151 ダンジョンに行こう
誤字報告いつもありがとうございます。
「ご主人、起きてくれ」
「んん? あれ?」
「ご主人様! 狩りから戻ってきたよ!」
「あ、ああ。今行く」
どうやら爆睡していたようだ… うん、なんか空が暗くなってきてるね。寝すぎて夜困りそうだな。
「お疲れ、どんな感じだった?」
「猪を1頭譲ってやったから、晩飯は肉だろうな」
「いや、森の様子をだな…」
「お、主は目覚めたか」
「ああクローディア、お疲れ。訓練の調子は?」
「うむ、魔力の扱いはある程度できるみたいじゃな。魔法に関しては今後に期待というところじゃ」
「ふむふむ、まずはレベル上げからだね?」
「そうじゃの。まぁナイトグリーン王国の王都を見てきた感想をギルマスにも伝えておかねばならんし、リャンシャンに戻ってからダンジョンでレベル上げじゃな」
「一応ギルドマスターにも知らせておくべきだと?」
「そうじゃの。まぁ全く有用な情報は無いのじゃが、義理のようなものじゃの」
とりあえず周囲を見てみると、職人やら護衛の魔術師やらが火を囲んで猪を焼いている姿が見える。あれは放っておいても良さげかな? 俺達は俺達でいつもの食事にしようかね。
女の子座りで黙々とハンバーガーを齧っているシフ、どうやら食の好みはクローディアと似ている模様だ。シャキシャキレタスとマヨネーズが絶妙に絡み合うテリヤキバーガーが気に入ったようで、枝豆コーンサラダとセットで食べている。
まぁメニューについては順に食べさせてって思っていたけど、彼女にとってこの組み合わせは最高のようだね。
「じゃあ早速明日の朝には出発するか、魔境の攻略の前にシフのレベルを上げて行かないと不安だしな」
「うむ、それでいいと思うぞ。兎人族も森を好むという噂は聞いている、クローディア以外にも森の進み方を知っている者がいるのは心強い」
「そうじゃの。魔境内部で二手に分かれる事もあるじゃろうし、それには賛成じゃ」
へぇ~、兎人族も森を好む種族なのか? なんだかイメージがわかないな。真っ白な髪の毛に同様の色をした大きな耳、森の中じゃあの色は目立ってしまう気がしてならない。まぁ森に生きる全てが保護色ではないのは理解はしているが。
「ご主人様! シフの分の敷物と毛布をお願いします!」
「ああそうだな、予備を作っておいて正解だったな。じゃあクローディアは寝床の準備を頼む、俺はナイトハルトに明朝出るからって伝えてくるよ」
「了解なのじゃ」
クローディアにダークバリアステッキを渡して人だかりの方へと歩いていく、食い切れないほどの肉が嬉しいらしくてどんちゃんやっているからな。
「やあ、俺達は明日の朝にリャンシャンに行くよ。シフを鍛えてやらなきゃいけないんでね」
「そうですか。我々は魔術師がこちらへ向かってきているようなので、それの到着を待ってから王都へ戻ります。職人を送っていかなければいけませんので…
そして新しくやってきた魔術師の皆さんにこの拠点に常駐してもらい、維持管理をしていただきます。盗賊はグレイ殿が追い払ってくれたおかげでまだ現れてはいませんが、もぬけの殻にする訳にはいきませんからね」
「そうだね、俺達もシフを鍛えたら戻ってきて魔境攻略の道作りを始めるよ」
「はい、魔境素材の輸送準備も整えておきますのでぜひどうぞ。ああ、遅くなりましたが猪肉ありがとうございます。新鮮な肉はなかなか食べられなくて…」
「そうなの?」
「ええ、さすがに護衛の人を魔境に向かわせる訳にもいきませんからね。保存食ばかりでした」
「そ、そうなんだ…」
「ああ、後どうしても決めておきたい事がありまして… ヒビキ様に決めて頂いてよろしいでしょうか?」
「え? 何を決めるの? というかなんで俺?」
「いえ、この拠点の名前ですよ。人が常駐する以上集落か村落の扱いになると思うのですが、その場合名称を決めておいた方が落ち着くと思うんです」
「なるほど… でも俺は名付けのセンスは皆無だと思うんだけど」
「まぁそう言わずに! ヒビキ様のおかげで私もこの歳になってからも楽しく商売ができているのです、是非とも考えていただきたい」
「は、はぁ… まぁちょっと時間をもらえる?」
「もちろんです、次にこの地に戻ってきた時に伺わせてもらいます」
なんてこった! 俺にこの拠点の名称を考えろだなんて…
まぁ確かに元魔術師団の中には家族ぐるみで移住してくる者もいるかもと聞いている、常駐というよりも住人になるという事だ。それだと名称はあった方が良いに決まっているよね。
「むぅ… 後でクローディアにも相談してみるか、グレイやアイシャではこの手の話は厳しいと思うからね」
とぼとぼと先ほどまで夕食を食べていた場所まで戻り、そして不自然な暗闇を発見する。
なるほど、バリアで囲った空間は外からだとあんな風に見えているのね。そういえば外から眺めるなんてやったことが無かったな… もう周囲が暗くなっているからあんまり違和感はないけれど、明るい内はどう見えているんだろうね、今度確認してみよう。
バリアで囲われていた部分を回り込むと明かりが漏れている、どうやら1ヵ所だけバリアを張らないで待っていてくれたようだね。まぁ全周張られていたら俺が入れないから、こうやっといてもらわないとね。
「主よ、戻ったか。では残りの部分を塞ぐのじゃ」
「ちゃんと挨拶しておいたから、夜が明けたら出発だな」
収納から4人分の敷物と毛布を出す。もちろんこれは俺とクローディア、アイシャとシフの分だ。グレイだけは預けているアイテム袋に自分の分を入れている、なんせグレイの分だけは特注だからね! 大柄なオーガですら収まってしまうほどの敷物と毛布だ、代替えが出来ないから自分で持たせている。
「フカフカ毛布!」
アイシャが早速転がり始める。シフも移動中の野営で慣れてきているとは思うけど、やはり毛皮の手触りを確かめるようにモフモフしていた。
「全員分のアイテム袋が欲しいね、手に入るかどうかは分からないけど」
「そうじゃの。私達が手に入れたのは偶然じゃし、買おうとしても売ってなければどうしようもないからの」
「まぁ俺が全部収納すればいいんだけど、俺がいない場合は大変だろうしな」
「確かにのぅ。魔境から拠点に輸送する場合は特にじゃな、大荷物では移動も戦闘も面倒じゃし」
「まぁアレだ、リャンシャンに着いたらギルドマスターにでも聞いてみるか。代金の代わりにミスリルを出してもいいしな」
「それも有りじゃの」
よし、明日からはまた移動の日々だ、早い気がするけどもう休んでしまおう。
長い昼寝をしたから眠れないかもなんて思っていたが、あっさりと意識を手放したのだった。




