その瞬間
――・その瞬間・――
『これで優勝してきてよ』
『あとこれ、私が勝って稼いだお金で買ってるから。縁起いいでしょ』
初めて手にしたとき。
『やるからには勝つ』
腹をくくって道を決定したとき。
『っしゃああああ!』
目覚ましい結果を勝ち取ったとき。
『協力してくれ。俺はこれから生きて元の世界に戻る』
この異世界で前を向いたとき。
様々な思い出が、このアケコンには詰まっている。
触っているだけで湧き上がってくる感情も1つや2つじゃない。自信、対抗心、悔しさ……そしてそれら全てが失われてしまったことへの絶望、怒り、悲しみ、憎しみ、未練。
『魔法の真髄はイメージ。強固なイメージを作り上げろ、青年』
『与えられることを待つな。奪い取るぐらいの姿勢を、執着を見せろ』
『ガラでもなく、仲間の繋がり大事にしてたりするのか? 俺……』
『そういうもんだって腑に落ちるんだよ。目を開けば景色が見えるみたいに、こうすれば魔法が使えるって感覚がふとした瞬間に理解できる』
『君が強さを追い求める原動力。感情の起伏を司る核にあたるものを特定するといい』
『それはぎゅいーんって感じ』
『魔法の特性には、その人の人間性が反映されるようですよ。眉唾ですが』
『できるようになるときは一瞬。問題はその瞬間に出会えるか、それだけ』
『冷静な視野を保ったまま感情を滾らせる――抽象的な言い方にはなるが、あえて言葉にするならこんなところだろう』
『魔法のコツ? んー、シュッ、ってやってはーって感じ』
『なんで俺は「感覚」を「理屈」で分析しようとしている?』
頭の中で点と点が全て繋がるような感覚がして、俺はボタンを押し――
「理解った(わかった)」
いつもの部屋には、3つの光球が漂っていた。




