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魔眼と学ぶ結界術  作者: しゅしゅく
70/93

69話

1時間遅刻しました!

 結界術には、術の位置を固定するという基本原則があり、ほとんど全ての術は位相を表す語句から始まる。これは、結界というものが元来、対象の場所を守るために張られるものであったことに起因する。

 術という、人類の科学を超越した現象には、実際のところ、そのような制限は生じない。現に、基本的に神格や上級の結界術師は、その辺りを無視して術を行使することも可能である。しかし、物事を体系的に学んできた人間がそのような先入観を捨てるとなると、苦労するものである。

「クソ、あいつら素早くて、捕まらねえ!」

 透は当初の予定通り、【界壁包囲】を用いて、動きを封じる作戦に出た。ただ、多数の足を持つ奇怪な形状のロボットたちは、不規則で素早い動きをしていた。思った以上に捕まえづらく、位相の固定をする段階で、対象が包囲予定のエリアから出てしまうのである。結界術という術の基本的な部分を外されるような状況に、透はさらに頭を悩ませる。

 透にとって、自動小銃による攻撃はあまり怖くない。自分自身を【界壁包囲】によって覆ってしまえば、攻撃が通ることはないからである。雪女の姫の技術力は大したものであるが、自然の摂理を利用し、強化し、自由に操るような力の前には無力ということである。いや、超自然的な術が、科学を上回るからこそ、この世界の現状があるということなのだ。

 ただ、倒される恐れがないからといって戦闘は終わらない。やつらをどうにかしなければ動けないのである。【界壁包囲】は先の理論から言って、地面のあるエリアに自身の身体を縛り付けてしまう。もちろん、その範囲内での移動は可能だ。だが、その範囲を広げたとしても、内側に敵が入ったら意味がない訳で、この階層を突破できるわけではない。

「結局、新しい術を構築するしかないな……」

 透はそのように呟きながら、術の構築を考え始める。

 オリジナルの術を作るときは、まず、イメージが重要である。位相の固定。主な効果の設定。追加効果の設定。などなど、必要な術の要素はイメージが決まった後に選定すればいいのだ。

 今回考えるべきは、素早い動きをする敵を閉じ込める方法か、自分を包みつつ動ける結界をつくる方法である。

 前者を構築するならば、位相の固定をする前に、位相の検索をするという効果を付与しなければならない。逆に言えば、その効果さえ付与できれば、構築は難しくない。だが、その効果を付与するのが難しいのは想像できた。術の常識は、位相の固定が先だからだ。考えられれば、相当な発見になるのだろうが、今すぐに打開策が欲しい現状にはそぐわない。

 ということで、透は必然的に後者を考え始めた。まずはイメージである。

 透がまず想像したのは、【界壁包囲】がそのまま移動する形である。ただ、それでは無駄が多すぎると気づく。【界壁包囲】が包囲たる所以は、高さを天まで伸ばした【界壁】を四方に配置し、上からも逃れられないようにしている点にある。そのため、飛翔する種族に対しては、【界壁包囲】ではなく、【界壁箱檻】という檻状のものを使うことが多いほどである。

 しかし、そのような形では、自信が移動していくと考えた際に、イメージとして、移動できる感じがしなかった。箱が動くという発想がなんとなく難しかったのだ。

 この、なんとなくイメージしにくいという感覚は大切にしなければならないと、透は将嗣から言い含められていた。術の精度はイメージで決まるからだ。イメージが強固なほど、術は強力になる。だからこそ、透はイメージを練り直す。

「移動しやすそうな形だ。とにかく、その形に俺が覆われればいい」

 そう考えた透の頭に浮かんだのは、水の上を巨大なボールに入って、転がって遊ぶようなアクティビティだ。どこで見たか、果たして本当にそんなものがあるのかわからなかった。だが、同じように浮かんだアイデアの、回し車的な形よりは、人間らしいと感じた。

「練り込めないけど、これで考える!」

 透はまた、敵の攻撃を避け、【界壁】を張った。そして、考えをまとめ始める。

 位相の固定は、透を中心に一定の位置に常に球体になるように行う。この指定のための文言が難しいところだが、結界術の位相のための文言は、暗号化しているだけだ。術を発動させるためなら、直接的な表現でもいいということを透は知っていた。

「我が周りを球状に、とかでいいか? そうだとして、周囲に展開するなら、繭のように絡み合った茨を……いや、今回は傷つけられない……」

 直接的な効果も、段々と具体的に構想していく。そして、整っているわけではないが、一応の完成をみた。

「よし……我が周りを球状に。守護せよ。回転せよ。連動せよ。【界壁球体】」

 術を唱えた途端、透の周りに、透明度の高いオレンジの球体が現れた。

「お、成功か」

 透がそう呟くと同時にその球体が回転を始め、中にいた透は、思い切り前のめりに転がる。それは、一度で止まることなく、何度も何度も繰り返され、透の天地はひっくり返り続ける。

「あぁぁぁあ!!」

 馬鹿みたいに叫びながら、グラグラとする視界で透は魔眼を発動した。目の前にオレンジの文字が躍る。ただ、その文字の見え方が今までと一部違う。青白く光る部分がある。そして、驚くことに、その部分が何を示しているのか、よくわかった。

「“回転する”部分の術式が光ってる? この現象の術式だからか? ああもう!」

 半分ヤケクソの思いで、目の前の青白い文字を動かす。すると、術式の一覧の中からそれが綺麗に消失した。

 同時に、透の身体の回転も止まる。球体の結界の中で、転げて、強かに背中を打つ。

「な、何が……」

 恐らく、ぶつかるまで永遠に転がるものと思われた中途半端な術は、謎の文字列を動かしたことによって変質した。通常ならばあり得ないと、強烈な驚きを感じる透は、球体の中で大の字になって倒れていた。


評価等していただけると嬉しいです!

よろしくお願いいたします!


次回は5月6日18時に投稿予定です。

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