156 バンガード
誤字報告いつもありがとうございます。
「おおヒビキ殿! 戻られたか」
「おっ、ガラハドもこっちに来てたんだね」
「うむ。まぁリーダーとして現場の把握は当然の事だからな、それに魔境の魔物とやらを拝んでみたいとも思っていた」
「なるほど、まぁ無理はしないようにね」
拠点に入るなりガラハドと遭遇、まず元気そうで良かったよ。
「ところでヒビキ殿、いよいよ本腰を入れてという事になるのか?」
「うーん… とりあえず新メンバーがいるから戦闘に慣れさせる事が先かな、ダンジョンである程度鍛えてはきたんだけどね」
「なるほど、我らもそれに同行する事は可能か?」
「まぁこっちは全員で動く訳じゃないんだけど、それで良いのなら」
「ふむ? それは一体?」
「まぁ師匠としてグレイがつくからね。残りは魔物素材の輸送用の道作りをしないとなって」
「なるほど、道作りも我ら魔術師団が手伝えそうだな。あれは良い訓練になるんだ」
ほほぅ、地味な作業も訓練としてやる気があるんだね。
「作業する者と護衛する者と分かれる事ができ、どちらの訓練も重要だからな」
「なるほどね、それを交互にやるって事だね?」
「うむ、護衛の訓練はなかなかできる機会がないからな。まぁ身内という事で多少緩むところはあるかもしれないが、貴重な実戦経験だ」
ふむふむ、まぁ護衛とかの経験はやらなきゃつめないからね。いきなりぶっつけ本番とか若い者には酷かもしれないもんな。
そしてナイトハルトだけど、アキナイブルー王国の王都に向かいまだ戻ってきていないとの事。まぁこれは事前に聞いていたから問題は無い。現状ガラハドを含む元魔術師団が拠点に常駐している事になる。
うん、職人達もみんな帰ってしまったという訳だね。
「しかし立派になっちゃったなぁ… もうこれ町じゃん」
「うむ、ナイトハルト氏が連れてきた職人の腕は良かったようだな。出入りのしやすいところに大きな倉庫が2棟、一応保険のために空き地を設けたそうだ。その他はここに常駐する者用の住宅、食糧庫などはすでに完成している」
「ふむふむ、そして現状空いている土地は住民が増えた時のためにかな?」
「そのようだ」
まぁ防壁で囲っている集落だ、人が増えても土地は増やせないからな。まぁ防壁は魔法を使って建てていたから増築する事も可能かもしれないけどね。
「ま、今日はゆっくりして訓練は明日からって事で。グレイにも話しておくよ」
「よろしく頼む」
そう言ってガラハドは離れていった。
さて、空を見上げるとお日様は大分傾いている。いいとこ午後4時とかそんな感じかな… 今からじゃ何か始めてもすぐに日が暮れてしまう、ずっと移動しっぱなしだったし早いけど今日は終了にしよう。うん、のんびりとね。
俺がガラハドと話をしている隙に中に入っていたグレイ達の元へ向かう。
「よし、じゃあいつもの場所に行って休む準備をしようか。何かするにしても明日だな」
「承知したぞご主人。では明日から魔境にて実戦訓練を始めようか」
「ああそれなんだけど、ガラハドが一緒に訓練したいと言ってきてね… どうせ彼らも戦力として当てにするんだから任せてもいいか?」
「うむ、承知した。まぁそうなると… クローディアやアイシャも来てくれると危険度が減るのだが?」
「そういう事ならこっちも総出で行こうか、どうせ拠点に残っていてもやる事は無いんだし」
うんうん、魔術師団の事を信用してない訳じゃないんだけど俺にとっての戦闘基準はグレイ達だ、そしてこれを基準にするのは大問題という事も理解している。グレイ1人でシフだけじゃなく魔術師団までも面倒見ろというのはさすがに厳しいだろう、俺達も支援しないとね。
「この際じゃからビシっと鍛え上げておくのも悪くないかものぅ。奥に行くにつれて魔物は強くなっていくのじゃ、輸送や護衛をやらせるにしてもレベルが足りん」
「そうだね、それには俺も同意だ。浅い部分ならともかく、奥にいる魔物素材の方が値が付くんだろうから仕方がないね」
「ご主人様、私も頑張ります」
「ああ、シフも頼りにしてるからな」
そういえばシフなんだが… もりもりとハンバーガーを食べさせていたらみるみるうちに肉付きが良くなって、すっかりグラマラスになっているんだよね。クローディアは知らんふりをしているが、アイシャがなんと言うか… 大きなお胸に嫉妬しているのだ。アイシャに至ってはまだまだこれからだと思うけど聞く耳を持ってくれない… 漫画のように胸の谷間に顔を突っ込み、「肉がぁ」と呟いている。まぁアレだ、ガンバレ!
翌朝、俺達は朝食を済ませて広場に行く。まだ夜が明けてから間もないというのにすでに魔術師団の者がうろうろしている、なかなかに勤勉なんだな。
ちなみにこの拠点の名前だけど、昨夜5人で話し合った結果バンガードという名に決まったのだ。なんでもその由来は、神話の中に移動する島があったというのをシフが知っていて、その話を聞いたからだ。それが本当なのかどうかはさておき、呼びやすさもあってそれに決定した。
今はまだ集落程度の規模だけど、建物なんかだけを見ればそこらの村を凌駕していると思っている。人口が圧倒的に少ないんだけど、それもこの先魔術師団の方から移住者がやってくる事も決まっている。
さすがに都市とまでは栄えないと思う、だってこのバンガードはカヤキス商会の倉庫ヤードという事になっているからだ。他所から人が来た所で中に住まわせる意味も理由もない、そんな事をすれば倉庫の中身の心配事が増えるだけだろう。
「ヒビキ殿、早いですな」
「おはようガラハド、そっちの準備が整い次第魔境に行けるよ。ちなみにこっちは全員で行く事になったから、そっちも4~5人で編成してもらえると良いね」
「うむ、了解した。では戦闘要員を2名と道作り要員を3名連れてこよう」
「分かったよ、じゃあ準備の方をよろしくね」
さて、いよいよ魔境に対して本格的に進む事になるんだけど… ダンジョンと違うからどこまで上手くいくかはやってみないと分からない。色々と頼りになっていたグレイやクローディアも、魔境に関しては聞いた話しか情報は無いという。ここから先は手探りで行かないとな! もちろん安全第一で!




