128 お留守番
誤字報告いつもありがとうございます。
3日が過ぎ、外壁と言える部分はすっかり完成していた。視察に来たはずなのにね…
さすがに今回のメンバーでは、門を作る事ができず外注する事になる。全員でこの場を離れれば、たちまち占拠されて奪われてしまうというから外に出ていくメンバーを選出する。
「ぶっちゃけ俺達4人が残って場所取りしておくよ。出入り口用の隙間に俺達がバリアを張っていれば、誰も入ってくる事は出来ないからね」
「それが良いじゃろう。私達であれば、盗賊が何人束になろうと相手にすらならんからの」
「わかりました、ではそれでお願いします。我々は急ぎ王都に戻り、職人とその他資材を持ち込んでくる予定です。
視察だけのはずでしたが思いの外良い場所が見つかり、作業も進んでしまったのでここを手放すわけにはいきませんので」
「分かったよ。王都に行って用事を足し、それからまたここに来るとなれば1月半くらいかな?」
「そうですね… 長期に渡りご迷惑をおかけするのは心苦しいですが、この場所さえしっかりと整えば今後も予定通りに進む事でしょう」
「そうだね、護衛の経験にもなるし良いと思うよ。俺達は俺達で魔境を覗いてみたりするから大丈夫だ、急ぎつつも忘れ物の無いようにね」
「承知しました」
こんな感じで俺達以外の人員は、来た道を戻りアキナイブルー王国の王都に向かって旅立った。
「これで倉庫の目途も立ったわけじゃな… ふふっ、思ったよりもすんなりと事が進んで行くのぅ」
「そうだな。だけどこういう時こそ落とし穴はあるもんだ、油断しないようにな」
「もちろんじゃとも」
「それよりもご主人、魔境を覗きに行くと言っていたが?」
「ああ。ただ待っているだけじゃ暇だろう? かと言ってここを放置して全員で魔境に入る訳にもいかんから、まぁいつもの通り順番でだな」
「では今日から早速入ってみても良いか?」
「それは構わないけど… でも実際魔境ってどんな感じなの? 中で迷ったりするもんなの?」
「まぁ迷う事はあるだろうな。こういった森では、森ならではの歩き方があるものだ。まぁ一言で言えば、エルフを連れて行けば迷う事は無いな」
「マジで?」
確かに俺の中にあるエルフのイメージには合致している… ラノベとかでもエルフは森の住人だとか言われているもんね。
「まぁそうじゃの、確かに私たちエルフは森の歩き方に熟知しておる。しかしそうなると… アイシャが留守番となってしまうのじゃが?」
「ボクはご主人様が残るんなら平気だよ! おやつもらえるし、えへへ…」
「まぁそうじゃろうな、主はアイシャを甘やかすのが好きなようじゃから」
「む? だが俺達も弁当とかは欲しいぞ?」
なんだか騒がしくやっているね、でも楽しそうで何よりだ。
しかしすでに俺が森に入るメンバーから外されているようなんだが、そこに異議を唱えても良いのかな? でもまぁ良いか、この場所がバッチリ整えばいくらでも入れる訳だしね。
「では主よ、アイテム袋に弁当を頼みたい」
「OKOK、デザートも付けちゃおう」
「「おおおお!」」
そんなやり取りの後、グレイとクローディアは魔境へと侵入していったのだった。
まぁ昼食分とおやつしかアイテム袋に入れてないから、晩飯時にはちゃんと戻ってくるだろう。
「ご主人様! ボクたちは何をするの?」
「どうしようか… とりあえず門をつける予定の場所をバリアで塞ぎ、ゴロゴロでもするか?」
「するー!」
はいゴロゴロに決定! なんと堕落的な… だがそれが良いんだよね!
まぁなんだ… ゴロゴロするのも良いんだけど、やっぱり飽きちゃうよね。暇だし何かしらの工作でもやってみようかねぇ。
工作すると言ったって、この集落みたいな場所には何も無い… 全周を囲う木製の防壁に1つだけ建てられた小屋しか無いのだ。そして手元には木材しか無いという事実! 木工するしかないじゃんね!
「さてアイシャ、この何も無い場所に何を作れば良いと思う?」
「んー………。やっぱり森の方を良く見れるような見張り台?」
「見張り台かぁ、確かに必要だし重要だね。まぁ物見櫓ってやつがあれば良いって事だよな」
「それがあれば遠くまで見れるし、森だけじゃなくても見えるかも!」
「まぁそうだろうね。でも実際それを作るとなれば、俺みたいな素人だと手が出せない領域かもしれないなぁ」
でもまぁ暇だし作ってみるか。
使うのは木材だけだしね、足りなくなればまた刈ってくれば良いんだよ!
さて、その物見櫓なんだが… 俺の記憶ではジャングルジムみたいな物のてっぺんに人が乗れるような台がついているって感じなんだけど、実際どんなんだったっけ。まぁ要は柱を4本立てて、倒れたりねじれたりしないよう筋交いを付けてたんだっけ。
ああでも、ぶっちゃけ2人じゃ無理な作業じゃないか! 柱を2本立てたらそれで2人使っちゃう…
あっ! 防壁に立てかけてやれば良いのでは? いや待て、まず最初に地面に寝かせてやれば良いんじゃないか! なんとまぁ、普段やらない事とは言え、こんな簡単な事になかなか気づけないなんてダメじゃんね。
「よし! じゃあ手ごろな長さの木材を見繕ってこようか」
「はいっ!」
アイシャと2人、乾燥済み木材の山から長さを合わせて4本取り出す。多分同じ長さであろう木材で作られた防壁だが、地中になんぼか埋めているので防壁の上から覗けるくらいの高さにはなるだろう。何ならその上に屋根付きの小屋を乗せたりするかもしれないからね!
地面に2本の木材を並べる、その長さは5メートルほど… 木として生えている時は気にならなかったが、横に倒してみると結構長く感じるね。
それを2メートル間隔で2本置き、別の木材で真横に括りつけて固定する。ちなみに固定具なんて存在しないから、木と一緒に集めていた蔓を使うんだが意外に硬くて結ぶのが難しい… でもあれ? これってもしかすると上に乗せる小屋を先に作らないとダメなやつかな? まぁ良いか、初めての作業だし練習という事で!
横棒を1メートル間隔でつけ足していき、なんとか1面が完成した。
これはアレか? 2面分先に作っておいてから立ち上げて組めば良いのかな? まぁ寝かせたままでは難しいだろうからきっとそうなんだろう。よし、同じものをもう一つ作ってしまおう。
ヤバイ、なんか楽しくなってきたぞ! アイシャも楽しそうに蔓を使って木材を結んでいるし、どんどんやっていこう!
 




