表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/215

145 いやちょっと待て!

誤字報告いつもありがとうございます。

「んー… いやちょっと待て! なんて言うか不潔な街だな!」

「まぁの。見ての通りそこら中に奴隷がいるじゃろう、そやつらが用を足したいと言っても聞いてくれそうな気配はあるか?」

「全く無いな」


 つまり、奴隷達の大小便は垂れ流しという事なんだろう。


 ナイトグリーン王国の王都、街並みや建物はどこを見ても立派なモノだけど、いたるところにいる奴隷のせいで景観はひどい事になっていると感じる。しかもだ、奴隷の首輪だけならともかくほとんどの奴隷には鎖が繋がれている… 誰も彼も瘦せ衰え、ただ歩く事すらも困難な状態の者までいるのだ。どんな神経をしていたらこんな事を平気な顔で出来るんだ? この国ではこれが常識なのかもしれないが、俺とは決して相容れない国だという事は秒で理解したよ。


 日本で生まれ育った俺には到底理解できないが、少しは匂いとか衛生概念とかないのかね? 自分の住む町が汚くて臭いだなんてすっごい嫌だと思うのだけど…


「まずは宿の確保からじゃの。こんなんでも一応王都じゃ、人だけは多いから遅くなると宿は埋まってしまうのじゃ」

「そうだな。まぁそこそこ良い宿にしよう、安宿だと臭そうだ」

「うむ、賛成じゃ」

「賛成! ボクは鼻が良いからこの匂いは…」

「だよな、じゃあ宿を探そうか」



 宿を探しながら街行く人々を眺めてみる… まぁ活気はあるように見えるんだよ、臭いのに。でも街中でこんな臭いを発生させているんじゃ食事の時ちょっと嫌だなぁ… さっさと用を済ませて離れたいな。


 クローディアの提案で大通りから少し離れた場所にある宿をとりあえず2日取る、高級宿の中では中堅以下という感じかな? 貴族が泊まる感じではなく大手商人とかが利用する宿みたい。

 そして風向きにもよるんだろうけど意外と臭いが飛んできていなかった、これなら部屋で食事ができそうだな。


「さて、たったこれだけの時間でこの国の特色を知ってもらえたと思うのじゃ。嫌じゃろう? これがまかり通る国というものは」

「そうだね、国民もこれが普通だと思っている感じなのが特にね。これだと王侯貴族をどうにかできたとしても、変化は望めないまでは言わないけど時間がかかりそうだよね」

「まぁの。まぁ私達が魔王を討伐した後、大いに問題になるところじゃの。ギルマス… アルフォートといったかの、あやつがどれだけ働くかじゃな」

「いやぁさすがにギルドマスター個人の力じゃどうにもならないだろ。実家が貴族だって言ってたから、そこからアキナイブルー王国を動かすって事になるんじゃないか?」

「恐らくアキナイブルー王国を筆頭に周辺国で領土の取り合いになるじゃろうな。魔王がいなくなったとなれば、魔境は宝の山に見える事じゃろう… 安全な場所にいる奴がそう判断するはずじゃ」

「…………」


 ま、俺のイメージする王侯貴族もそんな感じなんだよね… 自分は安全な場所に居ながら「突撃」しか言わず、平民が何人死のうと自分だけに利益が出れば成功だと判断する。まぁ偏見だけどね!


「さて、では奴隷市場でも見に行くとするかの。グレイとアイシャは留守番をしていても良いと思うのじゃが、主はどう思う?」

「うん、俺もそれで良いと思うよ。グレイは体が大きいから色々と狭そうだし、アイシャには匂いがきつそうだからね。この宿屋は臭くないからおやつを出しておこうか」

「うむ、では留守は引き受けたぞご主人」

「ボクも留守番してる…」

「では主よ、匂いはきついと思うが行こうかの」



 グレイとアイシャを宿に残し、俺とクローディアは奴隷市場とやらを探しに行く。

 しかし本当に奴隷商売が盛んなんだな… 普通奴隷を扱う商人ってのはひっそりと商売しているもんじゃないのか? まぁこれも俺の偏見だけど… ああでも、アニメとかで奴隷オークションとかあったような気がするな! この国だったらやっていそうだな。


「私達4人にとって足りないものはなんじゃと思う? 戦闘をこなすパーティとしてじゃ」

「足りないもの? そうだねぇ… 前衛遊撃後衛と揃っているけどグレイは完全なアタッカーだよな、アイシャも遊撃を兼ねたアタッカーだしクローディアも… うん、防御する人がいないね!」

「その通りじゃ! 私達はそれぞれ攻撃力が高いからバランスが良く見えるのじゃが、防御に徹せよと言われても困ってしまうのが欠点じゃ。そこでグレイほどとは言わないが骨格の良いものか、防御支援魔法の適性があるものが良いじゃろう。

 まぁ才のある奴隷は呆れるほど高額じゃが、適性のある者は意外といるもんじゃ。その辺を狙って見てみると良いじゃろう」


 魔法ねぇ… クローディアは元々名のある魔法使いだったらしいけど、出会った時からステッキによる魔法ばかり使っているからこの世界の魔法ってあまり知らないんだよね。せいぜい拠点の防壁を作る時の土魔法?

 魔術師団とは最初のレベル上げの時にしか一緒に狩りをしていないし、攻撃魔法がどのレベルなのかはぶっちゃけ良く分からない! そしてさらに防御支援魔法とか言われてもね…


「一応言っておくが、主の持つステッキがこの世界では異常なのじゃ。あれほど少ない魔力で信じられないほどの高威力… 私の魔法概念が覆ってしまったのじゃ」

「あ、なんかごめん」

「支援魔法を使える者が増えればホワイトヒールステッキの装備者も決まるし、骨格の良い者がいれば盾役に… 攻め一辺倒ではダメじゃという事じゃな」


 ホワイトヒールステッキね… 実際の戦闘ではまだ誰も怪我をしていないため出番がなかったが、魔境に攻め入るとなればそういった配慮もしないとって事だね。ダンジョンで調子良く戦えていたからといっても魔境は森だ、前と後ろだけ警戒していれば良いって状況じゃないもんな。左右はもちろんの事、空からも来るかもしれないし地中からも… うん、そりゃ大変だ。


 なんて話をしていると、糞尿の匂いが猛烈にきつくなってきた。もしかしてここが奴隷市場なのか?


「着いたようじゃの… しかし売り物なのじゃから綺麗にしようとか思わないもんかの」

「全く同感だ。売った後はともかく売る前くらいどうにかしろよと言いたいね」


 まぁ俺の中ではそれ以前の問題で、まず人間を売ろうとするなよと。


 そして異様な空気が漂っているのに多くの人で賑わっている奴隷市場へと足を踏み入れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ