125 また移動だね
誤字報告いつもありがとうございます。
「お待たせしました。やはり思っていた通りこの集落内には倉庫を建てられるだけの場所は無いですな」
「まぁそうだろうね」
「そういった訳で作戦その2を検討します。アキナイブルーへの物流を考えてもう少し北側に拠点ごと新築しようと思います」
まぁ木材等は魔境からなんぼでも持ってこれるからね! この世界では環境破壊だのといちゃもんを言ってくる団体もいないだろうし良いんじゃないかな。
それに何もかも一から作るなんて… なんか楽しそうじゃん!
ただ… この集落よりも北に移動するという事は、勇者達が拠点にしているノリシーオとかいう場所に近づくという事なんだ。まぁ無いとは思うけど不安要素があるとすればそれかな。
「とりあえず魔境産ですが肉類を補給していますので、それが終了次第出発したいと思います」
「分かったよ。じゃあ待ってるね」
そうでしたそうでした、普通は補給しないといけないもんだよな! 自分に縁がないからと思って忘れていたよ。ついさっきだってクローディアにも言われたのにな。
「そのような事になるとは予想通りなのじゃ。じゃがこれでいいと思うの」
「ほほぅ? その心は?」
「他に邪魔者のいない場所を作れるのじゃ、確かに最初は厳しいが形になれば快適になると思うの」
「まぁそりゃそうだよね。先人に気を使ってアレコレやるよりも、自分の陣地を構築してしまえば隠したい事があっても大丈夫だもんね」
「うむ。それにこちらにはグレイがおるからの、あ奴がおれば木材の運搬などあっという間じゃよ。アイシャだって見た目にそぐわないほど腕力はあるしのぅ… 私を含めた魔法使いは切り倒した木材の乾燥や地均し、防壁を作る際の穴掘りに最適じゃしの。ナイトハルトめ… 最初からそれが目的だったのかもしれんの」
「なるほど! そう考えると都合の良い面子が揃っていたという訳か。まぁでもそれくらいじゃないと大店の店主は務まらないんだろうね」
「そうじゃの」
まぁ結果的には良い方に進んだんじゃないかなと思っている、俺達もあまり他人には見せたくない事はあるからね。
よし、そろそろグレイとアイシャを呼び戻すかね。
剣を振るっていたグレイと走り回っていたアイシャに来てもらい、出発に備えながら今後の事について話をする。
「というわけで、新天地に向かうんだそうだ。そこでは戦闘以外の仕事がいっぱいあると思うけど…」
「問題無いぞご主人。俺が動けばすぐに終わるのだ、やる事をやってしまえば少しだけ魔境を見に行くくらいの時間は作れるだろう」
「ボクも働くよ! ご主人様の役に立つよ! グレイと一緒に魔境にも行きたい!」
「まぁ離れているけど見えるところに魔境があるからねぇ… 暇を見て行く分には問題は無いよ」
「うむ!」
よし、どうやらグレイのモチベは上昇中のようだね! アイシャも魔境には興味があるみたいだし、グレイと一緒であれば外縁部であれば何も問題は無いだろう。
しかしそうか… ダンジョンと違って魔物を倒したら解体しないといけなくなるのか、ヤバイな、俺そんな事出来ないんですけどね!
「大丈夫だ、解体くらい俺にでもできる事だから任せてくれ」
「そうじゃの、解体できんと肉が食えないからな… グレイなら最初に覚えていそうじゃな」
「当たり前だろう、肉は俺の好物だからな」
「野菜も食えと主に言われておるじゃろう? バランスを考えよ」
「むぅ…」
クローディアが先生みたいになってるよ… そしてアイシャ、なぜそこで目を背けるんだ? やっぱり野菜よりも肉が良いのか? まぁ分かるけどね。
「買い付けが終わりましたので出発したいと思います」
ナイトハルトとカヤキス商会の人が戻ってきたのでいよいよ出発だな、
「そういえばこの辺の土地って勝手に開拓をしてもいいもんなの?」
「そうじゃのぅ、昔から何も無い土地では開拓した者がその地の所有権を主張するものじゃから良いのではないかの?」
「そんなもんかい。まぁでもそっちの方が都合が良いか」
「うむ、そうでなくては困るの。まぁ中には開拓された土地を奪い取るような下種な貴族もいるようじゃが、ナイトハルトであればその辺も上手く躱すであろうよ。伊達に王都で店を持ってはおらん」
「デスヨネー。まぁ奪い取ろうって者がいたとしても、ちゃんと相手は見るもんだからね」
そんな訳で長旅の末に辿り着いたコッソメ集落… ほんの数時間で離れる事になった。
SIDE:勇者カール・イング・ナイトグリーン
「勇者様、またしてもコノサト家の者が後れを取っているようですね」
「ん? なんだキノか、もう話を聞いたのか」
「はい。しかしながらすでに奴隷解放を行なっていたとは… 相手方には知恵のある者がついているようですね」
「そのようだな、しかし何者が後援しているのかは不明なのだよ。相手は異種族、奴隷であればどうにでもできたんだが違うとなれば話は別だ」
「はい。オーガにエルフに獣人… どちらも敵対するのはよくありません」
「だろう? だからこちらにつくよう口説くという報告があったのだが続きが来ないのだ」
「まぁコノサト家の者であれば無理かもしれませんね… なにせあの家の者は武力一辺倒のところがありますし、知恵の必要な事に関しては全くの無力と言っても良いでしょう」
「おいキノ、そこら辺にしておけ。全くお前ときたら、どうしてコノサト家が絡むとそうムキになるのだ? 先祖を辿ればルーツは同じなのだろう?」
「はい。だからこそ許せないのですよ勇者様。同じ先祖を持ちながら、あのような脳筋しか育てられないコノサト家が」
「まぁあまり感情的にはなるなよ、脳筋だって俺に利するならいくらでも使うつもりだからな」
「もちろん分かっています。不肖キノ・コノヤマ、あの脳筋を効率良く運用できるよう策を練っておきます」
「うむ、しっかり頼むぞ」
「はっ! それでは失礼いたします」
ふぅ… どうしてあの二家は無駄な対立をするのか、俺には理解できないね。ルーツを同じくする貴族、言うなれば普通に縁戚だというのにあの対立具合… 同族嫌悪と言うやつなのだろうか。
しかしまぁコノヤマ家とコノサト家の対立は以前からある事、そして特に当代の次男同士のいがみ合いが非常に顕著だ。顔を合わせるたびに2人で戦争をしているようだからな… キノ・コノヤマとタケノ・コノサトは。
俺は勇者としてこの2家を上手く操る事だけ考えていれば良いか。




