137 リャンシャンに行ってみようか
誤字報告いつもありがとうございます。
「じゃあこれで決まりだな」
「うむ、妥当なところじゃろう」
「えっと… ウーロン茶にポテトフライ、オニオンフライに枝豆コーンサラダ。魔術師団だからこんなもんで良いと思う」
「うむ。ウーロン茶で胃腸を管理しポテトフライで体調管理。そしてオニオンフライで魔力の回復を促進させて枝豆コーンサラダで魔力を高めるという事じゃな。まぁ欠点はどれも時間制限があるというところじゃろうが、常用していけば体がその状態に慣れてしまうから自然と魔力も高まるじゃろう」
「うんうん。そして俺はスキル経験値をウマーってするんだ!」
提供する食べ物の選定は終わった。
しかし! まだ非常に重大な問題が残っている! それは出した食べ物をどうやって保存しておくかという事だ。ウーロン茶だって紙コップで出てくるものだからな… 樽とかにドバっと入れられたら楽なんだけど、紙コップからの手作業となると… すっごい面倒かも。氷の問題もあるしね…
「確かに面倒じゃが、氷は抜いておくしかないじゃろうな。やや薄めの風味がさらに薄れてしまうのじゃ」
「そうなんだよねぇ… 樽に入れたとしても、何日持つもんかもわからないし… まぁ胃腸を整えるバフがついているんだから腹を壊したりはそうそうしないと思うけど」
「要検証じゃな、生贄を探してこないといけんのぅ」
「物騒なこと言わないで!」
「まぁ冗談はさておき、なんならもう1人奴隷でも買ったらどうじゃ? 人出不足は私達にも言える事じゃし、主に買われるのならその奴隷も不幸にはならんと思うのじゃが」
「ええ? また奴隷かい? 俺個人としてはねぇ…」
「仕方ないじゃろ、主には秘密が多いのじゃから。それに今ならリャンシャンダンジョンでレベルも一気に上げれるしの、悪い話では無いと思うがの。何なら今から奴隷の売っていそうなところに行くかの?」
クローディアはそう提案してくるが… まぁ分かるよ? 秘密というか、知られたくない事は結構あるもんね。俺が召喚された異世界人だという事とか、ハンバーガーは美味しくて強力だとか… でもなぁ…
「ん? 奴隷を売っていそうな場所? そういえばアキナイブルーでは見かけなかった気がするね、奴隷商会は」
「そうなのじゃ。ナイトハルトも言っていたが、アキナイブルーでは奴隷の売り買いは禁止… とは言い切れないが、悪しき事じゃと認識されつつあるらしい。じゃからカヤキス商会も奴隷の商売を廃業したと言っておったしの」
「え? じゃあどこで?」
「それはな… ナイトグリーン王国じゃ。正確に言うとナイトグリーン王国を含めて西にある国じゃな。更に言えばその地域にある人間種の国がという事じゃ」
「ああ… やっぱり奴隷とかって制度を使っているのは人間ばかりなんだね?」
「そういうわけでは無いのじゃが、使用目的が違うのじゃ。エルフの国も獣人の国も、犯罪者には罰として鉱山だったり危険で苦しい作業をするよう命令が下されるのじゃ。犯罪奴隷と言うやつじゃの。
じゃが人間種だけは奴隷狩りという事をやらかす者がおり、誘拐などをして商人に売り飛ばすなんて事が横行しているのじゃ」
はぁ… 俺も人間なんだけど、なんだかそんな事を聞いていると同一種と思われたくないねぇ。
「そんな訳で、主に買われる事ができたなら、今以上の苦痛は無くなるという事じゃな。ナイトグリーン王国の王都に行けば、それなりの数の違法奴隷商会があるじゃろう。人間種以外の奴隷はほぼ間違いなく違法奴隷じゃから高価になってしまうがの」
「うーん… まぁ買うかどうかは分からないけど、どちらにせよ金が必要だって事だね。ちょっとこっそりリャンシャンに戻ってみようか、勇者の関係者に見つからないようミスリルを納品しに」
「そうじゃの。ミスリルは単価が高いからの、奴隷代金くらいすぐに稼げるじゃろ」
やけに新規の奴隷を買う事を推してくるクローディア、何か考えがあるのだろうか。でもまぁこの世界においてクローディア以上に物を知っている知り合いはいないから、ここは従っておいた方が良いのかもしれないな。
「よし、じゃあ樽の購入も含めて一度リャンシャンに戻ってみようか。グレイがいると目立ってしまうが、置いていく選択肢は無いな」
「当然だろうご主人よ。前衛の俺がいないでどうするつもりだ? そもそも留守番など嫌に決まっているだろう!」
「そうじゃろうな、ハンバーガーも食えなくなってしまうしの」
「うむ!」
あっはっは! これはもうグレイの餌付けは完了しているね! まぁ他の肉もちょいちょい食べているようだけど、やはり味付けに問題があるからな。あっさり塩味は俺も好きだけど、こってりな味付けも好きなんだよなぁ…
そんな訳で急遽、リャンシャンに向かう事になった。
まぁこの拠点内では未だに倉庫作りなどの建築作業が続いているため、ナイトハルト一行はそうそう動かないだろう。魔術師団の護衛もいるし、そういった面でも大丈夫だろうしね。
「と、いう事でリャンシャンに行ってくるよ。せっかく忠告してくれたのに済まないが」
「いえいえ、ヒビキ様方がたとえ相手が勇者の関係者だとしても遅れはとらないと思っております。しかしミスリルですか… よろしければインゴットを2~3個預けてはくれませんか? ギルドよりも高値で売って見せますぞ」
「ん? 仲介してくれるって事?」
「はい。ギルドでは確か… 1000万ゴールドでしたか? 私に任せて頂ければ1500万から2000万は引き出せると思います。もちろん手数料は頂きますが…」
「うーん… まぁインゴットの2~3個だったら俺にとっては誤差の範囲だし、ちょっと頼んでみようかな」
「お任せください!!」
やたらと食い気味だったナイトハルトにミスリルのインゴットを3個渡し、手数料は売り上げの2割という事でお願いした。1500万で売れたとしても、ギルドに卸すよりも儲かる設定だね。まぁギルドには約束しているから卸すのは止めるつもりは無いけど、これからの事を考えればお金は無いとね…
ナイトハルトは商人だから、儲けが出ないとなれば撤退するだろうし。それに元魔術師団もこちらから頼んだ事だから、金払いの悪い真似はしたくない。うん、稼がなきゃだな!
とりあえず俺達には準備という概念はあまり無いので、翌朝早速出発しようと思う。グレイもアイシャも嫌そうなそぶりを見せなかったし、この拠点にもう2ヶ月以上留まっているから暇だという事もある。
「よし、じゃあ明日から旅になるけどよろしくね」
3人が頷いてくれたので、明日以降に備えてのんびりとするかね。職人たちは働いているけど…
 




