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魔眼と学ぶ結界術  作者: しゅしゅく
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4話

五日目!

 自己紹介が終わったあと、続きは校長室でという仁之助の言葉を受けて、俺たちは場所を移した。養成学校には入ったことがなかったので、俺は白峰さんと一緒にキョロキョロとしてしまった。だが、外観のわりに、中は割と現代的なリフォームがなされており、イメージとしては高校の校舎が近いように感じた。ただ、大講義室があるところや机も椅子もない教室、だだっ広い屋内スペースがある感覚は大学にも近い。

 校長室は、飾り気のない普通の扉だった。仁之助がノックして、彼を先頭に中に入る。「どうぞ」と聞こえた声から想像するに、どうやら女性のようだ。

「よく来たわね。事情はうかがってるわ。あなたたちを歓迎します」

 透と珠姫は、一瞬、フリーズした。そこにいたのが、驚くほど大きな白い蛇だったからである。珠姫は、蛇の大きさ、蛇が言葉を話しているということそれ自体に驚いていたが、透は、彼女の格に驚いていた。その辺の人類を簡単に一蹴できる力を持ち、人類を守護する側面をもつ白蛇と呼ばれる存在だったからである。なるほど、護国会議の大切な教育機関に大物がいないはずがないということである。同時に、透は自分が守らなくても、ここにいれば珠姫は安全なのではないかと思った。

「まあ、まあ、ふたりとも、これは、私が毎回やるいたずらなのよ。仁之助くんも初めての時は驚いてたわね」

「そりゃあ、驚かない方が難しいと思いますよ」

 仁之助は苦笑いで、強大すぎる師に言葉を返した。そんなことはお構いなしに、彼女は妖気を練って、変化の術をつかう。みるみるうちに、彼女は巫女服のような服を纏った、白髪の美女に変身していた。

「さあ、じゃあ、お話していきましょうか。改めて、私が校長の白蛇、瑞妃(みずき)よ。よろしくね」

 数分は彼女の雰囲気に圧倒されていたが、仁之助が大まかな内容など、上からの指示などをつないでくれたので、だんだんと何とか普通に話せるようになっていた。透はまだ少し遠慮がちになっているが、同じ女性としてみたのか、珠姫は思いのほか、リラックスして話せているようだった。

「それで、ふたりとも、話を聞いてわかっただろうけど、とりあえず半年ほどで、珠姫ちゃんが一人でそれなりに戦えるようにならなきゃいけないの」

「まあ、今日みたいなやつが常に襲ってくると考えると、しょうがないですかね」

「え、いや、聞いてみて、意味は分かったんですけど、絶対できる気がしません!」

 珠姫を強くする前提で話が進んでいることに、当の本人は困惑している。だが、養成学校に入ることが=戦えるようになることだと認識している妖類圏の面々からすれば、戸惑うことはない。至極当然の流れなのであった。

「そうはいってもね、ああいうのに襲われるたびに誰かに助けてもらうわけにもいかないでしょう? しかも、人類圏で生活したいならなおさら」

「いやほんとに、私、なにも知らないんですって。なんか、お母さんに色々話してもらいましたけど、お母さんが九尾の分体とか言われても、冗談としか……」

「ふむう、まあ、困惑は当然だけどね。これだけ目の前に色々起こっても気持ちが揺れるのは、やっぱりもう大人だからかねえ」

 瑞妃は、そうやって唸ると、何かを思いついたように手を合わせた。

「そうだ、仁之助くん、水鏡もってきてくれる? 自分の正体が見えたら変わるんじゃないかしら?」

「正体?」

「わかりましたよっと」

 仁之助は席を立って、校長室にある棚のような場所をあさり始めた。一方で、珠姫と透は正体という言葉に首をひねっていた。瑞妃はそれを見て、「今にわかるよ」と笑った。

「ありましたよー。水鏡」

 仁之助が持ってきたのは、大きな皿のようなものだった。外縁部が金属でできており、内部は黒く塗られている。それを受け取ると、瑞妃は机の上に置いて、手をかざした。すると、どこからともなくその器に水が満ちた。

「よし、準備はできたね。珠姫ちゃん、これを覗き込んでごらん」

「えっ、はい」

 どこからともなく水が生じたことに驚いていた珠姫は一瞬反応が遅れた。そして、おそるおそる水面を覗き込んだ。そこに映るのは、彼女の見慣れた自分の顔だ。時たま美人とも呼ばれるが、引っ込み思案な性格のせいで、生かしきれていないつまらない顔。

「じゃあ、始めるね」

 瑞妃はそう言うと、再び水面に手をかざした。そして、何やら妖力を込める。それによって、鏡面が震える。整った珠姫の顔が波によって歪んでいく。それは、だんだんと引いていった波紋が消えると、そこには、再び珠姫の顔が映っていた。頭に狐の耳を付けて。

「ええっ!?」

 珠姫は、自分の変化に驚き、自分の頭を触る。すると、そこには、今までなかった感触が、確かにある。あたたかな耳の感触がある。ふわふわと毛も生えていて、それを触っている自分の手も感じることができる。

「嘘……」

「嘘ではないよ。それがあなたの正体。出そうと思えば尻尾も出るでしょうね」

「なん……なにかしました?」

「いいや? 水鏡がしたのは正体を映すこと。珠姫ちゃんが自分に耳があると認識したら、実際に見えるようになったって、それだけのこと」

「そんな……」

「信じられないなら、透くんも試してみる?」

 透は、試せという激しい圧力を珠姫から感じ、水鏡に顔を映してみた。何も変わらない、彼の顔があるだけである。

「私も一回目はこうだったもの。校長先生、やってください」

「はいはい」

 なぜか息巻いている珠姫に苦笑いしつつ、瑞妃は再び水鏡に手をかざした。先ほどと同じように水面に波紋が広がって収まる。しかし、透の姿に変化はなかった。

「なんで?」

「いや、俺は普通の人間だし」

「なんで?」

「いや、そこになんでと言われても……」

 透は、あまり話したことのないタイプの同年代女子ということを、ここで初めて意識した。護衛対象のお姫様は、今まで驚き呆けている顔と、泣いたり怖がったりする顔しか見せてくれなかったが、こうしているとなるほど同年代だと感じる。

しかし、一度刷り込まれたイメージは根強いもので、透の中で、珠姫は妹と同じく庇護する対象になっていた。そのため、透は懐から、チョコを取り出して言った。

「チョコ、あげるので、機嫌直せ、してください」

「……バカ!」

 珠姫は、サッと頬を上気させつつ、透の手のチョコを取って、口に運んだ。その様子を見て、瑞妃が笑う。

「なんだか、こういうのを見るのは久しぶりで楽しいわねえ」

 上機嫌の瑞妃は、珠姫に無言でウインクを送りつつ、透に向かって言った。

「それで、透くん。あなたが選ばれた理由のもう一つ、魔眼の方は、ふたりとも初心者なわけで、まずは透くんが魔眼の能力を使えるようにならないといけないわけだけど、大丈夫そう?」

 透は、逡巡する。だが、妹の呪いを解くヒントにつながるかもしれないうえに、仕事に必要となればやるしかない。一族郎党打首獄門はごめんだ。

「なんとか、します。瑞妃様には力を借りることになるかもしれないすけど……」

「そう。あなたのお義父さんも心配してたから、何かあれば頼ってね」

「あざす……」

「透、緊張とけないね」

 仁之助が苦笑いをしながら、透の肩をたたく。透は、同じく苦笑いで返す。

「妖力の差が、なんかはっきりわかっちゃう体質なんで、格がわかっちゃうんですよね」

「有効だけど、枷でもあるねえ。それは、魔眼や呪いと関係してるの?」

 瑞妃が興味深そうに問う。

「っぽいですね。妹の方が、ひどいんで、あれなんですけど、まあ、俺が強くなればいい話だと思うんで、頑張ります」

「うん、そうだね。いい目だ。改めてよろしくね」

「はい」

 瑞妃はそう言って、透と珠姫に手を差し出した。ふたりは彼女と握手をし、その場は解散となった。透は、緊張のせいか、魔眼の話が始まってから、珠姫の視線がこちらにずっと注がれていたのに気づかなかった。


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