120 タケノ・コノサト参上!
誤字報告いつもありがとうございます。
1ヶ月が経った、そんな訳で明日にはナイトハルト一行と一緒にいよいよ魔境へと向かうんだが… うん、どんな所なんだろうね。
この1ヶ月、カヤキス商会の資金繰りのために俺達はオルトロスの毛皮集めを重点的にやってきた。まぁ俺がアイシャと一緒にミスリルゴーレムというのは変わらないんだが、グレイとクローディアに二手に分かれてもらって狩りをしていたって感じだね。
一方が100階層に転移してケルベロスとオルトロスを狩り、もう一方が90階層に転移してオルトロスだけを狩る。そしてその際元魔術師団のメンバーのパワーレベリングも並行してやってきた。
そのおかげで元魔術師団の平均レベルは60を越え、レベルアップによる身体能力が向上してそれなりに近接の出来る魔術師が育っていた。
魔術の方も魔力が上がったからか、使用できる魔術の回数が増えたと喜んでいたな…
ガラハド氏もやはり師団長という事で、他の師団員よりも一回り多めにレベルアップ! 指揮の執れる戦闘員という扱いにされている… これはクローディアだけがそういう扱いをしてるんだけどね。
このレベルアップに伴い、師団員のほとんどがダンジョンでの狩場を変えてオークなんかを狩りだしたそうだ。まぁオークはお肉がドロップするからね! 後は稀に棍棒とか。
オーク肉は需要も高いし、大量に持ち帰ってきても価値が変動しないのが嬉しいね。持ち帰って自分達で食べるという選択肢も出るし、かなり有用な素材だ。
それで、魔境への出発を明日に控えた俺達はというと…
「ご主人、今日は明日以降のためにコカトリスの肉を収集する事を勧めるぞ。ご主人のハンバーガーだけではナイトハルト達にスキルがバレてしまう可能性があるからな」
「グレイよ、それはお主が食べたいだけではないのか? まぁ主のスキルを教えるにはまだまだ信頼は足らんと思うが」
「じゃあそうする? ミスリルの在庫は結構あるし、何なら俺もコカトリスを狩ろうかな」
「むぅ… 主も戦いたいと? まぁコカトリス程度であれば、戦闘職でなくとも問題は無いと思うのじゃが心配じゃのぅ」
「大丈夫大丈夫! 俺にだってミスリル製の武器があるんだ、作ってもらったのに一度も使わないなんてもったいないだろう?」
グレイはお肉をご所望のようだ。まぁ俺も割と好きなんだけどね!
ハンバーガーも好きだけど、たまには違うものをって気分はどうしてもあるもので… これが贅沢ってやつなのね。
「では時間が惜しい、早くダンジョンに行くのだご主人」
「分かったよ、じゃあダンジョンに行こうか」
「うむ!」
朝もはよからダンジョンへと向かっていく。なんだかもうこの行動が当たり前になってきているね、まるで大学に通っていた時のような感じも少しだけするんだ。でもまぁアレか、暇を持て余すよりも充実していると言えるんだろうね。
「おいそこの冒険者! ちょっと待て!」
ん? 朝から何を怒鳴っているんだ? というか、怒鳴る対象は俺達の事か?
「とうとう見つけたぞ、お前がヒビキとか言う冒険者とその奴隷だな? 我らは勇者様に使える騎士であり、魔境侵攻部隊の部隊長を勤めるコノサト子爵家が次男、タケノである!
この度勇者様のお言葉により、お前の持つ奴隷3人を魔境攻略のために献上せよとの事だ。喜ぶがいい、お前も魔境攻略どころか魔王討伐に貢献できる事を!
さぁその奴隷の契約書を差し出し、契約者の変更に応じるがいい。これはお願いではなく勇者様からの命令だ!」
「はぁ? 奴隷って誰の事ですかね?」
マジか!? マジで本当に冗談ではなく奴隷の接収に動いてきたのか!
いやぁ怖いわぁ… しかしクローディアの危惧していたことが本当に起こってしまうとは、その慧眼には恐れ戦いてしまうな。
つい反射的に言い返してしまったが、なにやらドヤ顔をしたまま懐から何かの書類のようなものを出している。アレに勇者からの命令とかが書いているのかな?
チラリと目線をクローディアの方にやると… ガハッ! ニンマリと良い笑顔でいらっしゃいますね! 読みが当たったからなのか、クローディアの笑顔なんてレア物が見れてしまったよ。
「奴隷が誰だと? そんなもの見れば分かる… えっ? 首輪はどうした!? 勝手に外すことはできないはずだぞ!」
「勝手に外すなんてしてませんって、というか奴隷から解放されてもう1月にもなるんですよ? 今更何をってしか思えないんですがね」
「ええ? 一体どういう事なんだ?」
なにやら狼狽えているけど… 本当今まで何やってたんだ? この人は。冗談抜きですでに1月経っているんだ、ちょっと情報収集すればすぐに分かっただろうにね。
「い、いや! 奴隷から解放されたのなら丁度いい。おいお前達、こんな弱い主人に仕えていてもつまらないだろう? もう奴隷じゃないのだから富と榮譽のために勇者様に仕えるがよいぞ、もうその男に強制されなくて済むのだから!」
「何を言っとるんじゃ? 私は私の意志で主と一緒にいるのじゃ、別に何かを強制された事など一度も無いのじゃがな」
「うむ、ご主人は俺達の恩人だ。嫌々従うどころか嫌がられても付きまとうぞ」
「ずっと一緒で良いって言ってもらえたから、ボクもずっと一緒にいる!」
「な、何を馬鹿な事を! こんな何もできない男のどこが良いというのだ!」
あれれぇ~? いつの間にか俺は何もできない奴って事になっているぞ? まぁ実際にそうなんだが、それは俺が出張るよりもこの3人が動いた方が効率が良いからであり、3人が俺の事を心配して前に出るなと言ってくるからだ。決して何もできない訳じゃないやい! 全く失礼だな。
なんちゃら子爵家とか言ってたから下手に出てたけど、さすがにこれはね… 勇者一派の質の悪さが良く分かるね。
「しかしなんじゃ、勇者の関係者というのは品がないどころか見る目も無いとはのぅ」
「うむ。まさかご主人の力を見抜けぬとはな… まぁ知らない方が良い事も世の中にはあるという事だな」
「ご主人様はすごいんだよ!」
「まぁそんなに煽るなって。とりあえず俺達はダンジョンに行きたいからこれで失礼しますよ」
「ま、待てっ! もう奴隷などと関係ない! オーガとエルフと獣人、この3人は一緒に来てもらうぞ! そして勇者様のために働くのだ! どうだ、光栄だろう? 世界平和のために戦えるのだ、これ以上の誉れは無いぞ」
「お断りするのじゃ!」
「拒否だな」
「無理!」
あれ? もうこれヤバくないか?
 




