93話
9月18日追記
作者都合で10月まで更新できません!
また10月にお会いしましょう。
透は、九州に着いてから天海と分かれて宇佐神宮への道を走っていた。ふたりが別行動をとったのには理由がある。
東京にて、九州に向かう必要がありそうだという話になった際、天海がこのようなことを言い始めたのだ。
「しかし、はたから見て簡単に推察できるような計画を、悪魔たちが練るでしょうか?」
「というと?」
「姫を拉致することで、確実に“原初の結界”の封印を解くあるいは何か関係がある儀式をしようとしていることが我々にもしれてしまいます。そういった状況になることは、多少賢い悪魔がいるならば想像ができるはず」
「だからこそ、宇佐神宮を守っている悪魔がいるという話なのでは?」
「それはそうですが、悪魔もこちらの戦力をそれなりに分析しているはずです。そうなれば、朱火様という規格外の戦闘力をもった存在に目が留まらないはずがない」
「それは、確かに……」
透からしてみれば、朱火が敗けるところはなかなか想像が難しい。もし敗けるようなことがあったとしても、何かしら相手の嫌なことをして帰ってくるようなイメージがある。相手も同じような恐ろしさを朱火に抱いているのだとしたら、現段階で、目的が透けて姫を集めるのが困難になるようなことをするだろうか。
ここまで巧妙に隠してきて、大きく日本の術師たちを相手に立ち回っている悪魔たち。何の策もなしに相手に目的が透けるようなことはしないだろうと、天海がそう言おうとしていることは透も理解した。
「しかし、結界の場所は動きませんし、実際に朱火様は交戦状態に入っているわけですよね? 朱火様を結界から引き離すことが出来ていないのなら、結局、何も対策ができていなかったということなのでは?」
「そうは思えないから何かがあるのではないかという話をしているわけです。なぜか、九州の術師たちからは連絡がありませんし、嫌な予感がするのです」
「それは、確かに気がかりですよね」
この戦争状態に入ってから全国の術師たちはなるべくかたまって、術師以外の民を守るようにと通達されている。大抵の里や機関から返事があり、今も連絡を取り合っているが、九州からは全く音沙汰がない。九州はひとつの決戦地であるがゆえに、それも不審な要素のひとつである。
それらを踏まえて、天海が結論を出す。
「よし、ここで話をしていても意味がありません。九州に着いたら二手に分かれましょう」
「二手に?」
「ええ。日下部隊員は、宇佐神宮に直行してください。やはり、問題の中心地ですから、増援がいるにこしたことはないでしょう。私は、九州の術師の機関や里を回ってみることにします。何か問題を抱えているとすれば、彼らは人質のようになってしまう可能性すらありますからね。それを解決しなければ」
「え、天海隊長一人で回れますか?」
「大丈夫です。私は、長距離の転移術式を使えますからね。複数人運ぶと妖力がもつかわかりませんが、一人で九州を駆け回る分には十分です」
「なるほど。天海隊長がそう言うなら」
「まあ、あまり心配しないでください。こちらも、助けが必要になったら呼びますから」
天海はそういってお札のようなものを透に手渡した。
「これは?」
「緊急連絡用の札です。隊長や護界局に長くいる人間はもっています。妖力を込めれば、即座に連動させた札が燃えるように輝きます。これには確実に気づくことができるとおもいます。護界局のメンバーの中には単独調査や潜伏任務の人間もいますからね。こういう術が必要になってくるのです。君も護界局で同じように働く人間ですし、そのうちに重要な任務に着くことにもなりそうなので、先んじて勉強してみましょう」
「は、はあ」
天海は流ちょうにそう話した。透は、大体の内容が理解できても完全に頭に入れることは出来なかった。しかし、これが便利アイテムでヤバそうな任務にはもっていくものだと感じることはできた。
少しだけ、天海に認められたような気がして嬉しさもこみ上げてくる。
「ありがとうございます」
「まあ、そんなにかしこまる必要はありません。緊急時の連絡以外は使いませんから。今回はあくまでも保険のような意味でもっていただくわけですし、自発的に使うときの方法は後でちゃんとおしえますよ」
「わかりました」
そのような会話を広げた後に、ふたりは九州へと転移した。護界局としての拠点があるのは、九州の中心。霊的な力も溜まる火山の阿蘇である。
宇佐神宮までは距離があるのも分かっている。
九州に着いたと自覚してすぐに、ふたりは軽く言葉を交わした。
「では、お互い無事に会いましょう」
「はい。宇佐神宮で待ってます」
「死なないでくださいね?」
「もちろん。死にに行くつもりはありませんよ」
そして互いに自分の目標に向かって行動を開始したのである。
透は、普通の人間には出せないスピードで九州の大地を駆けていた。
降り立った阿蘇も含め、九州には目立つ火山が多いからなのか、全体的に気温が高いようにすら感じる。
はじめての場所に降り立った透が、自然な流れで魔眼をつかったのは、これまでの修行や戦いを通して、戦場にたつときの心構えが整ってきたからかもしれない。そんな今までの透では考えられないような変化が、透にすさまじい情報を与える。
「なんだ、これは……?」
火山の下を流れるように赤色の力の流れが見えたのだ。それは、暴れ狂う竜のように大地の下をうごめき、一様に同じ方向に流れているように思えた。その方向は、くしくも透がいま向かっている方向と同じ。
「つまり、この流れは……“原初の結界”に関連した力……エネルギーの塊なのか?」
力の流れが暴れる元。その根源に目をやろうとした透は、あまりの恐ろしさ、圧力に、背筋が冷たくなるような感覚がした。
根源にいたのは、ナニカだった。形容しがたいそのナニカのプレッシャーは、透の身体をこわばらせるには十分だった。
魔眼が根源とその力の奔流についての本質的な情報を教えてくれる。それらは、簡単に言えば、ただのエネルギーだった。ただの大きなエネルギーの塊で、それにナニカの意思が乗っているような。そんな存在であることを透は理解した。
同時に、生物としての本能が、アイツは危険であると警鐘を鳴らしてくる。
「あれは、蘇らせてはいけない……」
透は強くそう思い、寒気を感じながらも宇佐神宮への足を早めた。
対して、この九州の下に眠っているソレは、地上の事を全く意に介さない様子でまどろんでいた。
ソレは決して破壊衝動で動いているわけではない。世界や日本に恨みがあるわけでもない。ただ、心のままに動くだけ。
動くだけで、エネルギーの塊であるソレは甚大な被害をもたらす。
太古の世界で、神がつくりし兵器のひとつ。
兵器としての役割は十分だったが制御ができず、火山をエネルギーの元としたら供給を断つことができず、どうしようもなくなった結果、封印された代物。
神々は、神なき世界でこの兵器を管理する者として、日本の様々な種族を選定した。盟約を交わし、時代を閉じ、神ではない者たちの時代にこの代物を起こさないようにと伝承をしていった。
しかし、だからといって世界がこれを放っておくわけもない。今まで幾度も似たようなことはあった。ただ、それがここ数百年間起きていなかったというだけ。これだけの規模で起きていなかったというだけ。ただそれだけのことで、天災と同じく、その時は突然やってくる。
焦りを抱えた透が宇佐神宮にひた走る。
だが、同時刻に、姫たちも動き出していた。ある者の手によって宇佐神宮に導かれ始めていたのだった。
評価等していただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたします!
次回は10月2日18時投稿予定です。




