空から落ちてきたおくりもの
ある春の日、空から箱が落ちてきた。
都会から遠く遠く離れた田舎のさらにはずれの細い山道。
こんな田舎の山道は誰も通ったりなんかしない。
そんな山道にピンク色の小箱が落ちてきた。
狐か狸が山に戻っていく途中にピンク色の小箱に気づく。
やつらは箱を気にしたりなんかしないんだ。
食べ物じゃないと知ったならそのまま去っていくだけ。
夏が来て、秋が来て、そして里に今年初めての雪が降ったけど、箱はずっとそこにあった。
白い天使の羽根のような雪が、すっかり色褪せたピンクの箱に積もる。
そのまま誰にも気づかれず、春まで埋もれてしまうのだろうか。
箱はそう思ったか思わないか?
そんなある日のことだった。
少女がひとり、山道を登ってくる。
病気のお母さんのために、薬草を探しにきたのだ。
積もった雪を踏みしめて、少女は一生懸命に山を登って行く。
少女は、雪に埋まっている箱を見つけた。
小さな手で積もった雪を払いのける。
少女が触れると、突然、箱はピンク色に輝き出した。
箱も女の子を見つけたのだ。
箱が喋り出す。
「こんにちは。あなたの名前を教えてください。」
少女は返事をする。
「こんにちは箱さん。わたしはアリサよ。」
箱の一部が青や黄色に輝く。
箱は空に浮き上がり、箱の横から吸盤のついた手が何本も出てきた。
「アリサ、今日はどうしましたか?」
アリサは思った。この箱はきっと神様なのだ。
「神様、あのね。お母さんが病気なの。だから私は薬草を探しにいくの。」
アリサは箱に向かって手を合わせて祈った。
「神様、お願い。お母さんを元気にしてください。」
箱はしばらく点滅を繰り返していた。
そしてアリアの方に近づいて来る。
箱の蓋が開いて、吸盤のついた手が、ピンク色の液体の入った小瓶を取り出す。
「わかりましたアリサ。お母さんにこの薬を飲ませてください。きっと良くなりますよ。」
アリサは嬉しそうな表情で小瓶を受け取った。
「神様、ありがとうございます。」
そう言って、今来た山道を急いで引き返していく。
仕事を終えたピンクの小箱は腕を箱の中にしまって再び山道に降りた。
そして、なにもなかったかのように雪は箱に積もっていく。
それからしばらく経ってから、空に宇宙船が現れた。
中から出てきたのは2人の宇宙人。
「ようやく見つけたぞ。」
大きな宇宙人がほっとした声で小さい宇宙人に話しかけた。
小さい宇宙人は箱を手にとって確認する。
「どっこも壊れてないみたいだな。回収してさっさと届けようぜ。」
そして再び宇宙船に乗り込む。
「えらく遅れちゃったが、早く惑星ゴラスにこの医療ロボットーカミッサを届けないとな。」
「あれ?」
大きな宇宙人が不思議そうな声をあげた。
小さな宇宙人が問いただす。
「どうした?」
「いや、万能薬が少しへってるんだ。おかしいなあ。」
小さな宇宙人は宇宙船を操作しながら言った。
「落下の衝撃で箱が開いてこぼれたんだろう。気にすることはないさ。」
宇宙船は空に飛び立って行った。
あとには何にも残らない。
やがて、雪は溶けて春になった。
山道を少女と母親が一緒に登ってくる。
「お母さん、あのね。ここで神様がお薬をくれたのよ。」




