105 とりあえず初日は終了
誤字報告いつもありがとうございます。
夕方、アイシャの腹時計によると、いつもの夕食時間の1時間くらい前だという時間帯に俺達は待ち合わせ場所である転移陣の部屋に来ていた。そしてそこで失敗に気づいてしまったのだ。
「ああ、別にダンジョンに泊まる訳じゃないんだから、最後の待ち合わせはダンジョンの外でも良かったのか!」
「う、うん… グレイ達は一度1階層に戻ってからここに来るから面倒だったかも」
アイシャもなんかやってしまったという顔をしている。しかしまぁ今頃気付いてしまったんだから仕方がないね! ここは開き直り、明日から最後は1階層って事にしよう!
今日の戦果は程々だ。合計8回ミスリルゴーレムと戦い、ミスリルのインゴットのドロップは3個だった。まぁ武器を揃えるって事になれば鉄が必要になるからね! むしろ現状では鉄のインゴットが出てくれた方が効率的だよね!
よし、そういう事にしておくか。
ケルベロスの毛皮を敷き、座りながら他のメンバー達が戻ってくるのを待つ。隣にアイシャが座っているのでここぞとばかりに頭を撫でまわし、ふさふさの毛並みを堪能しておこう。
アイシャの尻尾もフサフサモフモフで触り心地よさそうだけど、髪の毛も同様にフサフサなんだよね。高めの体温と合わさって癒されるわぁ~。
まぁアイシャも撫でられるのは好きみたいで、されるがまま俺の方に寄りかかってくる。そういえば宿での休憩中、何気にクローディアに抱えられて撫でられているもんな… きっとクローディアもこの撫で心地の良さに癒されていたのだろう。
そんな事をやっているとグレイ達が転移陣から現れた。
今回選ばれたのは魔術師団の中でも上位の者達だと聞いてたけど、朝と違い昼よりも自信に満ち溢れた顔をしている。きっとレベルアップに伴って魔力とかが上がっているのだろうね… いいなぁ魔術。
そしてそれに合わせたかのように81階層組も戻ってくる。
「ヒビキ殿、今日の体験は非常に素晴らしいものだったと言えるだろう。昼の時点で35だったレベルが40になっている!」
「なるほど、さすがに午前中よりは上がらなかったけど40台には乗ったんだね」
「うむ。まぁ他の者はまだ40台には上がっていないが、それでも今日だけで10以上もレベルが上がっている。さすがにオルトロスに勝てる気はしないが、普段の狩場ではすでに物足りなくなるだろう」
「まぁ一気に狩場の難易度を上げないように気を付けて、まずは上がったレベルに体を慣らす事からだね」
「もちろん承知している、ここで自惚れていたら意味が無いからな」
うんうん、思った通りパワーレベリングの効果は抜群だったようだな。俺もこうやって育ち、時折街の外に出てどれだけ体が動くもんか試しているし。
さすがに漫画のように、ドアを開けようとして破壊するなんて事は無いけどね!
そして一般人の組の方は、こちらもある程度予想通りのレベル35平均だった。上がり方が90階層組と似たようなものなのは、単純に倒した魔物の数だね。コカトリスの方は見つけやすく、クローディアの魔法ならではの高速狩りだったせいでもある。
今回ドロップしたオルトロスの毛皮は俺達で回収するけど、コカトリスの肉については1個1個が大きいので分割して持ち帰ってもらう事にする。貯金を切り崩しての生活みたいだし、宿生活の人も結構多いそうだから粗食でやり繰りしている家族もいるそうな… まぁ肉でも食ってくれ。
「それでヒビキ殿、明日は別口を連れてきていいのだろうか? ヒビキ殿達も休むのだろうか」
「ああ、俺達は普段ダンジョンに入ったら大体10日くらい籠っているからね、明日も大丈夫だよ。魔術師団員が80人と言っていたよね? このまま行けば10日前後で終わる事だし続けた方が楽かもしれないね」
「そうなのか… やはり深部に辿り着くほどのパーティはタフなのだな、では明日もよろしくお願いする。これから選抜して、明日の朝来させよう」
「それでよろしく。じゃあ本日は解散という事で1階層に戻ろうか」
そんな訳で、『元魔術師団員とその家族の底上げ大作戦』の初日は無事に終了したのだった。作戦名? 今考えました!
SIDE:ガラハド
「しかしレベル90台というのは強いもんですな、グレイ殿の動きなんてまともに追い切れないですよ」
「そうだな… オーガとは力に頼ったパワーファイターだと聞いていたが、あれほど素早く動けて一撃で90階層の魔物を倒すなんて恐ろしかったな」
ダンジョンからの帰り道、それぞれが今日の感想を述べているのだが… そのほとんどが先導してくれたグレイ殿の事ばかりだ。個人的にはクローディア殿の熟練した魔法を見てみたかったのだが、ヒビキ殿の言う通り一般人にとってはグレイ殿はさぞ恐ろしい存在であるだろう… その意見に賛同してこのような配置になったのだが、実のところ一見の価値はあったとしか言えないだろうな。
ほのかに輝く青銀の剣… あれは間違いなくミスリル製だろう、しかも純度が非常に高そうな。90階層の魔物があの剣によって一振りで倒されていく光景は圧巻としか言えなかった。自分達であの魔物を倒せと言われても、恐らく魔術を使う前に接敵されて蹂躙されるだろう。それほど魔物の動きも速かったのだ。
「とりあえずどこまでレベルを上げさせてくれるか分からんが、今のレベルの状態だけでもしっかりと把握しておかないとダメだな」
「そうですな、明日は今日訓練に出た者達で狩りに出ましょうか。今まで通り5階層を目安に動き、内容を見ながら10階層の転移陣を目指しましょう」
「そうだな。このレベルなのに5階層程度でもたつくなんて恥ずかしいからな、せめてレベルの半分… 20階層くらいまでは楽に行けるようにしておきたいな」
「そうですな! 通常冒険者達の観点では、パーティの平均レベルと階層数が同数だと良いと言われていますから。体力的に普通の冒険者と同じに出来なくとも、それに近いところで狩りたいものですな」
「うむ。そうすれば収入も安定し、切り崩した貯金もまた増えていくだろう」
「老後は大事ですからな! ハッハッハ!」
まぁ老後の心配が出来る程落ち着いてはいないが、実際近い内にその通りになりそうな気はしている。
とりあえず今考えなければいけない事は、魔物とのレベル差を利用して戦闘経験を積む事。今までとは違い、今のレベルでの戦い方をしっかりと練り上げる必要がある。今の状態ではレベルだけが先行しているだけの素人集団と変わらんからな、勇者関係の話もあるしこの状態に満足しないことが重要だ。




