127 勇者様も諦めない
誤字報告いつもありがとうございます。
拠点到着2日目。
夜が明ける直前に、昨日収納していた木材を数ヵ所に分けて出しておく。これで魔術師たちがそれぞれ乾燥作業をすることだろう。さすがに1ヵ所にまとめたら振り分ける時に力自慢が必要になるからね、魔術師の腕力じゃ大量の木材を配置するのは厳しいだろうと判断した。
まぁ魔術師達の指揮はクローディアが執っているから、そういった作業も難なくこなすんだろうけど楽である方が良いに決まっているからね!
これからの動きは朝食の時に打ち合わせをするんだろうけど、まぁまた俺達は木材集めかな? さすがにこれだけじゃ足りないだろうからね。
防壁用に立てる木材、倉庫の壁になる木材、宿泊用の建物に使う木材… うん、全く足りる気配がないね!
色々と聞いていると、魔術師が防壁建設予定地に魔術で穴を掘り、長さを調整された木材を立ててから埋めていくという事だ。まぁかなり原始的だけどこれが一番手っ取り早いとの事、後から石材などを使って外側に正式な防壁を作るという事らしい。
ま、俺も現代日本の土木工事に詳しいわけじゃないからな、ここは口を挟まずに現地のやり方に従おう。
「主よ、今日も主とグレイには木材の収集をやってもらいたいのじゃ」
「いいよ。何か難しい事をやれって言われるよりも楽で良いからね」
「そうかの。そして今日はアイシャを私が連れて歩きたいのじゃが、構わないかの?」
「アイシャの出番がある訳ね?」
「うむ。アイシャには乾燥を済ませた木材の運び出しをしてもらいたいのじゃ。アイシャはグレイほどではないが腕力が高いからの」
「見た目は少女なのにね… まぁ効率のいい方法で進めようよ」
「うむ、承知したのじゃ。ではアイシャよ、今日は私と一緒じゃ」
「うんっ!」
トテトテとクローディアの後を追いかけていくアイシャ… あれで腕力が目当てで連れて行かれたなんてとても信じられないな。まぁレベルとステータスのある世界だ、本当に見た目は何の参考にもならないんだよな。
そう考えると、勇者の関係者が言っていた「そんな弱い奴」というのは何を基準に言ったんだろうね… 不思議だぜ。
「じゃあグレイ、今日も木材を切り倒すとするか」
「分かったぞ。俺もご主人と同じで難しい事を言われても困るからな、単純作業なら全く問題は無い。しかも剣を振るえる仕事というのはどんな事でも修練に繋がるから良いものだぞ」
「あれも剣の修練になるのか… 物は考えようって事なんだな」
そんな訳で今日も木こりだぜ!
SIDE:勇者カール・イング・ナイトグリーン
「勇者様、これ以上タケノに任せても時間の無駄かと存じます。ダンジョン踏破パーティの誘致も上手くいかず、ミスリルゴーレムのいる階層まで到達も出来ないのであればリャンシャンにいても意味はないのでは?」
「その通りだな… しかしどうするか、その冒険者パーティがいないとミスリルが産出できない… しかしそのパーティメンバーは欲しい…」
「勇者様は4人の冒険者パーティの中で優先順位はありますか?」
「どういう事だ?」
キノの奴… 急に優先順位などとは、一体何を考えているのだ?
「いえ、ギルドからの情報ではミスリルを集めながら他の素材も持ち帰ってくるとの報告がありました。もしそれが本当なのであれば、4人の内2人を引き抜いてもミスリルの産出は継続されるのでは… と、愚考いたしました」
「ふむ、なるほど! 向こうは2人でもミスリルを持ってこれるのなら特に問題は無いわけか。いや、むしろこちらが得をするな! ミスリルを得ながら戦力も得る… そう言いたいのだな?」
「はい。ギルドの情報によると、パワータイプの近接オーガ、魔法使いのエルフ、狐人族の者はあまり情報はありませんが、獣人であるというのであれば身体能力は人間とは比べ物にならないかと。しかも狐人族の特性で一部の魔法まで操れる… まぁこれは話しか聞いた事はありませんが」
ふむふむ、まぁ単純な戦力で考えるのであれば全員欲しいところだ。だが黒髪の男は特に情報が無いようだし、すでに主人でないというのであればいらんだろう。ふむ…
「そういう事ならば、魔法使いのエルフと狐人族の女を引き抜こうか」
「なるほど、了解いたしました。では、私が動いてもよろしいですか?」
「いいだろう、許可する。一応タケノには戻るよう手紙の手配を頼むが、なんならキノが直接指示を出してもいいぞ」
「はっ!」
キノは頭はよく回るが戦闘には不向きな男だ、策が決まっている状況であれば少しの間くらいいなくなっても問題はあるまい。
それにしてもエルフと獣人の女か… しかも獣人は希少な種族として名高い狐人族、勇者である俺のモノにするにふさわしいだろう。まだどちらも抱いた事は無いからな、良いコレクションになる事だろう。後は他のエルフの連中に気を付けて、俺がエルフの女性をモノにしたとバレなければ大丈夫。
「まぁエルフというのは性格はともかく見た目だけは良いからな… キノの奴が連れてきたとして、どうやって俺のモノにするかを考えようか。何なら騙して奴隷の首輪をつけても良いしな」
フハハ! やはり時代は俺を必要としているようだな、レベル100を越えているであろう女が2人も手に入るとは。
いや! まだ完全に手元に来たわけではない、ここで油断をすることは危険だな。キノならば上手い事連れてくるだろうとは思うが、全ては俺の前に来てからだな。
しかしエルフと獣人か… フハハハハッ!
SIDE:キノ・コノヤマ
「クハハッ! これでようやくタケノを引きずり降ろしてやる事ができるぞ! 全く… ちょっと武が立つだけで勇者様に重宝されやがって」
だがリャンシャンに訪れてからの失態の数々… これでもう部隊長などという役職から外されても文句は言えまい。後は最前線で死ぬまで戦っていればいいのだ! まぁその場合、手柄はこの俺と勇者様のものになるがね!
「よし! これよりアキナイブルー王国の都市リャンシャンへ向かう! すぐに出立の準備をしろ!」
クハハハッ! タケノの絶望する顔を見るのが楽しみだな。勇者様はああ言っておられたが、帰還命令の手紙は出さずに行き、直接この俺が勇者様の命令を指示してやろう。あ~楽しみだ!
しかし勇者様も… エルフと獣人の女を選ぶとは。まぁ古来より英雄は色を好むと言われている、女を与える事でモチベーションが上がるのであれば、それを用意するのは配下の役目。
おこぼれももらえるしな!
 




