114 クローディアが張り切っているんだが
誤字報告いつもありがとうございます。
「ヒビキ様の事、実は以前から知っておりました。もちろんその姿を拝見するのは初めてでしたが、噂はかねがね聞いておりました」
「噂?」
あれ? 俺って噂になるような事してたっけ?
「主よ、恐らくダンジョンの事を言っておるのじゃろ」
「あー! なるほど!」
「つきましては、ヒビキ様達が集めてくる素材を買い取りたいと思っております。もちろんギルドよりも高く買い取りますよ?」
「それは当たり前じゃろう。ギルドはそこから利益を乗せて各地に売り捌いておる、ギルドの買い取り価格は最底辺じゃからの」
「当商会も近々リャンシャンに出店しようと思っておりました故、リャンシャンで最高峰と言われる皆様方と契約が出来れば… お互い上手くいくと思うのです。当然まだ店舗の方がございませんが、皆様方との契約が取れればすぐにでも取り掛かります」
うーん? 確かにギルドよりも高値で買い取ってくれるなら、これから金がかかるからちょうどいい話ではあるんだが… なんかタイミング良すぎないか?
「主よ、ここは私が話を進めても良いかの?」
「え? クローディアが?」
「うむ、もしかすると今後のためにもなるやもしれん」
「そうなの? じゃあ任せようかな」
クローディアに何か考えがあるんだろうな… まぁその内容はさっぱりわからないが、今まで俺達が不利になるような話は一度もなかった。まぁ話を聞きつつマズそうなら口を出そう。
「ところでダンジョン素材を買い取るとの事じゃったが、通常の魔物素材の買い取りはどうなのじゃ?」
「もちろんあるのでしたら買取りはさせていただきます。ギルドの買取よりも高くさせていただきますが、物によっては買い取れない物がある事をご了承ください」
「ふむふむ、では例えばじゃな… 魔境の素材が手に入るとすればどうじゃ? 今ではナイトグリーン王国でしかまともに流通していないと思うが、それらの素材を持ち込んだらどうじゃ?」
「魔境の魔物素材ですか… 正直に言えばアキナイブルー王国まで品物が来るまでに値段が高騰してしまいますからね、普通に買い取れるのであれば大歓迎でございます」
「そうかそうか。主よ、これは素材の買い取り契約をした方が良さそうなのじゃ! 魔境に進出した時に考えられる資金不足が解消できるのじゃ!」
「ああなるほど! ちょっと前に言ってたやつだな?」
そっかそっか! 魔境に行って魔王とやらを倒すとなった時、当然道中に現れる魔物も討伐する事になる。それらの素材をどうするかって話があったもんな。
その素材をどこに売るかってところで話を打ち切ってたはずだが、その買取りをこのカヤキス商会にやってもらうという事だな?
「皆様方は魔境へ行くのですか?」
「今ではないが、その内向かう事になるじゃろう。なにせナイトグリーン王国の勇者殿からの勧誘がしつこくての」
「勇者から勧誘を受けているのですか? それは素晴らしい誉れですな!」
「何を言う、全然誉れでも何でもないのじゃ。あ奴らは主を最前線に送り込もうと企んでおる、主を取り込もうと画策しておるに決まっているのじゃ!」
おおう、クローディアがなにやら憤っているんだがどうした?
「それで私達は、勇者の配下に入らず我らのみで魔王を討伐してしまおうと思っておるのじゃ。そうすればナイトグリーン王国周辺は平和になり、たとえ勇者と言えどこちらに何も言えなくなるからの」
「なるほど… まぁ私どもはただの商会です、素材があれば買い取りそれを売る… ただそれだけです。魔境の素材は大歓迎である事は間違いありません」
これは… 勇者と敵対するかもしれない状況であることは理解したって事かな? その上で買い取り大歓迎と。
ハハッ、ナイトハルトと言ったっけ、さすがは商会主だな。売り上げが最優先だと言っているようなものじゃないか! 金の切れ目が縁の切れ目というけれど、それが続いてる間は友好関係を維持するって解釈で良いのだろうな。
でもそうなると、リャンシャンへの出店は急がない方が良いかもしれないな。いつ動くかは不明だけど、近いうちに必ず魔境へと行くつもりなんだ… 店が立ち上がった時には俺達がいないっていうのは大問題だろう。まぁまだ予定すら立っていないがね。
そんなこんなを話し合い内容を詰めていくクローディア、ナイトハルトもあれこれ確認しながらメモを取っている。
「しかしそうなると、魔境の近所に拠点を設けないといけませんね。輸送用の荷馬車と人材は当商会で出すとしても常に待機させるには厳しい状況。なので当商会で倉庫を作り、そこに素材を集めて頂き当商会で運び出すという事でどうでしょう」
「確かにその方が間違い無いの。魔物の皮などはすぐにでも処理しないとダメになるからの、そういった場所が出来るのであれば環境としてはやりやすく、更に儲けも出しやすいの」
「そちらの方で信用できる人材はおりますか? さすがに全てを運営するには人手が足りないと言わざるを得ません」
「まだ確定はしとらんが、魔術師を何人か動かせるようになるはずじゃ。そ奴らとも打ち合わせをせんといけないのぅ」
ああ、ここで魔術師団員の出番になる訳ね? 今はダンジョンで鍛えているはずだから身の安全を守る戦闘力はあるとして、なんだったら荷馬車の護衛とかでも活躍してくれそうだな。
魔術師団と言えども全員が戦闘を好む訳じゃないだろうし、護衛だったり素材の管理だったりであればやりたいというものもいるかもしれないしね… まぁこれもガラハド氏と相談だな。
「では、私も一度リャンシャンへと出向きましょう。リャンシャンでの出店の事もそうですし、その魔術師のリーダーとの話し合いには参加しないといけません。
現状ではリャンシャンダンジョンで狩りをしているのですよね? それらの素材も出来れば買い取りたいですしね」
「そこは程々に頼むのじゃ、一応リャンシャンのギルドは友好関係にあるからの。まぁ現状ミスリルがメインじゃから問題ないかもしれぬが」
「ミスリルですか!? それは是非とも我が商会でも扱いたい素材ですね!」
「後はアレじゃ… オルトロスの毛皮なんぞもあるのじゃぞ」
「オルトロス! うわさでしか聞いた事のない魔物ではないですか!」
クローディアとナイトハルトの話し合いはなんか盛り上がっている。
そこでふと背後を気にしてみると… ソファーに腰を掛けたグレイと、グレイの膝を枕にして寝そべるアイシャの姿があった。




