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Another Sight

 ――・Another Sight・―― 


 グシャァ。


 生温かい血しぶきを全身に受ける。

「どう……して」

 目の前で肉壁となった彼女の姿に、俺はそう言うことしかできなかった。

 胸は剣で貫かれ、他にも傷が無数についている。至るところから血が滲み……。

 ――俺が狙われたから庇って……。

「あ、見えた」

 事態を理解して絶望する俺に、彼女はそう言って笑いかけてきた。

 わずかに光を宿したその瞳は、それでもこの上なくやさしかった。

「もういい、お前だけでも逃げ――」

「それは無理だよ」

 自分より彼女を優先する選択は、しかし彼女本人によって拒絶されてしまう。

 シアは一層の笑みを見せると、胸を貫く剣を抜き捨てクロヴィエに対峙した。

 そこから先は、見えなかった。

 耳を塞ぎたくなるような鈍い音のみが俺に戦況を知らせ、チリチリと焦燥感を掻き立ててくる。

 今まさに決定的な瞬間が訪れているという感覚。

 しかし当事者でありながら、俺はそれを傍観することしかできない。

 あんなにも彼女が命を燃やしているのに。

 もう二度と、手の届かないところへ行ってしまうかもしれないのに。

 自らの至らなさが腹立たしい。その想いが自然と拳に力を入れる。

 せめてもの抵抗は、二人を視界に収めようと目を凝らすことだけだった。

「――――」

 それが功を奏したのかもしれない。

 いっときが無限に引き伸ばされ、スローモーションのように二人の姿を捉え――

「殺すなシア!」

 反射的に叫んでいた。

 刹那。シアは俺の制止に反応し、そして宙を舞った。

「ッ……」

 声にならない声が漏れる。

 肝が冷える感覚。呼吸するのも忘れて……。

 彼女の華奢な身体が地面に投げ出されると同時に、俺は車椅子を捨てていた。

 這いつくばりながら必死にくぼみを進む。地面が皮膚を切り裂くも、そんなことを気にしている余裕はなかった。

「余計なことしたっ!」

 ――そのせいでシアは……シアは……。

 俺の言葉になら耳を貸してしまう。……そんなことは、普段の言動を見ていればわかりきっていたはずなのに。

 覚悟も、認識も……何もかもがぬるすぎた。

「シア……」

 力なく倒れる彼女のもとへとようやく辿り着く。

 ボロボロで意識のない彼女の身体を、俺はめいいっぱい抱きしめた。

「ごめん……」

 ――でも俺、シアには人を殺してほしくなかった。

「俺が、どうにかする……しかない……のに……っ」

 力が入らない。

 少し這っただけだというのに、身体が言うことを聞かない。

 ――弱い。弱すぎる。

 悔しさに握る拳すら力が入らず、やがては意識すらも……。


 ――こんな終わりかた、か……。



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