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164 SIDE:グレイ+α

誤字報告いつもありがとうございます。

 SIDE:グレイ


 フッ、いよいよ来た事のないダンジョンに突撃だ、とは言ってもダンジョン内部はどこに行っても共通していると言われている。実際に俺が経験してきたダンジョンとリャンシャンダンジョンは似通っていたと思う、記憶が確かならな。

 なんといっても俺がダンジョンに入っていた時期とはすでに80年位前の話だ、それから奴隷にされてしまったのでその辺の記憶はおぼろげな部分が多いのだ。


 しかし、俺に一服を盛って奴隷落ちをさせた奴の顔だけは忘れる事は無かった。



 我らオーガは群れない事で知られているが、実はそれなりな規模の街にて暮らしていた。鍛冶をする者もいたし商人になる者もいた、オーガだからといって全ての者が戦う事で糧を得ているというわけではなかったのだ。


 そんなオーガの街の近所にダンジョンがあり、そこで収集された物が売られていき金を得る。俺もそんな暮らしをしていた。

 こうして生活の場では群れる我らオーガ、しかし戦場では全く違った。個の実力に重きを置き、人間社会のように血族で爵位を受け継ぐようなことはしない。実力さえあれば誰であっても讃えられる社会だった。


 とはいえ、唯一とも言える血縁による相続事がオーガの首領の立場だった。

 当代の首領はすでに老齢で、力を示すにはもはや老いすぎていた。首領は子供にも恵まれなく、後を受け継ぐ血縁は娘が1人のみ… だからなのか、強い若者を選んで婿にするとか言い出して武闘大会を開く事になったのだ。


 俺は当時ダンジョンアタックにおいて既に名を売っていたんだが、首領の娘なんぞに興味は無かったからな… そんな武闘大会など無視してダンジョンに入っていたのだ。


 どのような戦いが繰り広げられていたのかは知らんが、勝ち抜いたのは俺の知人の1人だったのだ。本人は大層喜んでいたそうだが、当時名の売れた強者はこぞって参加をしていなかったためケチが付いたのだそうだ。


 ま、俺にはどうでも良い事だがな。


 そう思っていたのだが首領の娘がある日、知人に問いかけたという。知人と俺、どちらが強いのかと。



 そんな事も知らず、悩みがあるという知人から街外れに呼び出されてのこのことで向いた俺。呼び出された場所は武闘会を開く会場だった場所なんだが、知人が持ち込んだ酒を飲みながら話を聞いていると… 何やら体が痺れてきたのだ。


「お前にさえ勝つ事ができれば次の首領の座は俺のモノだ、だから死んでくれ」

「何を… 言っている?」

「ガハハっ! 何も知らずにアホ面下げて毒入りの酒を飲みやがって! お前はもう動く事すらできんだろうよ! ここで俺とお前は決闘を行なった、そして俺が勝ったという事だ。お前の事は首領の娘には悪く言っておいてやるから、毒で死ななかったとしても罪人として奴隷落ちにするよう進言しといてやるぜ! ざまあねえなグレイ!」




 俺の記憶はここで途切れている。

 盛られた毒では死ななかったらしく、気づいた時にはすでに奴隷になっていた。人間種に買われ、素手で魔物と戦わせられたり、武術や剣術の稽古用の的にされたりと良く生きてたもんだ… 今まで鍛えていた成果だったのかもしれんな。


「グレイ! 何をぼさっとしておるのじゃ、お主の大好きなダンジョンじゃというのに気が抜けておるのではないか?」

「む? 別に気を抜いてるわけではないぞ」


 しかしこれまでの経験も経緯も、今のご主人に出会うために必要だった事なのかもしれんな。俺に一服盛った知人も、意識がないまま奴隷に墜として追放した同族も恨んではいるが、ご主人と共にいるとそういった昔の事など忘れてしまうほどに充実している。

 なによりも、この俺がパーティを組んで戦う事になるなんてな… これが俺自身一番驚いているぞ。


 魔法にかけては並ぶ者はいないであろうクローディア、こいつと戦う事になったらどうするか… ご主人のステッキを使われたら勝ち目は全く見えないな、悔しいが。

 速さにかけては俺よりも遥かに上を行くアイシャ、こいつはまだまだ甘ちゃんだから速度で劣っていたとしても勝ち目はあるだろう。

 瞬発力にかけては見た事も無いほどの反応速度を持つシフ、だがこいつはアイシャよりも劣るひよっこだ。この俺が鍛えてやらねばご主人の役に立つ事は難しいだろう、今後もビシビシとしごいてやらねばな! 支援系の魔法に素養がある? そんな事は知らん! 魔法使いだろうと商人だろうと結局最後に物をいうのは体力と腕力なのだ!


「グレイ、行くぞ」

「うむ、任せておけご主人よ」


 今日もこれからダンジョンアタックだ、ご主人のおかげで良い武器を振り回せる事に喜びを感じ、今日も戦おう。ご主人と共に。











 SIDE:ドワーフの鍛冶師ホーク


「おい弟子よ、生きてるか?」

「もうダメです、死んでますよ親方…」

「死人が返事などするか! しかしこれで依頼の品は完成した、こいつを納品してからの事だが…」

「そうっすね… ひとまず酒を飲んで寝てしまいたい気持ちがありますが、でもそうすると明日からまた普通に働いていそうです」

「ふむ、同意見だな。ここは無理してでも体を動かした方が間違いないか」


 しかし、勇者達よりも強いという冒険者がどこにいるのかが分からない。まぁ拠点としていたのはアキナイブルー王国のリャンシャンという都市らしいが、すでにクリアしたとなるとそのダンジョンに留まるものか? 飽くなき探求心があるのだとすれば違うダンジョンを目指すものじゃないか? その辺の情報収集も兼ねて冒険者ギルドに行くべきだろう… もちろんこの街のではなく違う場所のギルドにな。


「よし、んじゃいっちょ気合を入れろ! 鍛冶道具はアイテム袋にしまったし、納品した足で出て行くぞ」

「了解です親方! ちなみにどこに行くんですか?」

「うぬ… 王都にでも行ってギルドに問い合わせてみるか」

「ナイトグリーン王国の王都ですよね? あの街は臭いから嫌いなんですけど」

「そんなもんナイトグリーン王国ならどこも一緒だ、この街くらいしか臭く無い町なんてありゃしないからな。だが情報を仕入れなければ動きようがない」

「っすね。わかりやした! じゃあ行きましょう!」


 こうしてキノ・コノヤマの住む家に向かった。

 しかしキノ・コノヤマは不在… これはある意味間が良かったのかもしれん。早速注文の品を家の者に預けると、次の仕事の話になる前に全力で退散だ! まぁキノ・コノヤマ本人がいないから仕事の話は無いだろうと思うが油断は禁物、そのまま王都を目指して街を出たのだった。

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