159 新たなダンジョンについて
誤字報告いつもありがとうございます。
そんな訳で、俺達の中で決まっていたこの地の名称『バンガード』はすぐにみんなへと浸透していった。新しくやってきた魔術師達の家族も建ち並んでいた平屋に住む事となり、今後は倉庫の管理人なりの仕事に就くという。
魔術師達はガラハドの指導の下浅層での狩り、手に入れた素材の持ち帰りとやる事はいっぱいだという事。ぶっちゃけ数ヶ月俺達がこの地を空けたからといっても特に不具合は無さそうだと言ってくる始末… まぁ育成にかかる時間はね、計り知れないもんね。
それに強行して進軍すると、輸送部隊の方が追いついてこないとの懸念をクローディアが表明。安全を考えるとやはり育成にはじっくりと時間をかけるのが良いだろうとの事… まぁ同意だけどね。
とりあえず今日は馬車に積まれていた移住者の荷物と買い集めてきた食料品、その他資材の荷下ろしで終了した。
しかしダンジョンかぁ… 前回アイテム袋を手に入れた時ってモンスターハウスの場所に隠し通路があったんだよな、他のダンジョンではどうなのだろうか。以前聞いた話ではダンジョン内に出る魔物というのは各ダンジョンで統一されてるとかなんとか… そうなると別のダンジョンでも特定の階層にモンスターハウスがあり、そこに隠し通路があるなんて事もあり得るのか? まぁあれば嬉しい話なんだけどね。
「そういえばクローディア、前回アイテム袋を見つけた隠し通路って何階層にあったんだっけ?」
「ふむ、確か83階層じゃった覚えがあるの… きりの悪い階層にあったから疑問に思った記憶がある」
「ふむふむ。もしも他のダンジョンも同じような魔物構成だというのであれば、階層の構造も似たようなものだったりすると思う?」
「なるほどのぅ。つまりアイテム袋のあった階層にはモンスターハウスがあったのじゃから、違うダンジョンの83階層にも隠し部屋があるかもしれんと言いたい訳じゃな?」
「そうそう。まぁそれには最低条件があるんだけどね、Cランク以上のダンジョンじゃないとって」
「そうじゃの、Cランクダンジョンでの最深部が100階層じゃからな… Dランクであれば50階層で終わりじゃから行くだけ無駄じゃと言いたいのじゃな?」
「そ、そうそう」
「ふむ、それは難しいのぅ。実際行ってみなければどこまで潜れるかは分からん、前例があれば良いのじゃろうが他の冒険者達では30階層程度しか進めておらんじゃろうからの」
そうなんだよね… この世界の冒険者はレベルが上がるのが遅いというか、きっと命を大事にしすぎて効率が悪くなってしまっているんだろう。
大人数で行けば経験値はその人数で頭割り、当然1人1人に入る経験値は微々たるものになってしまう。俺達は当時4人の少数精鋭だったし、パーティの平均レベル=狩りが出来る階層数という冒険者の概念を無視するかのように格上ばっかりと戦ってたからぐんぐん上がっていったが他の冒険者はそうはいかないのだろう。
「となると… しらみつぶしになってしまうのか?」
「まぁそうなるのぅ。じゃが安心するがよい主よ、シフを加えた私達のパーティは文句なく世界最強レベルじゃと思うのじゃ。つまり、入ったダンジョンがCランク以下じゃった場合でもすぐに最深部に到達するであろうという事じゃ」
「まぁダンジョンアタックはそれほど心配はしていないよ、実際皆強いからね。ただ問題はダンジョン間の移動にかかる時間なんだよなぁ… 国を跨ぐ距離だと数十日は軽くかかりそうだし」
「そうじゃのぅ、こればかりは何とも言えんのじゃ」
アイテム袋は欲しい! 俺が輸送担当になるんなら問題は無いんだが、最前線で戦う事のできる者がグレイを筆頭に俺達のパーティしかいない… その状態で俺が抜けるとなればグレイ達は大騒ぎをするだろうね! ハンバーガーが食えないって! まぁそうでなくても輸送量の増加はカヤキス商会からしても望むところだろう、それだけ儲けに繋がるからね。
翌朝、朝食を食べながら今後の動きについて打ち合わせをする。
「まぁそんな訳でしらみつぶしになる感じだな」
「俺はそれでも構わないぞ。ダンジョン内に出てくる魔物は同様らしいが、中には100階層以降があるダンジョンにも巡り合う事もあるだろう。それに当たれば楽しそうだな」
「まぁこの周辺国にもダンジョンがあるという話は聞いておる、近いダンジョンから順に巡っていくのが良いじゃろう」
「ふむふむ。まぁ俺は他のダンジョンの場所なんて知らないし、また皆に任せる事になってしまうんだけど大丈夫?」
「うむ、任せるがよいぞ」
ダンジョンと聞いてグレイのやる気がMAXになっているようだね? まぁこんな時のグレイは頼もしいし問題は無いんだけど、他のメンバーはどうかな?
「私も問題は無いのじゃ。世界中にあるダンジョンを渡り歩くとはなんとも楽しそうじゃのぅ」
「ボクも頑張るよ!」
「私はご主人様の物ですので、何でも言いつけてください」
いやちょっと待てシフさんや、俺は一度でも物扱いはした事ないよ? 誤解を招く言い方は止めようね?
SIDE:ゴーマンレッド王
「おい誰かおらぬか!」
「なんでございましょう陛下」
「魔術師団が行方不明になった件ですっかり忘れておったのだが、以前購入した奴隷はなぜ届かん? もうとっくに届いても良い頃合いじゃないのか?」
「はっ、それについては詳細を聞かされておりませんので…」
「馬鹿モン! 雑用させるために買ったオーガと愛玩用に買ったエルフと獣人の奴隷の事だ! 一体いくらしたと思っておるのだ!」
「そう申されましても…」
「貴様じゃ話にならん! もうよい、下がれ!」
全くどいつもこいつも役に立たん者ばかりだ、少しはこの儂のために先手を打って動こうとする者はおらんのか? 嘆かわしい。
新たに儀式召喚をするにしても魔術師団が行方不明、召喚するための魔力も今から溜めるとなれば数年はかかるだろう… 待ってられんな。
「しかし楽しみにしていたエルフと獣人の奴隷… しかも見目の幼い者をわざわざ選んだというのにどうして来ない!」
全くこの憤り、どうしてくれようか。普段抱いている女達にもすっかり飽きてしまっているし、ここらで新しいものをと思っていたのだが… 仕方がない、後宮で発散するしかないな。
玉座の間を後にし、すっかり重くなってしまった体を揺さぶりながら後宮へと続く通路を歩くのだった。
 




