139 冒険者ギルドリャンシャン支部
誤字報告いつもありがとうございます。
12日後、なんと俺達はリャンシャンに到着してしまった!
まぁね、荷物や資材を満載した馬車で1ヶ月の道のりだ… 速度的にはそれほどでもなかったもんな。まぁそれでもリャンシャンと拠点との距離感が分かってよかったと思っておこう。
「さて、真っ直ぐギルドで良いのかな?」
「そうじゃのぅ… 少し遠巻きに見てからが良いじゃろうな、何者かが張っておるかもしれんしの」
「いやいや、何者かが張っていたとしたらグレイを見て即バレじゃないか?」
「む? まぁそうかもしれんの… じゃが念のためじゃ」
「あ、はい」
グレイはでかい。身長は軽く2メートルを超えているため、普通の人間種の中に混ざると結構飛び抜けていたりする… それに筋骨隆々だしね! マントをしててもそのガタイの良さは隠せはしない。
まぁグレイにアイテム袋を持たせているから、自慢のミスリル製大剣はそれにしまっているからそれほどでもないかも?
街に入り、周囲をキョロキョロと見渡してみたけど怪しい雰囲気の人はいないようだね… まぁ勇者関係者が怪しい格好をしているとは思っていないんだが、誰かを探すような行動は怪しく見えるんじゃないのかという偏見の下、そんな人を探してしまったのだ。あっ! まさに今の俺がそう見えるのか!
まぁなんともないようなのでギルドへと向かう。
「あっ! ヒビキさんにアイシャちゃん! お久しぶりです!」
「やぁどうも…」
いつもの受付嬢さんグレイとクローディアを飛ばしちゃったね… まぁこの人いつもアイシャの事を撫でくり回してたから、アイシャ成分が切れていたんだろう。なんだかんだと3か月以上か? この街を空けていた期間は。
「そういえばヒビキさん達が来たら呼ぶようにギルマスから言われてました、ちょっと聞いてきますのでお待ちください」
そんな事を言い残すと、パタパタと受付から離れていった。
しかしギルドマスターからの呼び出しか… まぁミスリルの納品も滞っていたし仕方がないとは思うけど、他にもなんかありそうだよな。例えば勇者関係者からの圧力がーとかね。
「久しぶりだな、一体どこに行ってたんだ?」
「まぁちょっとね。それよりもミスリルを今回も多めに納品したいんだけど、予算の方は大丈夫?」
「おお、それは大丈夫だ。なんせこっちも日が開いたからな、しっかり回収は済んでいるから… 7個までなら大丈夫だ!」
「んじゃそれで…」
挨拶もそこそこに、ギルドマスターには街を離れていた間の行動を探られたね。まぁミスリルを待っていたんなら当然の事かもしれないが、まだギルドを信用できていないんだよな…
「しかし良いタイミングで戻ってくるなお前達は… どこかで監視でもしていたのか?」
「ん? 良いタイミングとは? 俺達は用事の途中だったけどそろそろミスリルを納品しないとって来たんだけど」
「本当にか? ちょうどお前達の姿が見えない間に勇者軍の軍師と言われる奴が来ていたんだ、まぁ数日前に街を出た事は確認されているんだがな。それを見て戻ってきたのかと思ったぜ」
「いやいや、本当に偶然だね。でも勇者軍の軍師が来てたって? 一体何しに」
「何しにって… お前達を勧誘、もしくは何かしらのいちゃもんを付けて勇者軍に引き込もうとしていたに決まってんだろう! ナイトグリーン支部からの報告じゃ、魔境への侵攻は全然進んでいないようだからな」
「そうか、まだミスリルの恩恵はできていないんだな」
「そりゃな! ミスリル製の武具を作ると言ったって、そんなすぐには出来ないだろう。ミスリルで量産品を作る訳にもいかないしな… そんな事をしたら予算がいくらあったって足りないって」
ふむふむ、勇者は調子良くないようだな。
「なんだかんだとミスリルの金を払っているのはナイトグリーン王国だ、向こうの予算の状況はギルドには流れてこないからなぁ… しかしナイトグリーン王国だけにミスリルを集中させるのはマズいんじゃないかという意見も出ている」
「しかしそうか、予算はナイトグリーン王国が出していると」
「つまりアレじゃな? ナイトグリーン王国はその予算を確保するために、お家芸である違法奴隷を集め出すかもしれんという事じゃな」
「お、おう…」
するりとクローディアが口を挟んできたが、確かにその通りなのかもしれない。手っ取り早く金を稼ぐには、やはり違法な事が一番早そうだしな…
「そういえばお前は奴隷だったな、一応聞くが… ナイトグリーン王国でか?」
「そうじゃ。まぁ私の場合は仲間じゃと思っておった奴にハメられて売られたんじゃがな」
「俺もそうだな。顔見知りと酒を飲みに行ったんだが、目が覚めたら奴隷になっていた。まぁ一服盛られたんだろうと思っている」
グレイも口を挟んでくる… しかし仲間とか顔見知りとかが騙したり一服盛ったりしてまで知り合いを売ったりするのか?
「まぁ私の場合はそれなりな地位に就いておったんでな、その地位が欲しくて仕方なかったのじゃろうよ」
「俺はどんな理由でやられたのかはっきりわからないが、恐らくどこかで借金でもしていたんだろう。まぁ見つけ出して殺してやるがな」
「私もじゃ。もちろん主が寿命を全うしてからの話じゃがな」
「なるほどな。まぁナイトグリーン王国の臭い話は噂で各地域に流されている、そうそう大っぴらにはやらないだろうが資金源がそれなら… まぁなんだ、ちょっとミスリルの売りを制限してみるか」
ギルドマスターも何か思うところがあるのだろうか、もう過去の事になっているけどこの3人も奴隷だった訳だし、この街に来た時も首輪はついていた。
このリャンシャン含めてアキナイブルー王国では、奴隷はあまり良く見られていないとの事… ギルドマスターも同じ意見なのだろうかね。
「まぁとにかく、また少し街を離れるけど忘れないようにミスリルは届けに来るよ。ちょっと遠くに行く予定もあるから次は3ヶ月後とかになるけど良いかい?」
「おう、さっきも言ったがナイトグリーン王国にはミスリルの販売を制限するよう働きかけるつもりだ。それに今回7個卸してもらえばそれくらい余裕だろう。
ところで… 街から離れて一体何をやっているんだ? 面白そうな話であれば俺も一枚噛ませてほしいんだがな」
おお? なんだか今日のギルドマスターはグイグイ来るね、これはどうしたもんだろう。
 




