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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章

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495/507

再訪の港町

 それから、およそ二時間後──。


 初めて望子たちがこの世界の海を見た場所であり、そして三素勇艦デルタイリスが造船された場所でもある港町、ショストに入港。


 この港町に住まう者たちもまた、メイドリアの時と同じく接近する巨船の存在に早い段階で気づいていたようだが。


 あちらとこちらでは望子たち一行の再訪を歓迎する住民の相対的な数も、何より歓迎する理由そのものも大きく違う。


 全なる邪神、そして魔王、それぞれと望子たちが戦いを繰り広げている間、海と共に生きる彼らもその余波の影響により少なくない被害を受けていた様だが、それでも長く海賊の脅威に曝されていた彼らは忍耐力一つ取っても一線を画し。


 また、この町を背負う町長と並ぶ二つの組織の長が『魂を込めて造った船を託したヤツらを助けに行く』、『戻って来られるかは分からない、後は任せたよ』と言い残して町を去った事もあって、いつ再訪するかと気が気でなかった様だ。


 そして今、ショストに住む民の殆どが港に泊まった巨船を見上げる位置までやって来て、その巨船から降りてくるだろう者たちを待ち詫びながらざわざわとしていたのも束の間。


「……ッ! 見ろ! あの黒髪の子は、あの時の……!!」

「そうだ、間違いない! 海賊を退けてくれた……!」

「でも、あの亜人族たちが居ないみたいだけど……」

「何はともあれ救世主の再訪だ! 皆、声を!!」

「「「うおぉおおおおおおおおッ!!」」」

「「「わあぁああああああああッ!!」」」


 一番最初に降りて来た、この世界では殆ど存在しないと言っても過言ではない黒髪黒瞳の少女の姿を視認した住民たちは町を救ってくれた救世主たちの再訪と、そして何よりその救世主たちを助けに向かった二人の長の帰還を心から歓び。


「おうお前ら、心配かけたな! 戻って来たぜ!」

「「「ギルドマスター……!!」」」

「「「よくぞご無事で!!」」」


 地球なら色とりどりの紙テープだの紙吹雪だのが投げ込まれていそうな程の歓待ムードの中、望子たちと違い船から降りぬまま帰還を報せた鬼人オーガにして海運ギルドの長、オルコの姿に受付嬢リヴリィを始めとした職員たちが安堵を抱く中。


「あ、あの、ウチの……冒険者ギルドのマスターは……?」

「あ……ふぁたちゃんは、その……っ」

「え……? う、嘘でしょう……?」

「ま、待ってください、カナタさんも居ないんですが……」

「まさか、あの娘も……?」

「……っ、かなさん、も──」


 降りて来た一行の中に再会を待ち望んだ相手が居ない事に気がついた冒険者ギルドの受付嬢セリーナと、カナタと共に海霊を除霊しに海へ出た神官エシュメとイザベラが詰め寄ったところ、返ってきたのは二の句を継げぬ望子の吃りだけ。


 嘘でしょう、まさかあの娘も、その発言から分かるとは思うが、セリーナたちは望子の反応から全てを察してしまい。


「──あぁそうだ! 冒険者ギルドの長、ファタリア=ニーフは死んだ!! 激闘の最中、他を生かす為に己を犠牲にしやがった……!! 『生きて帰るぞ』って約束したのにな……ッ」

「そ、そんな……ギルドマスターが……!?」

「加えて海霊ネビルの除霊に助力してくれた神官、カナタも命を落とした! ミコの命を救う為、自分の寿命を支払って……!」

「「……ッ!」」


 それを裏付ける様にオルコが大きな声で二人の死を告げた事により、カナタはともかくファタリアに世話になった者たちや、ある種のマスコットとして愛でていた者たちは悲哀に暮れたが、その悲哀は俄かにやり場のない怒りへと変貌し。


「そもそも、アンタらは何と戦ってたんだ!? あのギルドマスターが死ななきゃならない相手って何だったんだよ!!」

「海が黒く染まったり、いきなり夜になったり……! 環境や時間に影響を及ぼすなんて、魔族でも早々ない事だろ!?」

「そうだ! いくら顔見知りだからって、アンタらを助けになんて行かなきゃあの人は今も、今も……! クソぉ……!!」

「ぅ……ご、ごめんなさ──」


 よりにもよって住民は、その矛先を望子たちへ向けた。


 確かに望子たちが何らかの存在との戦いに臨んでさえいなければ二人が参戦する事はなく、ファタリアが己を犠牲にする様な事もなかったのではと言われればそうかもしれない。


 しかし、それを望子たちに言うのはあんまりではないか。


 望子の正体や戦った相手を知らぬのだから致し方ない事とはいえ、この町どころか世界を魔王の脅威から救った英雄に対する物言いではない事は事情を知る者からすれば明白で。


「……やはり、ミコ嬢が特別であっただけか──」


 そんな住民たちの怒号により、人族ヒューマンの愚かさを想起しかけていた人化ヒューマナイズ状態のローアが魔術で黙らせんとした時。


「──静かになさい、我がショストの民よ」

「「「ッ!!」」」

「ちょ、町長……! しかし……!」


 人混みの向こう側から聞こえてきた良く通る女声に反応した住民たちが道を開けたのも束の間、現れたのは左側で結ったサイドポニーの美しい青髪と知的な眼鏡が特徴的な美女。


 その女性の名は、グレース=マルフェ。


 若輩ながらも誰恥じる事のない、ショストの町長である。


「説明してくれるのでしょう? オルコさん。 貴女たちが戦いの場に赴かねばならなかった理由と、その相手について」

「あぁ勿論だ! ミコ、声のデケェ俺が言っていいな!?」

「う、うん、おねがい……!」

「ッし、よく聞け野郎ども! 早速、俺らが戦った相手から話してやる! そいつを知らなきゃ理由も何もねぇからな!!」

「「「……ッ」」」

「いいか、ミコや俺らが戦った相手は──」


 この場の誰より冷静な様子で──そうあり続ける為に気を張っている様にも見えるが──問いかけてきたグレースに対し、オルコは然りと頷きつつ念の為にと望子の許可を取り。


 持ち前の大声とカリスマ性によって住民全員の視線を集めた彼女が明かす事実に、ショスト全体が驚愕する事となる。


「──魔族どもの王! 魔王コアノル=エルテンスだ!!」

「「「……はァ!?」」」

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