154 整った
誤字報告いつもありがとうございます。
シフのパワーレベリングを始めて10日が経った、今日は街に行ってミスリル製釘バットを取りに行かなくてはな!
パワーレベリングとはいえ、アイシャの時と同様グレイはスパルタ式の指導だからな… シフもすでにオルトロスとの戦闘を経験している。
そしてそして! 俺を含めた初期メンバー4人全員がレベル100の大台を突破した!
いやぁこれには感動だねぇ。一応レベル99でカンストしてしまうのではないかという不安はあったんだ、レベルで頭打ちになったとなれば後は技術しかないもんね… そうなれば… 俺のような戦闘において不器用な奴はどうしようもなくなってしまう、でもレベル100以上あるとなればゴリ押しはまだ可能である! 身体能力だけで押し切る事ができるかもしれない! うむ、良い事だ。
「よーし、じゃあ街に戻ろうか」
「うむ。しかしご主人よ、そろそろこのダンジョンでは俺達のレベル上げは困難になってきた気がするぞ」
「そうだねぇ。もっとランクの高いダンジョンを探すか、もういっそ魔境の深部へと向かうか… 悩み所だな」
「悩む必要などないじゃろ、魔境に行くべきじゃな。シフもこの10日間でレベルも80台まで上がっておるし、戦闘技術もオルトロスを相手に立ち回れるなら問題は無いじゃろ。
何より魔境の攻略には手間と時間がかかる、迷わないよう目印を作ったり中継基地を作ったりとやる事はたくさんあるのじゃ。輸送用の馬車が通れる程度の道の整地、周辺の魔物の間引き、盛沢山じゃな」
「そう言われるとそうだよな。まぁ魔境での戦闘はダンジョンと違い、魔物だけじゃなく変な病気を持った虫とかにも気を付けなくちゃいけない。まぁ虫の魔物もいるんだろうけどね」
「うむ、確かにいるじゃろうな」
「まずガラハドのところにも行ってみよう、そろそろ本気で拠点に駐在する人員を送り出さないとダメかもな」
「その前に武器屋じゃろう? 仕上がりを早く見てみたいのじゃが」
「だね! じゃあ武器屋に行ってからガラハドのところ、そして時間次第で今日中に拠点に向けて出発しようか」
そんな訳で武器屋へゴー! 総ミスリル製の釘バットとか確かに気になるよな、透き通るような青銀色の装備は本当に美しい。まぁ目立つけどね…
「どうだ? 注文通りだと俺は思うが」
「いやぁ良い感じだよ!」
「おかげでこっちもミスリルの経験を積めて大助かりさ。ああ、支払いは鉄で頼みたいんだが」
「もちろん良いとも、おまけもしちゃうよ!」
「うはっ、ありがてぇな!」
総ミスリル製の釘バット… 強度の都合で釘の部分は結構太めになっている。しかし見るからに痛そうな武器だね、鉄で作った物よりも痛そうに見えるかも。
「あ、あの… 奴隷の私がこんな良い物を持ってしまっても良いのでしょうか?」
「戦力強化の一因だし、全然問題は無いよ。ただ奴隷がミスリル製を持っていたら難癖付けられる可能性はあるかもしれないな」
「まぁそれも大丈夫じゃろ。なんせ武器そのものは釘バットなわけじゃし、そんな物異世界の知識が無ければ知っているはずの無い物じゃからな。それに問題が起きてしまっても鍛冶屋に証言させれば良いじゃろ」
「まぁそうだな、とにかくシフはその武器を使いこなす事だけを考えてくれ。ミスリル製だし魔力の通りが良いはずだから、自分の魔力で更に強化とかできるようにね」
「分かりました!」
しかしこの釘バット(ミスリル製)、普段どうやって持つのが良いんだろうね。形状の都合上そのまま大剣のように背負ってしまうと釘の部分が背中に刺さってしまうのだ… これは今後の課題になりそうだね。まぁ今は普通に手に持っているけど、これだと片手が塞がってしまうから早急に解決したいところだ。
「鞄を背負って中に鉄板でも入れとけばいいだろ」
「それじゃと鞄も相当強度が無ければいかぬ、そうなれば重くなるじゃろう」
「そんなもの鍛えれば解決するではないか! 筋肉をつけろ筋肉を」
グレイとクローディアの会話が聞こえてくるが、これは無視した方が良さそうだな。なんせグレイの脳筋思考はひどい、その内筋肉があるからそんな釘など刺さらないとか言い出しそうだしね。
次に赴いたところは予定通り元魔術師団が拠点としていた空き地だ、宿を取れなかった者などが集まってテントを立てている場所だ。 そしてローブを羽織った魔術師を見つける。
「やあ、ガラハドはいるかい?」
「あ、どうも。師団長はカヤキス商会の新しい拠点に行っていますよ」
「あれ? そうなんだ」
「はい。向こうで護衛をしている者達との交代要員として、師団長も一緒に向かいました」
「あらら、じゃあ入れ違いになっちゃったみたいだね。じゃあ俺達もそっちに向かおうか、邪魔したね」
「いえいえ、自分達も近い内にそちらへ行くと思いますのでよろしくお願いします」
「了解」
ううむ、入れ違いだったとは残念だ。
しかしまぁリーダーが率先して行っちゃうとは行動派だな… まぁ大勢の部下とその家族を引き連れて国から出てくるくらいにはそうなんだろうけど。
それじゃあギルドに軽く挨拶してから俺達も向ってしまうか。
「うぉっ! なんだその物騒な武器は! しかも色からしてミスリル製だな?」
「ああコレ? これはシフ用に作ってもらった装備だよ、まぁ見た目は物騒に見えるよね」
「奴隷用の武器にミスリルとか、こんな事をするのはお前だけだな… それで? その奴隷を鍛えるのはもう止めるのか?」
「いや、もうレベル80台に突入したから後はいろんな魔物との戦闘を経験するだけだよ。ここのダンジョンだと高レベルの魔物は四足歩行だし、それだけ狩っていてもって感じだな」
「ふむ、そうか。つまりまた別の場所へ行くという事だな?」
「まぁそうだね」
「この街には戻ってくるのか?」
「そりゃね、時々ミスリルを売りにこようとは思っているよ」
「そうか。どこを拠点にしてるかは知らんが気をつけてな、なんならその拠点にギルドの出張所を申請してやろうか?」
「ああ、それはどうなんだろう。まぁ向こうに行って覚えていたら聞いてみるよ」
「覚えていたらかよ… まぁいい、ちゃんと定期的にここへ来るんだぞ? ミスリルを納めに来れば生存確認も取れるからな」
「そうするよ。じゃあちょっと行ってくるよ」
さて、じゃあ魔境に行きますか!




