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魔眼と学ぶ結界術  作者: しゅしゅく
46/93

45話

当初予定よりも長引きそうで震えています。

 美形のスピードは驚くべきものだった。ジェームズに向かう奴の影を目端に捉えつつ、透は目の前の3体に向けて術を使う。

「玄武の鳴動。捕縛せよ。貫通せよ。芽吹け野バラ。陰ノ四【刺線条(しせんじょう)(バク)】」

 大量の茨が悪魔の身体と大地を繋ぎ止めるように繁茂し、突き刺さる。

 とにかく、ジェームズの戦いに加勢させないように動きを制限する作戦である。この場において、1番倒させてはならないのはジェームズだ。透が最悪3体と刺し違える形になっても、ジェームズさえ残っていれば、この戦闘は勝ちである。透は、そう判断した。

 だが、目の前の異形たちが弱いというわけでもない。透が放った茨は、彼らの身体にしっかりと刺さったが、触手と蛇の集合体である異形は、その体の一部を切り離すことで透の茨から脱する。

「檻にしとけば良かった!」

 透はそう言いながら、迫りくる彼らに対峙する。触手の異形が、その触手の一本をこちらに伸ばしてきたのである。

 捕まれば確実に不利になるだろう。今、透が考えるべきはいかに自分が動き、相手の行動を阻害するかだった。伸びてきた触手を、払いのけるように錫杖を伸ばす。携帯式の錫杖が活躍するのは、こういう場面である。

 伸びた錫杖の先端が、触手を弾いた。続けざまに二本目の触手が透に伸びてくる。そちらは躱すしかないと判断しつつも、全身蛇の異形の姿を探す。先ほど抜け出したのを確認してから、見失っていたのである。見えない敵ほど怖いものはない。少しでも情報を集めるために、解析眼を使う。

 オレンジの光が術を中心に視界を舞った。その光の先に視線をやれば、大地をうねり進む蛇の異形の姿があった。人間のようなシルエットのまま、地面がうごめく。蛇の群れである。群れがひとつの個体を成しているのか、それともひとつの個体が群れのように分裂することができるのかはわからないが、気味の悪い光景であることは確かである。透は内心でドン引きしながら、バックステップをした。

 もちろん、そんなことで相手がとまるわけでもないが、とりあえず距離をおきたかったのだ。幾分か冷静になった頭で、地面を這う敵に対する対抗策を考える。

「這ってるなら、足止めするに限るよな! 玄武の鳴動。我が敵を見極め、阻害せよ。陰ノ四【繁茂する悪魔のトラップセサミパーティ】!」

 透の目の前の地面から、鋭いトゲをもった植物が網のように生えてくる。悪魔の爪のように見えるその植物を使った術は、以前も罠として使ったものである。大型の獣をも足止めできる術に、透は自信をもっていた。しかし、全身蛇の絡まったような異形には、あまり効果がないようだった。

 トゲが刺さって動けなくなった蛇を引きちぎりながら、そいつは前進してくる。触手も2の手、3の手を出してきている。透の頭は、若干処理が追い付かない位になっていた。

「くっそ、コイツら、面倒すぎるだろ!」

 とりあえず、足止めとして術の全てが効いていないわけではない。足元のトゲは、確かに蛇のいくらかを削り取っているし、触手はこの術を超えてくることはないような状態である。片手の異形は、はじめの茨から未だ抜け出せていない。追いかけてくる蛇と、伸びてくる触手をどうにかすれば、もっとうまく立ち回れそうである。

 焦る頭で、しかし確実に数を減らそうと、蛇の異形に術を繰り出す。

「陰ノ二【刺線条(しせんじょう)】!」

 茨をまずは蛇の異形の中心辺りに打ち込む。様子見程度の一撃だったが、案の定、刺さった蛇は一匹だけで、戦力をうまく削れているようには見えない。

「チッ、結局、点の攻撃じゃだめだ。面の攻撃をしないと!」

 そう考えた所で、蛇の異形からくぐもった気味の悪い声が響いた。異形の全身を紫の嫌な光が包む。解析眼を即座に発動すれば、それが術であることはわかった。しかし、透の頭では術式の読み取りが間に合わない。

「くっ」

 有効な対応を考えるよりも、身体を動かした方が早いと判断した透は、術式の流れを見ながら相手の術の範囲外に逃れる。バケツの水をひっくり返すようにまき散らされた術は、周囲の地面に飛び散った。すると、紫の何かが着弾した先で、ジューという音を立てて、地面に生えている草木が溶けだしていた。

「毒か、あるいは酸のような攻撃か。植物の攻撃の相性悪いな……」

 透はそれを見て思った。透が使える術は、妖力をそのまま運用する術を除けば、植物や自然に関する術のみだ。ヤツヒメとの契約でそのようになっているが、それなりに強力な術を使えるのはメリットであった。しかし、自然を用いる術はとかく毒や硬いもの、無機物などを用いる攻撃に弱い時も多い。まさに、今がその時であった。

「檻を使った所で、溶かされて終わりってなると、できる面の攻撃も少ないな……」

 断続的に来る触手を錫杖で振り払いながら、透はそう呟いて思考をめぐらせる。

 まず、蛇の異形のように、実体がどこにあるのかわからない敵をどうやって倒すのか。どうすれば倒せるのかがわからないと話にならないということに気づく。

「悪魔と戦う時のコツをマリアに聞いておけば良かった!」

 口からは思わず文句が出てくる。

 だが、行動しなければ状況は変わらない。そこで透は、実験をすることにした。

「蛇野郎は後回しだ。触手から倒す。全身触手だが、茨を越えられないってことは、あいつは実体があるはずだ」

 透は蛇の異形の攻撃を躱し、触手を弾きつつも、自身のステップを変えた。そして、触手の異形を目視で捉えやすいところまで移動する。

「玄武の鳴動、閉鎖し、箱を成せ、陽ノ三【界壁包囲】!」

 触手の異形の周りに妖力を練ってつくった半透明の、結界が現れる。触手の力がどの程度かわからないが、とりあえず閉じ込めることで、相手の出方をうかがいたいというのが狙いの攻撃だった。

 結界の中で、触手が壁をガンガンと叩き始める。透の結界はそれなりの強度を誇るため、簡単に破壊されるものではないが、それがすぐに破壊されそうなほどの威力である。ただ、今の数十秒は閉じ込められている。

「それなりに効くってわかったのは、よかっ……あぁ!?」

 結界を観察していた透は目を見開いた。複数の触手が絡まり、ドリルのような形をつくって、壁を打ち破ったのである。結界術でつくる壁は、点の攻撃に弱い。的確にそれを破られたのは衝撃だった。しかし、それでわかった事もある。

「あいつ、触手全体が連動してやがるな。最初に抜け出したのは、被害が最小限になるようにトカゲの尻尾切りをしただけってことか」

 透がそのような確信を得ることができたのは、触手の動きが連動しており、ドリルのような形をつくったときに、根本が見えたからである。根本があるということは、触手で覆われているものの、本体があるということだ。

「それなら、檻で絞め殺せる! 玄武の鳴動。閉鎖せよ。刺獄に落とせ。鮮血舞う茨の檻。陰ノ五【茨の血檻ブラッドローゼンゲージ】!」

 透は、結界を打ち破って、奇妙な叫びのようなものをあげていた異形を、茨の檻に閉じ込めた。それなりの実力者でも容易に抜け出すことのできない強力な術であり、透の切り札である。鬼人を倒した時も使ったこの術は、強度も結界より上である。

「これで一体は片付いたか……」

 透がそう思った瞬間、蛇の異形の術が透の術にとんだ。

「なっ!」

 強い酸のような光は、透の茨の檻を着実に蝕んでいく。

「ふざけんな! 【界壁】!」

 それを防ぐように、結界の壁を張ったが、蛇の術はあらゆる部分に放たれており、全てを防ぐことはできなかった。結果として、もろくなった檻は、触手の異形によって内側から破壊された。

「連携するなんて、聞いてないって……」

 今までの攻撃が単調な連続攻撃であったために、透は彼らが連携しないものだと考えていたが、しっかりと連携されたことに正直驚いていた。

 瞬間、後ろから殺気を感じて、錫杖を振るう。

「くっ!」

 右腕を浅く切り裂かれつつ、一撃を交わした相手を見れば、腕の異形がそこにいた。茨に捕まっていたはずが、抜け出してここまできたらしい。それなりに距離があるにも関わらず、このタイミングで透に攻撃をできたことから、高速移動に準ずる能力を持っていると推定する。

「おいおい……こいつら、すげえ面倒じゃねえか……!」

 切り裂かれた腕は、特に治療が必要なほどでもない。毒の類もなさそうである。しかし、機動力がある敵が野放しなのは、辛い展開だ。

 完全に三対一の状況を作り出されてしまった透は、冷や汗をかきながら頭を必死に回転させていた。


評価等していただけると嬉しいです!

よろしくお願いいたします!


次回は2月21日18時投稿予定です。

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