141 本題
誤字報告いつもありがとうございます。
「まぁなんていうか… ちょっと日を改めるよ、こっちでも相談が必要なんでね」
「おいおい、そんな事を言いながら街を出るんじゃないだろうな? 次はいつ戻ってくるかもわからないのに待てるわけ無いだろう。話し合いが必要なら別の部屋を貸してやる、そこで話をするがいい」
「いやいや、なんだか強引すぎないか?」
「お前達はこうでもしないとすぐに街から消えてしまいそうだからな、頼むから真面目に考えてくれよ」
「うー…」
この食い下がり… 俺達の今後の動きを察知しているように見受けられるな… 何をどこまで知っているのか? というか、ナイトグリーン王国に行ってどうこうって話は俺達4人しか知らないはずなんだけど…
「主よ、別の部屋を貸してくれると言うとるんじゃ、ちょっと場所を変えようかの」
「そうだな…」
そんな訳で会議室みたいな広めの部屋に案内される。狭い部屋よりも広い部屋の方が盗聴し難いんだそうだ… ギルドマスターがそんな事を言っていた。
「しかしギルドマスター、何か勘づいてるみたいな空気出してんだけど?」
「うむ。私達しか知らないはずの、ナイトグリーン王国を貶めようとしている策が読まれているように感じたのじゃ。なかなか鋭い奴なのかもしれんの」
「で、どうする? 適当にごまかしてこの街を出るか、深いところまで話さないでサクッと説明するか。そもそも俺達にだってまだ完全に決められない問題だからね、奴隷に関しては」
「そうじゃのぅ… まぁ魔境に入り、魔王は私達で討つつもりじゃからそれは確定なのじゃがの。まぁナイトグリーン王国と関連国が行っている奴隷商売については個人では難しいからの、まぁ情報収集する程度であれば伝えても問題ないじゃろう」
「ふむふむ、そして奴隷を買うと言えば良いのか? なんだか嫌悪していたが」
「それについては何も言わんじゃろ、なんせ主に買われた方が間違いなく安全なのじゃからな。そこは私が保証するのじゃ」
「うーん…」
「なんだか煮え切らないな、ご主人」
「グレイ、何か案があるのか?」
「すべて伝えてしまえばよかろう、勇者共に知られたところで我らを止められる手段は無いと思うぞ。奴隷に関しては俺も思うところはあるが、さすがに人数も把握できんほどの奴隷をどうにかできるとは到底思えんからな。
仮にナイトグリーン王国が破滅したとしても、現状奴隷にされている者は今までと同じように道具として扱われ、更に他所へと売り飛ばされるのが関の山だろう」
「そうなんだよなぁ… いっそ国を乗っ取っちゃうとかするか? ガラハドにでも王をやらせてさ、ガラハドなら元宮廷魔術師団長だし、王家のそばで国家運営とか見ているだろうしさ」
「それは難しいの。ガラハドとて結局はゴーマンレッド王の道具じゃったしの、細かいところは上手く隠していたと思うのじゃ。それにナイトグリーン王国乗っ取ったとしても、多数いるゴミ貴族が奴隷を捨てるとも思えん」
うん、なんだか話が脱線してきたね。
「で、本題なんだが?」
「ふむ、グレイの案は案外悪くないかもしれんの。どうせ知られたところで私達を止められるほどの力はないじゃろうし、私達の動きも察知されてはおらんようじゃしの。逆にギルドが勇者に関与しているか知れる良い機会かもしれん」
「なるほど… 確かに」
「じゃから魔境の近くにある拠点の事は伏せ、その他の情報をくれてやればよいじゃろう。なんなら私がギルマスに話をするか?」
「そうだね、俺が喋るとボロが出そうだし頼むかな」
「うむ、任せるのじゃ」
「お、話はまとまったか?」
「まぁの。ところでお主、名を聞いた事が無いのじゃが?」
「おお? そうだったか? まぁギルマスで通じるから言ってなかったかもしれんな。俺はアルフォート・ブルボ、一応アキナイブルー王国ブルボ伯爵家の三男だ。家を出たと言ってもそれなりに権限はあるんだぞ」
「ほほぅ、ブルボ家か… 聞いた事が無いのぅ」
「グハッ! はっきり言ってくれるなこのエルフは… ところでお前さん、実は名のある魔法使いだったりするんだろう? 俺もちょっと調べてみたんだが、100年以上前にクローディアという名のエルフが行方不明になった噂を聞いたんだが? しかも相当な凄腕魔法使いだったとか」
「ほぅ、良く調べたものじゃな… まぁ否定はせんが今は主と共にあるからの、そんな者の事は知らんと言っておこうかの」
「なるほどな。それで? 何を企んでいるんだ?」
「なぁに、そんな企むというほどでもないのじゃ。私もグレイもアイシャも所謂違法奴隷でな、不当に奴隷に墜とされた身じゃからの… 正直言ってナイトグリーン王国の事が大嫌いなのじゃ。じゃから主に指揮を執ってもらい、私達のパーティで勇者を出し抜き魔王を倒してしまおうという事じゃな」
「魔王を… 出来るのか? そんな事が」
「何を言っておる。ケルベロスですらそれぞれが単騎で倒せる実力があるのじゃ、私達の戦闘力と主の力が合わされば倒せん魔物などおらんのじゃ!」
「ケルベロスを単騎でだと? そんな報告は受けていないんだが?」
「言う必要が無かろう。私達はドロップ品目当てで連戦していただけなのじゃからの」
「む? そういえばケルベロスのドロップとは何だ? 一度もギルドに売っていないだろう?」
「まぁの。代わりにオルトロスの毛皮を出しているではないか、アレの上位版じゃと思ってくれればいいのじゃ」
「毛皮か! 毛皮なんだな!? 査定してやるから今すぐ出すんだ!」
あれれ? 結構真剣な話をしていたはずなのに、こうもあっさりとケルベロスの毛皮に釣れてしまったぞ? そういえばオルトロスの毛皮の時も、査定用にと出したやつ、いつの間にか尻に敷いていたなんて事を受付嬢に聞いた事があったな… 実は毛皮マニアなのか? ギルドマスターは。
「ま、話の続きじゃが、近々ナイトグリーン王国に行って奴隷商の現状を見てこようと思っておる。主もそうだと言ってくれたが、私達も違法奴隷に関しては思うところもあるのでのぅ」
「ケルベロスの毛皮… いや待て、ナイトグリーン王国に行くつもりだったのか?」
「そうじゃ。早ければ明日には出ようと思っておった」
「むむむ… さすがに国を出られては俺の名でフォローする事は厳しくなってしまうな。だがあの国の違法奴隷に関する情報は欲しい…
明日には出ると言ってたが、出る前にギルドに立ち寄ってくれないか? それまでに俺も考えをまとめておく。ギルドの名やブルボ家の名で何か出来ないかをな」




