121 コカトリスと戦ってみたが…
誤字報告いつもありがとうございます。
「そもそも私達はこのダンジョンにてミスリルを採集し、最前線で戦う者達を十分支援しておるではないか。何が不満じゃというのじゃ」
「そうだな。それに勇者直属の部隊というならば、こんな遠くのダンジョンで何をしている? 早く魔境に戻れ」
おーい、グレイもクローディアも追撃はそこら辺にしておいてくれよ。この人顔が真っ赤になってきちゃったじゃないか!
「そもそもなんじゃ? 奴隷を探すのであれば奴隷商に行くがよい、私は主の寿命が尽きるまでそばにいると決めておるのでな」
「俺もだな」
「ボクも!」
「ぐぬぬ…」
ヤバイなこれ、収拾つかなくなってきてるけど逃げた方が良いかもしれない。これ以上この人に関わると明日の出発に支障が出る! 多分絶対に!
「じゃ、じゃあ俺達は急いでいるから失礼するよ。ほらっ! 皆行くぞ!」
「うむ、時間が惜しいのじゃ」
真っ赤な顔でプルプル震えているなんとか子爵家の人を置いて、ダンジョンに向けて駆けだした。あのプルプルが収まったらきっと大騒ぎされるに違いないからね!
しかしまぁクローディアの予想通り奴隷を物扱いして取り上げにきた時にはイラっとしたが、クローディアの煽りに心底びっくりしてしまったよ。まぁエルフにとっては人間族の貴族とかは関係ないかもしれないが、俺がびっくりするから止めてもらいたいね。
「ご主人よ、あの男は追って来ていないぞ」
「うむ、思ったよりも小者だったようじゃな。あの程度の言葉で顔を真っ赤にしおって… 修練が足りんのじゃ!」
「いやいや、あまり煽らないでね?」
「まぁ良いじゃろ。では午前中は私が主と共に80階層からコカトリスを狩る」
「俺は90階層からオルトロスだな」
「ボクは100階層からケルベロスを倒してからオルトロス!」
「じゃあ昼飯時になったら集合ね、何度も言うけど無茶はしないように」
「ご主人もだぞ。今日はコカトリスと戦うというのだ、手加減無しで斬りつけるがいい」
「もちろんわかっているよ、痛いのは嫌いだからね。じゃあまた後でね」
3組に分かれてダンジョンに入る。
午前中のパートナーはクローディア、今回俺がコカトリスと戦う時にサポートしてくれるとの事… まぁピンクマジカルステッキを手にしているところを見ると、危ないと判断されたらマジカルビームが飛んでくるって事だね!
「しっかし本当にクローディアの言った通りになったな… この後どう動いてくると思う?」
「ふむ、そうじゃの… いくら勇者と言えども罪の無い他国の者を勝手に拉致して行くという行動はしないじゃろう、勇者の名に関わる事じゃからな」
「うんうん」
「となるとじゃな、冒険者ギルドのナイトグリーン支部に働きかけて、私達のランクをCくらいに上げてくるじゃろうな。ミスリルの採集とか褒賞に値する活動はすでにしておるからの」
「なるほど。そして指名依頼とか強制依頼とかを勇者の名前で出して、魔境に引きずり込むって算段か?」
「じゃのぅ。とは言え、今日すぐにでもナイトグリーン王国に文を出しても折り返してくるには1ヶ月以上はかかるじゃろ。その間に魔境での倉庫予定地の視察を済ませ、この街を離れて向こうに拠点を置くべきじゃの」
「うーん… そうなるとナイトハルト氏に頑張ってもらわないといけないな」
「最悪は倉庫のアレコレが決まる前に移動してしまっても問題は無いじゃろう。バリアで囲えるし敷物も毛布もバッチリじゃ、そして主がいるから食べ物の補給の心配もない… 良いと思うがのぅ」
「そうだねぇ、それが一番安全かな? まぁさっきの子爵家がどうのって人があれだけ煽られた後で、落ち着いて行動できているかだよね… まごついてまだ俺達にちょっかいかけてくるようであれば時間は稼げると思うけど」
「それは無いじゃろ。なにせ明日には街から出るのじゃ、いなくなったと思えば頭も冷えて行動すると思うがの」
「それもそうか。ダンジョンに入っていると思ってくれれば、更に動きやすくなるって訳だね」
「うむ。じゃから明日からの行動は慎重にするべきじゃな。なんなら私達は先に街の外に出て、後からナイトハルトと合流するというのも手じゃな。あ、コカトリスがいるのじゃ!」
「よし! いっちょやってやるか!」
今日の俺の目的であるコカトリスの単独撃破… 多分イケると思うんだよね! 俺の身体能力だってレベル90台のものだし、近くで狩りを見ていたからコカトリスの行動パターンだってすでにお見通しさ!
駆け寄ってきてからの嘴によるツッツキ攻撃だろ? それを回避すればお尻から飛び出している尻尾のような蛇による噛みつき攻撃。
グレイやアイシャであれば、コカトリスに先手を打たせる事も無く首を切り捨てるけどそれはさすがに怖いよね。
「よし来い!」
コカトリスが俺を目がけて走り寄ってくる。そのまま勢いをつけたまま嘴を突き出してくるので回避しながら首元の柔らかいところをミスリルの短剣で切り裂く!
ガキンッ!
「あれ?」
「主よ、何をしておるのじゃ! 剣の技術が無いのに斬りつけてどうするのじゃ、せめて突くのじゃ!」
「あ、ハイ」
やべ! 蛇の口が迫ってきてるじゃないか、これは飛びのかないとね。お尻についている蛇にも目があるからね… ギリギリで回避すると誘導弾のように追ってくるんだよ、あー面倒臭いな。
それから戦う事数分…
「もうダメじゃ、主は撤退せよ!」
「えー? もうちょっとで倒せそうなのに?」
「ダメじゃ、危なっかしい… マジカルビームじゃ!」
「あー」
俺の相手をしていたコカトリス… 詠唱付きマジカルビームであえなく昇天となりました。
「やはりダメじゃな。せめてもっと浅い階層で剣の技術を磨かんと、ミスリル製の武器を使ったとしても斬れぬのじゃ」
「やっぱり鈍器で殴った方が良かった?」
「そうじゃな、そっちの方がまだいけたかもしれん」
うーん… コカトリスの攻撃は見えているし躱せているけど、やはり武器を扱うという事は難しいって事なのか。俺としては自分の腕力と素早さで斬れると思っていたんだけどなぁ… 残念。
「やはり主は後方で支援しているのが一番じゃ! 心配せんでも主の敵は私達で倒すから身の安全だけを考えるのじゃ」
「えー? なんか格好つかなくない?」
「良いではないか、それぞれが出来る事をすれば良いだけじゃ。主は後方支援、危なっかしいから前に出てはダメじゃな」
あちゃー、前線に立つのを禁止されてしまった… 無念。




