108 アキナイブルー王国の王都に到着
誤字報告いつもありがとうございます。
少々急いだ結果、3日と半日が過ぎた頃には王都と思われる街の防壁が視界の先に見えてきた。だけど今からでは夕暮れ前の到着は厳しいかもしれない…
「ま、予定よりもかなり早いし適当に進んだら野営だな」
「うむ、それが良いじゃろ。バリアもあまり人目に付かん方が良いと思うしの」
なんと言いますか、食事の心配が無いから補給が必要無い。バリアの安全地帯に加え、ケルベロスの敷物とオルトロスの毛布があるから宿にも泊まる必要が無い… とくれば、当然町の位置に合わせて休息をとる必要もないわけで、これ程早くに辿り着いたという訳だね。
まぁ都市間にある大小さまざまな町は、馬車を基準に無理の無い距離感で作られるらしく、急ぎ気味で進むと明るい内に到着しちゃうんだよね… 貧乏性の俺は時間がもったいないという理由で進む事を選択、他の皆もそれに同意してくれたというわけだ。
「それで、明日の昼前には王都に入れると思うけど、首輪を外せそうな奴隷商人? 当てはあるの?」
「あるにはあるのじゃ。ただ… その奴隷を扱う商会は私が売られた場所じゃというだけじゃ」
「マジか!? それは気分悪いんじゃない?」
「別に構わぬ。奴隷の首輪が枷になるかもしれん時じゃ、早急に外すという方が大事じゃしの」
しかしそうか… あの街がクローディアが売られた場所なんだ。
でもあれ? クローディアが奴隷にされたのってずいぶん昔の話かのような言い方をしていたと思うけどどういう事?
「うむ、確かに人間の寿命から見るとかなり昔の事になるの。もう100年以上は前の事じゃからな」
「でもそれじゃその商会が残っているかは分からないんじゃ… 人間で100年と言えば、大体二世代は代変わりしてるくらいだよね。後継ぎがボンクラだったらもう閉店している可能性もあるって事だな」
「それはあるかもしれんがそこは王都じゃ、代わりに台頭している商会もあるはずじゃ。多分な」
多分って… でもまぁその通りだな、王都と言えば国で一番の都会のはず! きっと同様の店があるはずだ!
そんな訳で夕暮れ時までのんびりと歩き、暗くなるのと同時に道から外れて安全地帯を構築。まぁこの距離なら明日の昼前には余裕で着くだろう。
翌朝、いつもの習慣で夜明け頃に自然と目を覚ます。いくら早寝をしているからってこれほど早起きになるとは… 日本にいた頃には考えられないね! まぁ日本にいた頃は夜遅くまで起きてたりするからな、朝は目覚ましが無いと起きられなかったのが噓のようだ。
朝食を済ませて準備を整え、バリアを解除して改めて王都へと向かう。
しかしあれが王都か… やはり今まで見た中では一番大きな都市だな、当たり前か。
「そういえば、王都に入る時は混んでたりするもんなの? 行列ができるとか」
「そうじゃの、朝一番であれば結構並んでいるらしいのじゃが今からであればそれほどでもないじゃろう」
「ほぅ、つまりそこそこは並ぶんだね」
まぁこれも仕方のない事だ。王都というくらいだから国で一番重要な拠点ということだからな、入場者や危険物のチェックはしっかりとやるとの事。王家を含む重要人物が暮らす街だから警備が厳しいのは当然の事だ、これは安全と言われた日本でもやっている事だからね。
なんて思ってた時がありました。
予定通り昼前には王都に到着し、十数分並んだところで自分の順番が来て、身分証である冒険者証を見せる事で簡単に王都に入る事ができた。グレイ達奴隷は所有者の道具として扱われるので入場税はかからないのはリャンシャンなどの街と同じだった。
「なんか簡単に入れてしまったな」
「王都の中心部に向かってまだ検問が2ヵ所もあるからのぅ、平民街にはこんなもんじゃ。貴族街に入るにはかなり厳しいチェックがあると聞いておるがの」
「ああなるほど、確かにその方が街は栄えるか。そりゃそうだよな」
クローディアは記憶にある街並みと、現在の街並みに差異がないかをチェックするという。グレイはそういった事に関心が無さそうで、ドンと構えているのだが…
「おおお! さすがは王都だな! 街の質も規模もリャンシャンとは比べ物にならないな!」
「すごい人ばっかり! はぐれたら絶対迷子になっちゃいそう!」
俺とアイシャは全開でお上りさんだった。
「主にアイシャよ、そんなはしゃいでおるとスリに目をつけられてしまうのじゃ、少し落ち着くのじゃ」
「あ、ハイ」
「うむ、色々と思い出してきたの… こっちじゃ」
クローディアに先導され、王都の中を歩き出す。
しかしさすがは王都、リャンシャンではあまり見かけなかった人間以外の種族の姿も結構見るんだよね。日焼けした健康的な肌とはとても思えない黒っぽい肌をしたエルフとか… あれがきっとダークエルフなんだな? そして小さめの三角の耳に細長いしなやかな尻尾を持つ獣人… うん、多分猫だ。
どうも王都には人間6割獣人3割、それ以外の種族が1割といった感じみたいだな。しかしクローディアの同族であるエルフの姿は無い…
「それはの、エルフは自分達だけの国を興しておるからじゃ。余程外の世界に関心が無い限り、国から出ようとする者はまずおらんのが現状じゃ」
「そうなのか。エルフの国ってどの辺にあるんだ?
「ここから見れば、魔境を越えた向こう側じゃの。大きく遠回りせんとこの国にはたどり着けんから特にエルフは少ないのじゃろうな」
「なるほど…」
この辺ではエルフは特に希少種という訳か… だからこそ奴隷に落とされた時、この国へと連れてこられたのかもしれないな。その方が高く売れるとかって理由で…
獣人の方はリャンシャンにも結構いたが、ここまで多くの種族は見れなかった。結構いろんな種族がいるもんなんだな… 獣耳も多種多様であり、俺なんかじゃとてもじゃないけど種類なんて分からないものが多い。犬っぽい耳もいればたれ耳もいて、ノルウェージャンフォレストキャットみたいな毛先がとがったような耳もある。あ! うさ耳も発見したぞ! やばいなこれ、見てるだけで時間が潰せそうだ。
「着いたぞ主よ、確かこの店じゃ」
「お?」
クローディアに言われ、ようやくキョロキョロとさせていた視線を前に戻す。するとそこには大店といっても差し支えの無い老舗があった。




