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180 勇者様は今…

誤字報告いつもありがとうございます。

 SIDE:カール・イング・ナイトグリーン(勇者)


「よし今だ! ボアの後ろ脚を斬りつけろ!」

「「「おうっ!」」」

「ピギャァァァァ!!」


 うむ、良い連携だな。ただボアの突進を止めるのに屈強なタンクが5人も必要なのがなぁ… もっと人員を削減したいのだが、こうしなければ止められないのが難点だな。

 現在5人のタンク役がボアの突進を止め、そして6人の遊撃部隊が数打ちだがミスリル製の剣で後ろ脚に傷をつけている。この後ろ足さえ使えなくしてしまえばボアなんて魔物はただの肉だ、大きな牙のある口元に気をつけるだけで倒せるようになるからな。


 ズシーン…


 後ろ足から大量の流血をしながら、魔境に潜むボアはとうとう立ってられなくなったようだ。


「勇者様、今です!」

「うむ、トドメは任せろ!」


 ここでようやく俺の出番となる。つい先日、ドワーフの鍛冶師に作らせた俺の… いや、勇者専用の聖剣でボアの首を斬り落としてくれる!


 ズシャァッ!


「ピギャァァァァ!」


 むむ!? やはりボアの首が太すぎて、さすがに斬り落とすというのは無理があったか。しかしこの剣… 良い切れ味だな、さすがはミスリルをふんだんに使っただけの事はある。今まで使っていたものとはまるで違うこの感触、もはやこの俺に斬れないものなど無いのではないか? 


「お見事です勇者様! さぁ! このボアを至急解体しろ! 他の者は周辺を哨戒し、血の匂いに釣られた魔物に警戒せよ!」


 最前線に異動となったタケノ・コノサトが仕切り、たった今この俺が仕留めたボアの解体作業が始まる。4人の解体師が巨躯のボアを捌きだす… この作業が始まると、周囲が血生臭くなり嫌なんだよな、俺はもう十分働いたのだからもうここを離れても良いだろう?


「勇者様、先ほどはお見事でございました」

「タケノか… お前もまぁまぁやるようになったではないか」

「はっ、有難きお言葉。そしてここで一つ提言がございます」

「ほぅ? 聞いてやろうじゃないか、言ってみろ」

「はっ! かねてより仰られていた人員削減の件ですが、改めて今の練度を見るに進めても大丈夫かと」

「そうか? できるのであればやるべきだろうな、現在の人員ではいくら魔物を倒してもさっぱりレベルが上がらんからな」

「そうですね… さすがに30人規模の部隊ではレベルは上がらないかと。まずは控えと予備の部隊を次回から外し、今日の半分以下まで絞ろうかと」

「半分以下だと? そんなに人員を割いて俺の安全は確保できるのだろうな?」

「もちろんです! 各自練度も上がっておりますし、何よりも自分が勇者様についておりますれば」

「ふむ… 確かにレベル上げも大事な事だが、キノが何と言うか」

「キノは文官でございます、現地を知らぬ者に差配は出来ないかと」

「それも一理あるな。まぁキノには相応の仕事をさせているから武器の鍛錬をする暇がないのだ、そこを責めるのは止めておけ」

「はっ!」


 ふむ… いきなり人員を半分以下にすると。まぁ些か不安ではあるが、タケノが言うのであれば大丈夫なのだろう。なにやらリャンシャンから帰ってきてみれば、急にここにいる誰よりも強くなっていたからな… やはり少人数で動いた方がレベルが上がりやすいのは間違いない、些か不安ではあるがな。












 SIDE:ヒビキ・アカツキ


 アイテム袋を手に入れてから10日ほど、ようやく俺達は90階層に到達した。出てくる魔物はリャンシャンダンジョンと全く変わらないが、やはりマップが違うので階段探しに時間がかかってしまうんだ。まぁ仕方のない事だから良いんだけどね。


「よしグレイ、なるべく静かにボス部屋の扉を開けてくれ」

「うむ」


 一番の力自慢であるグレイに任せてみたものの、どういう仕組みかは分からないけどダンジョン内にある扉というのは重厚に見える割には軽々と開けられるんだよね!


 静かにといってもさすがは重厚そうな扉、動かすたびにゴリゴリと音がしてしまう。そして開けられた隙間から中を覗いてみる…


「いるいる、でっかいスライムが」

「ふむふむ、こちらに気づいたようなそぶりはあるのかの?」

「ごめん、スライムを見て何をしようとしているかなんてさっぱりわかんないよ」

「まぁの、さすがにそれは無理じゃろ。じゃがその場から動いていないのであれば問題はあるまい」


 この90階層に着くまでの間に立てられた作戦はこうだ。

 1、全員でボス部屋に入る。

 2、クローディアがトルネードの魔法の射程ギリギリから発動!

 3、想定通りスライムのゼリー部分が飛び散ればグレイが突貫して核を砕く。

 予備案として万が一トルネードの魔法でもビクともしなかった場合には、即座にグレイが槍を投擲し、クローディアが雷撃の魔法を重ねる。


 うん、別に作戦とか言うほどじゃないね! 


 上記の作戦の通り動くため、グレイは最初から槍を2本両手に持ち、クローディアもグリーンウィンドステッキとイエローサンダーステッキの両手装備になっている。アイシャの装備は変わっていないが、相手がスライムなので炎の魔法をメインに。シフは現状物理攻撃しか手段が無いので俺の前に立ち、護衛を勤める事になる。


「では行くか、俺の準備は整っているぞ」

「私もじゃ。しかし待てよ… ここまで来て今更なんじゃが、トルネードを使う前にフレイムピラーを使ったらどうなるのじゃろうか?」

「ええ? それはまた恐ろしそうな組み合わせだな。まぁ火は風にあおられると火力が増すからな、さぞかし燃え盛る… かもしれないな」

「むむむ、気になるのぅ! どうじゃろう、せっかくじゃしその組み合わせを試してみては…」

「却下だ。聞く限り凄まじく危険なものではないのか? 俺は魔法の事には詳しくないが、そういう事は事前に試し撃ちをとご主人が言っているだろう。なにより必要に迫られての変更ではなく、クローディアの好奇心が理由での変更など反対に決まっている」

「ぐぬ…」


 グレイが放った正論でクローディアが口を塞ぐ… でもね、俺もグレイの意見に賛成だな! 確かに威力的に大変強力なものになりそうな予感はあるけど、今ここで試すような事ではないよね? せめてスライムを倒した後の安全な状況でやろうよ。


「よし、じゃあクローディアは先頭でトルネードの魔法を。グレイは成否のどちらでも即時対応できるよう気を張ってくれ」

「うむ、仕方ないのじゃ」

「承知したぞご主人」

「じゃあサクっとやってしまおう、行くぞ!」

「「「「おう!」」」」

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