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試行錯誤

 ――・試行錯誤・――


『魔法の特性には、その人の人間性が反映されるようですよ。眉唾ですが』

 軍事科に聞き込みをした感じ、たしかにそういった傾向は見受けられた。

 一番わかりやすいのがヒューリーの拘束魔法。執念深い本人の性質もさることながら、格下を完封する能力の高さはあいつらしさの塊だ。

 他だとスラムの身体強化は、本人のまっすぐな人間性を反映してそうに見える。

 ――こう思い返すと、上位勢ばっかりだな。

『初めこそ目立った違いはないかもしれないが、突き詰めていくほどその差は顕著になる。セントラルの人間にもなると、全員もれなく唯一無二の魔法を扱うと言っていい』

 クロヴィエの言葉を借りるなら、まだ「突き詰め」られてないメンツも軍事科には多い、といったところだろうか。

「そうなると今じゃない気がしてきたな……」

 初級編を吹っ飛ばして中級編に足を突っ込んでるような感覚だ。

 それに取り組むにしても、やることは自己分析に違いない。

「別角度から考えるか」

 そんな就活生じみた真似、俺が好んでやるはずがなかった。


『君が強さを追い求める原動力。感情の起伏を司る核にあたるものを特定するといい』

「感情、か……」

 思えばこの世界に来て、色々と心を揺らしたものだ。

「つっても、特定の感情に反応してるとか、そういう規則的なものはわからんけどな」

 感情の振れ幅が広すぎて、正直絞ろうにも絞りきれない。

 俺の人生を語る上で”勝負”は欠かせないが、かといってそれが感情の核だという気は全くしない。たしかに勝負は滾るが、この世界で抱いた感情の多くはそれとは無縁だ。

「強さを追い求める原動力、とも言ってたな……」

 シアを失いかけた一件が、相当大きな原動力となっているのはたしかだ。

「ガラでもなく、仲間の繋がり大事にしてたりするのか? 俺……」

 この世界に拉致されたときの絶望。元の世界へ戻るために抱いた希望。喪失と再会という差はあれど、どちらも”仲間”という言葉で結びついてはいる。

「いやいや、さすがにないな。まだ勝負を掘り下げたほうがいいわ。てか、また知らぬ間に自己分析じみてきてるし」

 魔法会得の道は内省と隣合わせなのかもしれな――

 そう思いかけたところで、聞き込みをして回った人たちの顔がよぎる。

 こんなに頭を悩ませている自分が、不正解の道を歩んでることぐらい嫌でもわかった。

 次だ次。もっと別角度の……。

『できるようになるときは一瞬。問題はその瞬間に出会えるか、それだけ』

 これに関しては珍しく、俺も感覚的にすんなりと理解することができた。いくら抜きん出た適性があろうとも、それを発揮できる場所がなければ天才は生まれない。

 まだ彼女の言う「その瞬間」に出会えていない俺は、適性があるにも関わらず、それを腐らせてしまっているのだ。

 ――まあ頼みの適性も、ここまで苦戦してる時点で程度が知れてるけどな。

「いや、弱気になってる暇ねえだろ、俺」

 たとえ天才と評されるほどの適性がなくとも、俺のやることは変わらない。

 いずれにせよ、今後の自分の道を決定づけるほどの運命的な出会い、転機、のちに振り返ったとき原点と呼べるような出来事……そういうものに出会わなければならない。

 ――狙ってできることか? これ。

 旅にでも出れば、出会いの回数自体は増えるだろうが……長期的な取り組みになることは避けられそうにない。タイムリミットのある俺には難しいことだ。

 仮にそうやって試行回数を増やせたとしても、意図的に引き起こすまでには至らない。どこまでいっても偶発的、努力するにも成算がなさすぎる。

『そういうもんだって腑に落ちるんだよ。目を開けば景色が見えるみたいに、こうすれば魔法が使えるって感覚がふとした瞬間に理解できる』

 言葉を尽くしてくれてはいるが、これも「その瞬間」に出会えるかどうか、という問題な気がする。あとは……。

『魔法の真髄はイメージ。強固なイメージを作り上げろ、青年』

『それはぎゅいーんって感じだよ』

『ビビッとくるからシュピンッとやればできてたぜ』

「……わからんな」

 感覚派御一行のアドバイスは、正直俺では消化できそうにない。

「やっぱ、自己分析をやり込むしかないか……」

 ため息まじりに俺はそう結論を出すのだった。


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