160 バンガード発進! じゃなかった、出発!
誤字報告いつもありがとうございます。
まぁ満場一致でダンジョンに行こうという事になったんだが、俺には他のダンジョンがどこにあるのかは全く分かっていない。かといって知識面での主戦力であるクローディアも、奴隷になる以前は魔法研究に携わっていたとかで自国内の事しか詳しくないという。奴隷になった後の知識は行く先々で見聞きしたものであり、信憑性を問われれば何とも言えないという事だ。
そこでダンジョン大好きグレイに聞いたところ…
「俺が生まれた国に2つダンジョンがあるな、そのどちらも50階層に届いていないからランクは分からん」
「そうなんだ。しかし戦うのが好きだというオーガなのに50階層に届かないものなの?」
「ああ。原因として一番大きな物は、まず我が種族は群れないという事だな。単騎で突撃したところで限界は近い、俺も1人でダンジョンに行っていた時は20階層程度だったな。
ご主人と共になってからその考えはすっかり変わってしまったがな、今では食料によるやる気の違いがはっきりと分かるぞ」
「まぁね。食べる事は生きる事だから、それが美味しいとなればやる気も満ちるだろうさ」
「そしてだな… まず俺の出身国はこの位置からだと魔境の向こう側になる。大きく迂回する事となるから近いとは到底言えんな」
「なるほど…」
まぁアレだ、後で商人であるナイトハルトにも聞いてみよう。ガラハドに聞いてもゴーマンレッド王国の情報しか無さそうだし、いくらアイテム袋のためとはいえゴーマンレッド王国には行きたくないから却下かな。
ナイトハルトの予定は聞いていて、今日は朝から空になった荷馬車に俺達が狩ってきた素材を積み込むと言っていた。結構な量があるはずだから1日仕事になるだろう、その隙をついて確認だな。
「ダンジョン… ですか。まぁ私は商人なので多少は知っておりますが、アキナイブルー王国の周辺に限りますよ?」
「もちろんそれで構わないよ。まぁギルドに聞けば手っ取り早いんだけど、近くにないからね。ああ! そういえば一応耳に入れておくか」
「おや? 何でしょう?」
「いやね、リャンシャンのギルドマスターが俺達が入り浸っている場所を教えろとか言ってきてさ… 何かしらの拠点があるならそこにギルドを設置するぞとか言われたんだよ」
「ギルドが… ですか。まぁ商人の観点から見ればお断り一択ですね」
「ですよねー! もちろんこの場所の事は教えていないし、後をつけられた形跡もないから安心してくれ」
「承知しました… が、ギルドが皆様を注視しているとなれば、ここでダンジョンに行くというのは良い目くらましになりそうですね。
そういえばダンジョンの話ですが、アキナイブルー王国の北部にペンチャンという街があります。ここもダンジョンで栄えているダンジョン都市ですね」
「アキナイブルー王国の北部かぁ… 全然地理に詳しくないんだけど、すぐに分かる場所なのかな?」
「はい。王都より真っ直ぐ北に向かった街道がありますので、それに従って進めばペンチャンに着きます。後はそうですね… ナイトグリーン王国との国境付近にもカンチャンというダンジョン都市があります。私の知っているのはこのくらいですかね」
「なるほど、2件も教えてもらえれば十分だよ」
「すぐに旅立つので?」
「そうだねぇ、うちにはダンジョン大好きオーガがいるからじっとしてられないと思うんだ。それにアイテム袋が手に入るのなら早い方が良いだろうしね」
「ヒビキ様、その件なのですが… もしもアイテム袋を手に入れる事ができましたら当商会に売ってはいただけませんか? もちろん用途は魔境素材の運搬に限定するつもりですが、アイテム袋を持っている商会というのは何と言いますか… 非常に箔がつくと言いますか」
「うーん… 素材運搬はもちろんだけど、狩場から拠点に戻るまでの間で使用しようと思ってたんだよね。やはり荷物を持って森を抜け、戦闘までこなすというのは大変だし危険だから」
「もちろんそこは理解しております。何卒候補の一つとしてお考え下さるようお願いします」
「うん、まぁ今すぐの話じゃないから時間はかかるけどそれで良いなら」
「もちろんです」
そっかー、アイテム袋は欲しいのかー。まぁ確かにカヤキス商会でも持ってないというほどの希少品だ、持っているというだけで箔がつくというのも何となく理解はできる。
まぁアレだな! 行く先々で情報収集しながらダンジョンを巡る事になるだろうから、複数手に入れば喜んで売らせてもらおう。
まぁアイテム袋のレア度を考えれば浅い階層に出てくる事は無いだろう、となるとやはり最低でもCランクダンジョンである事が重要だ。今教えてもらったダンジョンがCランク以下だった場合はどうしようもないけどな!
「話はついたか? これからどこに向かうのだ?」
「なんでもアキナイブルー王国の北部に1ヵ所ダンジョンがあるんだってさ、そして国境付近にも1ヵ所」
「ほほぅ! ではもう出るのだな? 腕が鳴るな」
「落ち着くのじゃグレイ。聞けたのはその2件だけかの?」
「そうだね、アキナイブルー周辺しか詳しくないそうだ。まぁでも次以降はギルドで聞けば良い事だしな」
「そうじゃの。まぁ主がいれば旅じゃろうがダンジョンじゃろうが食う事と寝る事に困る事は無い、もう主無しでの旅は考えられんようになってしまったの」
「あはは…」
まぁそれは自覚をしているよ。この世界の干し肉とかパンとか硬すぎるんだもの… あれじゃ食事の時間は楽しくない、日本人には耐えられないよね! 俺だけかもしれないけど。
「まぁとにかく出発しようか。まずはアキナイブルー王国の王都を目指してだな! そうしたらそこから北上する街道があるとの事だ」
「うむ、では行くとしようかご主人よ」
「うん、行こうか!」
魔術師団が訓練に集中する時間を使い、更なるアイテム袋の確保を目指して拠点バンガードを出発するのだった。
 




