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二人の夜と新しい朝

 う……奪われてしまった……。


 まだりこの唇の感触が残っている。

 知ってしまった甘酸っぱい柔らかさ。


 もう……だめだ……………………。


 俺は布団の上に仰向けで倒れこんだ。


「湊人くん……!?」


 りこが真上から俺のことを覗き込んでくるから、慌てて両手で覆って顔を隠す。

 自分が今どんな表情をしているのか、想像するのも恐ろしい。

 情けないほど筋肉が緩んでいるに決まっている。


 心が通じ合っていないとだめだと言ったのに、そうなる前に交わしてしまったキスが俺をめちゃくちゃ幸せな気持ちにしてくるなんてひどい話だ。


 ……落ち着け、俺。

 好きになってもらうまでは、適切な距離を取るんだろう。

 りこの甘い誘惑に負けてはいけない……!

 その先にあるのは、幸せな恋人生活じゃなくて、ただれた快楽だけだ。


「ね、寝よう! もう今日は就寝!」

「う、うん。そういえば結構時間遅くなっちゃったもんね。あれ、でも……」


 ゆっくり立ち上がったりこが窓のそばに向かい、カーテンを少し開ける。


「あっ。うそ……。雨、止んでる……」

「え……」


 慌てて俺も立ち上がり、りこの隣に駆け寄る。


「ほんとだ」


 どんよりと濁っていた空には三日月が顔を出し、少し強めの風がどんどん雲を追い払っていく。

 このあとまた天気が崩れることはなさそうだ。


「一緒に寝る意味なくなっちゃった……」

「だね」


 ふたりして並んで敷かれた二組の布団を振り返る。


 このまま寝る? という言葉があと少しで出かかったけれど、グッとこらえて飲み込む。

 今日のりこと俺が並んで眠るのは危険だ。


「布団、部屋に戻すよ」

「……いっしょに眠るのも、お預けになっちゃった」


 がっかりした口調でそう言ったあと、りこがふふっと笑いはじめた。


「これまでは雷の夜なんて永遠に来ないでほしいって思ってたのに、今は待ち遠しいなんて変だよね」

「……っ」


 ああ、もう……!!

 この可愛すぎるりこを正々堂々抱きしめられる日が来るように、もうなんとしても俺はりこを惚れさせる。


 本気でそう決意して、りこに向かって伸ばしたい両手をぐっと握り締めた――。


 ◇◇◇


 ――その晩は、どうやったらりこに好きになってもらえるかをあれこれ考えていたせいで、なかなか寝付けなかった。

 でも、恋愛に疎い人生を歩んできた俺がどれだけ悩んだって、無い知恵は絞りようがない。

 そう結論を出した頃には、室内は明るくなりはじめていた。


 ……誰か、そういうことに詳しい人間に相談してみようかな。

 澤は……あんまり当てにならんそうだな。

 とはいえ他に候補が浮かばない。


 うんうん唸りながら登校した俺は、昇降口を潜った辺りで、何かがこれまでと違うことに気づいた。


 なんだかやたら視線を感じる。

 みんながこっちを見て、ひそひそと話している。


 ……なんだ?


 こんな経験初めてだ。

 戸惑いを覚えながらとりあえず教室に向かうと――。


「……なんだこれ」


 黒板に張られた校内新聞。

 その上にはピンク色のチョークでこう書かれていた。


 ――学校一の美少女、花江りこ姫が選んだ彼氏は、

 学校一の地味メンだった!?――


 校内新聞に載っている写真には、りこと俺がエコバッグを二人で持っている姿が写っていた。


「……っ」


 愕然として教室内を見回すと、校内新聞を手にしたクラスメイトたちと目が合った。


「新山……! おまえこれ……どういうことだよ……!?」


 右手に校内新聞を握り締めた澤が駆け寄ってくる。

 しーんと静まり返った教室内が、俺の返答を興味津々の顔で待っている。


「う……」


 こんな事態なんて想定していなかったから、頭がまったく回らない。

 まずい。

 とにかく誤魔化さなければ……。

 でもあんな写真を撮られてしまったのに、一体、なんて言ったらいいんだ。


 ただの幼馴染だからと言って通用するとは思えない。


 そのとき。

 もっともまずいタイミングで、遅れて登校したりこが教室の入口に姿を現してしまった。

6章はこれで終わりです(﹡ˆᴗˆ﹡)


スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆で、

『★5』をつけて応援してくれるとうれしいです


感想欄は楽しい気持ちで利用してほしいので、

見る人や私が悲しくなるような書き込みはご遠慮ください( *´꒳`*)੭⁾⁾

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