135 どうするか…
誤字報告いつもありがとうございます。
昼食は焼き肉パーティとなった。グレイもアイシャも目をキラキラさせているので俺達も一緒に頂く事にする。もちろんサラダ等サブメニューはこっそりと出すけどね!
「しかし主よ、今後は主のスキルの事も色々と考えなければならんようじゃの」
「そうだね。俺もハンバーガーに付随するバフの事は言う気は無いけど、サラダやポテトなんかはここのメンバーには食べさせてやりたいからね」
「うむ、回復系の付与がついておる物はどうにかしておいた方が良いじゃろう。特に魔術師が多いから、オニオンフライなんかは重宝するじゃろうな」
「うんうん。まぁ後はどうやって食べ物を作り出せるのかを伝えるかなんだが…」
本当にね、何も無いところからスキルで食べ物が出てくるなんて普通なら怖くて食べられないでしょう? 余程空腹で耐えられない状況や、以前のように先にスキルで出しておいて冷えた物を渡すんならともかく。
特にこの辺では薬草なんかは採れるみたいだけど、ポテトもオニオンも枝豆もコーンも自生していないからね… どこで見つけたんだって話になるだろう。
「いや、それはもうスキルじゃと開き直って伝える方が早い気がするの。何より一度食べてしまえばその美味しさに陥落するじゃろ」
「陥落って… その言い方!」
まぁ実際、胃腸を整えて寄生虫なんかを駆除できるソフトドリンク。体力を回復しつつ多少の怪我も治ってしまうポテトフライ。魔力を徐々に回復させるオニオンフライは定番として食べられるようにしておきたい。もちろんスキルの都合上、俺がいないと話にならないんだけどね。まぁそこはアイテム袋が他にあれば、そこに多少保管しておくという形になるだろう。
実際問題最近スキルレベルが全然上がっていない… いくら大食いのオーガがいるとはいえ4人パーティなら大量消費とはいかないからな。ここは他の皆の健康のためにも、俺のスキルレベルのためにも数多く出せる環境にしておきたいというのが本音だ。
ただスキルの特性上強力なバフがついてしまうから、あまり大きな声では言えないんだよなぁ… だからこそメニュー決めは慎重にやらなくては!
SIDE:キノ・コノヤマ
「本当に見つからないな… どうやらタケノの言う通りすでにこの街にはいないのかもしれん」
最初は悔し紛れにガセ情報を言ってきているのかと思ったが、ここ数日実際に調査してみてそう思い立った。
ギルドにも人を付けていたが発見されず、街に居る時に泊まっている宿も探し出したが2ヶ月近く前に出て行ってそれっきりだという… もう確定ではないか。
しかしそうなるとどこに行った? ギルドによると、ミスリルは定期的に持ち込んできていたというが最近は来ていないという。まさか自分達用にミスリル製の武器を作りに? 確かにこの街でミスリルが出たなどというのはここ最近だ、ミスリルを扱える鍛冶師がいないのかもしれん。
「するとどこだ? ミスリルを扱える鍛冶師がいる町… この国の王都か? だがそれほど有名な鍛冶師の事など聞いた事も無いが…」
大体有名どころの鍛冶師は、鉄などが多く排出される場所にいるはずだ。鍛冶で有名なドワーフ種もいるにはいるが、大体はここから魔境の反対側にあるドワーフ種の国にいるだろう。
まさかそこに向かった? いや、武器を作るだけにしては遠すぎる場所だ、無いとは言い切れないがほぼ無いだろう。なんと言っても馬車で移動をすれば1年以上かかるからだ。
「コノヤマ様、定期連絡が来ました。各所異常無しとの事です」
「そうか… 決断をしなければいけないようだな」
「は?」
「いやなに、やはりタケノの言った通りすでにこの街から出たと結論付けて、本国に帰還するべきだという事だ」
「では詰めている者達を?」
「うむ、呼び戻してくれ。明日は帰還の準備をし、整い次第勇者様の元へと帰還する」
「はっ!」
いないものは仕方がない、これ以上この俺がリャンシャンなどという田舎にいること自体が無益なのだ。本国に戻ったら連中を追うための調査隊を結成し、探させれば良いだろう。
「うむ、そうと決まれば… 酒だな」
翌日、長距離移動用の資材を買い集める。まぁ非常食も当然購入するが、普通の食材を購入しても腐る前に消費して別の町で補給をすればいいだけの事… あんな不味くて硬い食い物など冗談ではない。
だがスープ用の水は無くてはならん。もちろん飲料としても重要だが、野営地に必ずしも水場があるとは限らないからな… 俺の体を拭く水は常になくてはならないのだ。
「よし、とりあえず準備はこれで良い。では明日の朝には出発する、各自遅れないように集合せよ」
「はっ! 伝えておきます」
やはりこんな田舎ではつまらんな、早いところ本国に帰還してタケノの処遇について考えるとするか。
SIDE:冒険者ギルドリャンシャン支部、ギルドマスター
「ギルマス! 例の勇者軍の奴が街を出ていったぜ、これでようやく落ち着けるな」
「ようやくか… コノサト家の者がいなくなったと思えば、すぐに違う奴が来ていたからな… ああ、コノヤマ家の者だったか? まぁどうでもいいか」
「だけどこれでヒビキ達が戻ってくるんじゃないか? 消えた事に気づけばだが」
「まぁどうだろうな… しかしよく察知したもんだな、この面倒臭い勇者の関係者がうろつく事を」
「いや、なんでもコノサト家の奴と一悶着あったらしいぜ? それで姿を隠したのかもって皆で話してたんだ」
「おい、まさかそれをコノヤマ家の連中に知られてはいないだろうな?」
「大丈夫だってギルマス! 俺達冒険者はああいった連中が大嫌いだからな、金も握らされてもガセネタ掴ますぜ!」
「お前、それは詐欺だろ」
しかし、ヒビキ達が忽然と姿を消した時には焦ったな… だがまぁ考えてみれば居なくなった理由はすぐに分かる、そろそろミスリルも納品してほしいしな。
とはいえ、ヒビキ達がどこに潜伏しているのかはまだ分かっていない… これが一番の悩みの種だ。勇者の関係者がいなくなったことにすぐ気づいてくれればいいが、そうでない場合いつ戻ってくるのか予想すらできない状況だからな。
「せめて一声あってくれれば良かったんだが、まぁギルドのナイトグリーン支部のせいで情報が筒抜けになっているんじゃないかと思われているのだろうな」
「そうかもしれないが、あの面子だ… あれだけ目立つオーガがいるんだからその内情報も入ってくるって」
「そうだといいがな…」
とりあえず近い内に戻って来てくれよ? ミスリルの納品が滞ってしまえば勇者の関係者に付け入る隙を与える事になってしまうぞ?
 




