金の斧と銀の斧と5000兆円の斧
──ボチャーン!
「ああっ!? だ、大事な斧が!!」
木こりは手が滑りとても大事な仕事道具の斧を泉へと落としてしまいました。すると泉から女神様が現れました!
「あなたが落としたのはこの金の斧ですか? この銀の斧ですか? それともこの普通の斧ですか?」
金と銀と普通の斧を抱え、女神は木こりに問い掛けました。
「5000兆円の斧です!!!!」
木こりは大声で答えました。知り合いから騙されて5000兆円で買わされた斧なのは間違いありません。しかしどう見てもそれは普通の斧でした。
「ご、5000兆円んんんん!?」
女神は焦りました。
金の斧と銀の斧よりも高価な斧を落とされたのでは、この泉システムが機能しなくなってしまうからです。
「ちょっと待っててね?」
「…………え?」
──ブクブクブク……
女神様が斧を抱えたまま泉へと消えていきました。そして直ぐにザバンと勢い良く現れました。
「あなたが落としたのはこの5000兆円の金の斧ですか? この5000兆円の銀の斧ですか? それともこの普通の5000兆円の斧ですか?」
先程と何が違うのか分からない金と銀と普通の斧を抱え、女神は木こりに再び問い掛けました。
「ロジウム金属配合の普通の斧です!!!!」
木こりは再び大声で答えました。知り合いからレアメタルであるロジウムを含んでいると騙されて5000兆円で買わされた斧なのは間違いありません。しかしどう見てもそれは普通の鉄の斧でした。
「ロ、ロジウム……!?」
女神は焦りました。
金や銀よりも高価な金属を落とされたのでは、この泉システムが機能しなくなってしまうからです。
「ちょ、ちょっと待っててね?」
「…………え?」
──ブクブクブク……
女神様が斧を抱えたまま泉へと消えていきました。そして泉の中でオッケーググールで『ロジウム』と検索しました。そして女神は頭を抱えました。この泉では金と銀による複製が限界だったのです。
嘘つきを戒めるために没収している女神が嘘をつく訳にもいかず、女神は苦渋の決断を迫られました。そして木こりの前に三度現れました。
「すみません、私の力不足でこの斧の価値を超える斧を作ることが出来ませんでした。つまらないもので誠に恐縮なのですが、この金の斧と銀の斧を差し上げますので、今日の所はこれで勘弁して頂けませんでしょうか?」
女神は白旗を揚げました。
木こりは訳も分からず「は、はぁ……」と、手渡された金の斧と銀の斧と普通の斧を持って帰りました。
木こりは勿体ないと、金の斧と銀の斧を壁に掛けて大事に扱いました。そして今日も5000兆円の斧で仕事に精を出しましたとさ……。
読んで頂きましてありがとうございました!
(๑•̀‧̫•́๑)