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148 用事は済んだ! …はず

誤字報告いつもありがとうございます。

 グレイという屈強な護衛を連れて、クローディアは再び街へと出かけて行った。アイシャもベッドでゴロゴロするためか、ケルベロスの毛皮を敷きだす。

 まぁ割と高級な宿とはいえ、ケルベロスの手触りを知る俺達が納得できるようなベッドではないからな! これは仕方ない。


「シフー、ゴロゴロするからこっちに来て!」

「え? あの… 私は床で十分ですので」

「ダメ! ちゃんと休まないと働けないんだよ? 今出ていった2人が戻ってきたら夕食だから、それまではゴロゴロするの!」

「え? いえその…」


 アイシャが先輩面している姿は見ていてほっこりするんだが! しかしまぁ奴隷がベッドで寝るなんてあり得ない国らしいからな、ここは俺からもフォローしておくか。


「シフ、うちでは奴隷だからといって床で寝かしたりする事は無い。だって考えてもみろ? 腹を空かせて床で寝るような者に満足な仕事ができると思うか? 休む時はしっかり休んで動く時はガッチリと動く、これがうちのやり方だから覚えておいてくれ。その毛皮はフカフカなんだ、試しに転がってみなよ」

「は、はぁ…」


 おどおどしながら恐る恐るベッドへと近づく。

 しかしそのスローペースに待ちきれなくなったアイシャが手を引っ張り、その勢いでベッドへと押し倒す。


「どう? どう? すごいフカフカでしょー! きっともうこれじゃないと寝られなくなったよ!」

「ふわぁ! なんて手触り…」


 押し倒されたシフは無抵抗のまま、毛皮に顔を埋めて動かなくなる。いや、手は動いているね! 毛皮をニギニギしているよ!


「じゃあアイシャ、2人が戻ってくるまでシフをよろしくな」

「はいっ!」


 元気良く返事をし、そのままシフの隣に寝そべる。そして仕上げはオルトロスの毛布だ… 恐らくだがこの誘惑に耐えられる奴はそうそういないだろうな。



 日が陰り、薄暗くなってきた頃にグレイとクローディアは帰ってきた。時間的に晩飯時だからね、習慣的にお腹が鳴ってしまうんだよな。


「いやしかし、この匂いには慣れる気がせんな。ご主人よ、もうこの国を離れないか? 拠点に顔を出してシフの面通しをしてダンジョンに入ろうじゃないか」

「そうだなぁ… クローディアはどんな感じなんだ? 知りたい情報はどのくらい手に入れた?」

「ふむ、正直言ってそれほど情報は得られていないのじゃ。まぁグレイがいるから舐められた目で見られることは無かったが、やはりエルフは金にでも見えているのかもしれんの」

「なんというか、この国の常識には慣れそうもないな」


 しかしエルフは金に見えるのか、この国の人間には。

 でもアキナイブルー王国からそれほど離れているわけでもないのに、どうしてこんなに風習が違うんだろうね。各国で特性というか、習慣の違いは多々あるんだろうけどこれほど違うものなのか? 宗教が絡んでいるなら地球世界でもあり得る話だけど、この世界に来てから宗教の話は全然聞かないから盛んではないのかもしれないが。


「まぁ良いじゃろ。私もこの匂いには辟易しておるし、私の知るナイトグリーン王国と差異が無いのだけは確認が取れたので良しとするかの」

「差異が無かった? つまり100年以上前からこの国はこんな感じなのね」

「そうじゃの。まぁ周辺国も似たようなものじゃったが、アキナイブルー王国は変わったようじゃからな… 多少の期待はあったのかもしれんの。

 じゃがもういい、この国に力を持たせてはいかんという事が再確認できたから良いじゃろう。明日にでも移動をするかの、主よ」

「そうだね、俺もこの国には居たくないから賛成だよ。じゃあグレイの言う通り拠点に顔を出してみよう、ここからだと南下すれば着くんだよね?」

「そうじゃな。距離的には結構離れておるはずじゃから、10日前後はかかるじゃろう。最悪シフはグレイに担がせるしか無いの」

「まぁ仕方ないね、現状では長時間走れるだけの体力は無さそうだしね」

「うむ。話がまとまったところで夕食をお願いするのじゃ」

「そうだな! 腹が減っては落ち着かなくなってしまったからな!」

「よし、じゃあ晩飯にしよう」


 アイシャの隣で毛皮に顔をうずめながら爆睡していたシフを起こし、ハンバーガーをベッドの上に出す。そういえば兎人族って肉は食えるのかな? 俺の記憶にあるウサギは草食だったような気がするが… まぁ本人がいるのだから聞けば良いか。


「ところでシフ、食べられない物とかはあるの? 肉はダメとかそういうの」

「い、いえそんなことはありません、何でも食べられます」

「そうか、じゃあとりあえずメニューについては考えなくても良いな」


 何でも食べられるという事だから、とりあえずハンバーガーセットだな! 通常ハンバーガーとポテトとオニオン、それにナゲットを付ければ良いだろう。絶食に近い食生活だったろうから一気にたくさん食べると腹痛が来るかもしれないからね! 食べられそうであれば追加でおかわりを出そう。そして今後順番にハンバーガーを食べさせて、どれが好みなのかを確かめよう。

 やっぱり好みは人それぞれだからね。俺もテリヤキバーガーをこよなく愛するけど、たまに通常のハンバーガーが食べたくなるしな。野菜が好きならシャキシャキレタスのはいったテリヤキバーガーが好きになるだろうし、枝豆コーンサラダも好むかもしれない。

 だが、これらはあくまでも俺個人の偏見だから、実は肉食なのかもしれないしな!


 ポテトを食べて数時間寝ていたから、そこそこの体力は回復しただろうけどポテトの効果は10分… 夕食でもしっかりと食べさせて一晩ぐっすり眠れば、明日の行動もだいぶ楽になるだろう。



 翌朝、すっかり顔色の良くなったシフがそこにいた。無事だった右耳が中央付近からくにゃってしおれて前倒しになってはいるが、体調的にはかなり良くなっているのだろう。さすがはポテトフライだぜ。


「よし、じゃあさっさと王都から出発するかね。最初の目的地は拠点、その後についてはその都度考えよう」

「承知したぞご主人。まぁこんなか細い兎人族など軽いもんだ、いつでも背負ってやるぞ」

「体力的にヤバそうになったら頼むね、一応健康のためには歩いた方がいいから疲れるまでは自分の足で歩かせようと思ってる」

「うむ」


 夜が明けて2時間ほど経った頃、俺達は朝食を済ませて宿を出るのだった。もちろんシフは、昨晩の夕食に続き朝食まで出るとは思っていなかったらしく、相変わらずおどおどとしていた。

 うん、まぁ早く慣れてくれ。

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