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魔法特区

 ――・魔法特区・――


 息を呑む、というのはきっとこういうことなんだと思う。

 門から特区中心部へと伸びる大通り。その突き当たりに見えるは、街の象徴たる巨大な塔。真っ先に視界に飛び込んできたそれは、しかし壁外で見たものよりも印象が異なる。

 なぜなら特区内部は、青と黄の入り交じる淡く眩い輝きに満たされていたから。

「すげー……」

 塔の中腹部から伸びるアーケードは、俺の背後にある外壁へと放射状にかかっている。そこに施された意匠は太陽光と絶妙に噛み合い、美しく街中を照らしあげていた。

「…………」

 キュッと拳を握りしめる。

 正直、興奮した。……心の底から。

 こんなものを見せられて、心が動かないはずがない。

 少し前の俺なら――あらゆることに無感動で、全てを元の世界への未練に結びつけていた俺なら、こんなこともなかったのかもしれない。

 でも。

 初めて俺は、この世界由来のものに心惹かれてしまった――そう、自覚させられた。

「なんでだろうな……妙に清々しい」

 そのとき俺は、多分笑っていた。


 車椅子の彼が、そのか細い腕で少しずつ特区内を進んでいく。

 僕はその後ろ姿を眺めながら、昔の自分を見ているような気分になっていた。

 自信があることは悪いことじゃない。たまに行きすぎて傲慢になってしまうこともあるが、基本的にはプラスに働くことのほうが多い。

 ただ、彼は気づいているのかと心配になる。

 自らを鼓舞するその言葉の数々が、自らの至らなさによって凶器にもなりかねないということに。

「キツイよ。過去の自分が見下していた存在に、いざ自分がなってしまうというのは」

 ――そうこぼす門番の瞳はひどく濁っていた。


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