共に右拳がエルフの腹にめり込んでいた… うわぁ痛そう、しかも鳩尾から少し外れていたようで、気絶も出来ないで悶絶しているじゃないか…
「よしグレイよ、そ奴らを運んでくれ」
「おう。だがどこに運ぶというのだ? さすがにエルフを担いで街に行けば憲兵が出てくるのではないか?」
「うむ、じゃから街へは行かんでもう一度ダンジョンに戻るのじゃ。主には悪いが太陽はお預けなのじゃ」
「うへぇ… でもまぁ仕方ないね、色々と誤解もしているようだし説明も聞きたいしね」
「うむ。では90階層に行くのじゃ、そこならたとえ逃げられても生還は出来んじゃろうからな」
おいおい、同じエルフが相手だというのに厳しい事を言うねぇ。まぁいつもニコニコのアイシャですら激怒しているほどだからこの2人もそうなのかもしれないが、それにしても俺のために同胞に手を出させるというのはよろしくない気がするね。どうにか誤解を解いておかないと。
気がつくとグレイが2人のエルフを担ぎ上げ、ダンジョンの方へと向きを変えた。これはぼさっとしていたら置いていかれるパターンだ! 俺も行かねば!
ダンジョンの方に体を向け、エルフの男性2名と共に転移陣に向かって歩き出した。少し離れた場所からこちらを窺っている男の姿に気づかないまま…
SIDE:闇ギルドの暗殺者
なんだなんだ? ようやく獲物が出てきたかと思えば急に揉め事を起こしやがって、良く分からんうちにまたダンジョンに行っちまったじゃねぇか!
くそっ、さすがにダンジョンに入られちゃ追う事は出来ないからな… ダンジョン攻略なんてやってないから転移陣の開放なんて出来てねぇし、今から普通に攻略したって意味が無い。
「だがまぁ突然現れたエルフと一悶着してたようだがすぐに戻ってきそうだな、ひとまず他の連中に知らせて張り込みをするしかねぇ」
ああ面倒だ、だが金のためにはここは我慢だな。
しかし突然現れたエルフは何だったんだ? まさか依頼主は俺達の他にも依頼を出していたって事か? いや、見た感じそんな雰囲気ではなかったな… まぁ実際は殴られて連れて行かれちまったが。
そんな事を考えつつもギルドへ向かって走り出す。ギルドにはポールがいるはずだ、一応アレでもリーダーだからな… 勝手な真似をしてギルマスにチクられたんじゃ割に合わないから従ってやっているが、さすがに獣人とオーガの動きを見た以上俺1人ではどうにもならんだろう。兎人族までいるとは聞いてなかったしな。
「お、ポール! ちょいと話がある」
「おうどうした? 良い話なのか?」
「良いかもしらんし悪いかもしらん。ターゲットを見つけた」
「…! よし、場所を変えよう」
俺はポールを連れて再びダンジョンの出入り口が見える場所までやってきた。
「それで? ターゲットはどうした?」
「ああ、ちょうど張っている時に出てきたんだが出口付近でエルフの2人組と揉め事を始めてな、その2人組を殴って黙らせたと思ったら連れてダンジョンに入っちまったんだよ」
「ほほぅ? 普通のエルフは同胞を特に大事にすると言われていたが、違ったのか?」
「会話までは聞こえていないから何が原因かは分からん。だが最初に手を出したのは狐人族の小娘だ。その後でオーガが動いたんだが… あいつらかなりやるぞ」
「それくらい想定していただろう? 伊達にダンジョンを踏破はしていないだろうしな。だが俺達は別に正面から戦う訳ではない、どんな手を使ってでも勝てば良いんだよ」
「ああ、それには俺も同意だが… どういう訳か知らないが、兎人族の女が増えてやがった。人間1人にターゲットのエルフ、狐人族とオーガに加えて合計5人だったな」
「ふむ、1人増えていたのか…」
ポールは顎に手を当てて考え始めた。まぁ狐人族の小娘は想像以上に速かったし、オーガの動きも相当洗練されていた… 確かに正面から出て行けば圧倒されそうな雰囲気を醸し出していた。
それに兎人族の女… フヒヒ、なかなか良い体をしてたじゃねーかよ。この任務が始まってからの鬱憤はあの女で晴らしてやりてーなぁ! しかし俺達は4人で仕事をしている、女は小娘を入れても3人… これは早い者勝ちか? さすがに小娘は趣味じゃねーが、まぁ誰かのおさがりよりはマシか。
「よし、とりあえずお前はこのまま張っていてくれ。俺は他の連中を探して呼んでくるぞ」
「おう! もしもポールが来る前に出て来たら後を追うぜ? もちろん合図は残しておくが」
「ああ、それで頼む。しかし何だ… 上手くいけば今日中に片が付きそうだな」
「出て来てくれりゃぁな。だが多分すぐに出てくる… そんな気がするぜ」
「その勘を当てにしてるぜ、じゃあ後は頼む」
「任せろ」
ポールがまた街に向かって動き出す。
しかしそうか、上手く事が運べば今日中に終わるのか。まぁ終わったと言っても国に獲物を連れて行かなきゃいけないからな、なんなら移動中も楽しめるって訳か! なんか漲ってきたぜぇ! さぁさっさと出てきやがれ!




