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パシッ。
静寂の中に響く波紋。
爽やかな快音に聞こえたかもしれない。
鮮やかな光景に見えたかもしれない。
けれどそれは間違いなく、才能という名の鈍器で心を砕く音だった。
「負けました」
俺にとっての原体験。
それは勝負であり、圧倒的な存在への敗北だ――。
『』
誰かの声がした気がして、俺はおぼろげだった意識をはっきりとさせる。
幼少期の記憶。
すでに薄れつつある夢の残滓をかき集め、自分がまどろみの中で見ていた光景を再構築する。
――今になってそんなことを思い出すのはやっぱり……。
『ボクが知るためだよ。キミのことをね』
先回りした回答がどこからともなく聞こえてくる。遮られた思考を周囲へ向けるも、他の誰かが見つかるわけでもなかった。暗い空間……ただ、声だけが俺の内側に響いてくる。
――夢が覚めてまた夢……。
連想されるのは異世界での寝覚めだった。控えめに言っても散々な記憶は、今再び俺の気分を悪くさせる。
『さあ、出してみなよ。キミと、そして彼女の――豊澄蓮さんとの物語をさ』
お構いなしに声は語りかけてくる。それは対話と言うには一方的で……。
『キミを語る上で、彼女のことは切っても切り離せないはずだ。……違うかい?』
不思議な強制力を持った言葉だった。
…………。
『そう、それでいい』
幼少期の記憶。俺にとっての原風景。……今となってはあらゆる意味で遠いもの。
「ねえ、愛斗はどの勝負が一番好き?」
俺の視界には、いつも決まって一人の少女の姿があった。同い年の幼馴染。付き合いは幼稚園時代にまで遡ることができる。腐れ縁――そんな言葉が似合うほど、俺たちの道は交わることを繰り返してきた。これはその最初の交点。出会いから、お互いが別々の道を歩き始めるまでの物語。
俺たちの関係性は、いつだって「勝負」の一言に集約されていた――
……。…………。……………………。




